5.03.2016

[film] Jacques Rivette - Le veilleur (1990)

16日の昼間、アンスティチュの特集『恋愛のディスクール 映画と愛をめぐる断章』(すてきー)で見ました。
前にも書いたが、この日は馬車道でAkermanの最後の上映もあって、ものすごく悩んだのだが、馬車道は遠かった(前売りなんて買いにいけないし)。

現代の映画シリーズ『ジャック・リヴェット、夜警』。

TVのドキュメンタリーシリーズ"Cinéma, de notre temps"の一遍としてClaire DenisがJacques Rivetteを撮ったもの。 同シリーズではかつてRivetteがJean Renoirを撮ったりもしているのだと(1966-1967)。
2部構成で第一部が"Day"、第二部が"Night"、あわせて122分。
基本はSerge DaneyがRivetteにいろんな話を聞いていく、というスタイル。

最初にギャラリーでJean Fautrierの作品を見ているRivetteの姿があって、そこからFautrierの絵の、貌や身体の捉え方の話、画家と描かれる対象の話になって、クローズアップのことまで。
そこからいろんなカフェを巡って、車や地下鉄でパリを移動していくRivetteの姿が捉えられる。 話はあっちへ行ったりこっちへ飛んだり、ロメールやゴダールと会った頃の話から、パリの建築の話から、いろいろランダムに移っていって、それは町中をすたすた歩いたり横切ったりしていくひょろ長い棒のようなRivetteの姿にも重なって、そういうのもあわせて、とにかくとりとめなく移ろっていくの。
“Paris nous appartient” (1961)  - パリはわれらのもの - は勿論引用される。

後半の「夜」は昼間とはうって変って、どこかの建物 - パリ全体を見渡せる - の屋上のテーブルでの対話で、表情すらあまりよく見えない薄暗い照明のなか、ほとんど動きのない状態で対話が続けられる。

最初は17世紀の劇作家Pierre Corneilleのはなしで、古典における悲劇と喜劇の境界とかドラマトゥルギーとか、そういうところから入って、日常とか内面とか、たぶん、聞き手であるSerge Daney、もしくは撮り手であるClaire Denisのなかではそれなりに整合の取れた、一貫したお話しになっているのだろうが、浅い知識の自分とかからすると、ぴょんぴょん飛び地の、これもまたとりとめのないものになってしまうのだった。 でも「夜警」ていうタイトルはなんだかとてもよくわかる気がして。

ああもう少しRivetteを深くきちんと見ていれば見なければ、としみじみ思うのだったが、こういう方面の探求とか旅に誘う - それこそ彼の語るCorneilleとかまで含めて - のって、RivetteとかAlain Resnais特有だよねえ、ておもった。 Éric Rohmerにはあまりこういう啓発するなんかってないよね - かわりに、いいから恋しろ、って煽る。

挿入されたのは ”L’amour fou” (1969) - 狂気の愛とか、”Out 1, noli me tangere” (1971) - アウトワンとか。 アウトワン、なんとしても見たくなってしまったので、クラウドファンディングに参加した。

映画は夜がうっすら白くなりはじめた頃に終るのだが、これはClaire Denisの作品でもあるのだなあ、と彼女の映画で描かれたいくつかの夜について思った。 彼は亡くなってしまったが、彼の映画はまだたくさん薄暮のなかにあって見られることを待っている。 見よう。

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