5.31.2016

[film] 女醫の記録 (1941)

5月4日の水曜日、シネマヴェーラの清水宏特集でみました。
この特集ではぜんぶで6本見た。 それまでも清水宏は少し見ていたが、今回のはどれもすごくおもしろくて改めてもっと見たくなった。

ある夏休み、山奥の無医村に女子医学専門学校の女子医学生を中心とした医師・看護団が派遣されて、田中絹代が女医さんの中心で、佐分利信が招いた村で小学校の先生したりその他よろず仕事ぜんぱんをやっている。

ぎりぎりの命の攻防、みたいな血と汗と涙の医療ドラマかというとそうではなくて(最近の気色わるいスーパードクターもの - 見たことないけど - とは断固ぜんぜん違うから念のため)、集団検診をやってもいろんな理由で来るひと来ないひとがいるので、来ないひとをどうしようか、とか、子供たちの間ではおねえさん達が先生の世話仕事を取ったとか、そこのごはん食べた食べないで小競り合いや仲間はずれがあったり、そういう身の回りの、ほのぼのしたエピソードがほとんど。
『木靴の樹』のにっぽん、森の奥ほんわかバージョンていうか。

やはり困ったちゃん系のはなしがおもしろくて、いくら検診に来いといっても祈祷師がいるからええ、とか言ってごろごろ籠ってばかりで、更に家から結核が出たなんて噂が立つだけでもやばいんだから、行くもんか、お金だってねえだ、娘は稼がせるだ、みたいな理屈を延々いって拒み続けている家があって、そこに乗りこんでいって祈祷師含めてやっつけちゃうの。

でも行ってみれば本当に悪い面倒な奴はいなくて、田中絹代が「おかあさん」(1952) みたいに入っていくとみんな黙って言うこときくの。 そら言うこときくよね。

村の奥、森の向こうまですっと伸びていく道をロングで捉えたところとか、そこに溜まったり澱んだりしている光の具合とか、そこをゆっくり動いていく人の影に表情とか、昔のすてきな風景写真を見たときに感じるぞわぞわしたかんじ、時間がそこに停まっているかんじがずっと残る。
そういうなかで、赤子を鳥の巣みたいのに置いて転がしてある、とか、いろんな子供たちがその空気に色の抜けたルノワールの絵みたいにはまっている。 ドキュメンタリーの空気感とも近いけど、それともちがうかも。

最後、家のすぐ傍を木々が茂って覆っているので陽が入らなくて健康上よくない、ということで村人みんなで木を切るとこがあって、作業の進行とともになにかが開けていくかんじもすばらしかった。

ああもう5月が行ってしまうなんて。

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