4.29.2015

[film] Inherent Vice (2014)

19日、日曜の昼間、渋谷で見ました。 この晩にSFに発つ予定だったので、西海岸映画でいこう、と。

ピンチョンの原作「LAヴァイス」は、読んだ。いちおう。
とにかく絡んで捩れた世界とか奇人変人とかをずらずら並べてぜんぶぶっこむ、というピンチョンのやり口は、PTAのそれともどこかしら重なるんだろうなー、とまずはじめに思った、くらい。

小説の登場人物が映画・映像のなかのくせ者、としてリアルに動いて喋ることで現れるなにか、というのは確かにあって、そのギャップは他のふつーの小説の映画化よかぜんぜん強烈な気がして、そこら辺が評価の別れるところなのかもしれないが、この段差もまたピンチョン的世界の変容、変奏として見る、そういう愉しみもあるなあ、と思った。 いちばんでっかい段差は、語りの人称が主人公ではなくSortilège (Joanna Newsom)になっていたこと、だろうか。 あの性差の反転、ていうのもまたLA。

筋(ストーリー、とは言わない)にかんしては原作を読め、と強くいう。
読んでいないとわからないから、とかそういうことではなくて、本を読む愉しみ、映画を見る愉しみ、がどっちにもものすごく溢れていて絶対おもしろいんだから、てこと。
148 minはぜんぜん長くない。 ピンチョンの小説が長くないのとおなじく。

70年代の    LAであんま冴えないらりらりの探偵をやっているDoc (Joaquin Phoenix) のところに昔の恋人が現れて、彼女が囲われている不動産王の妻とその愛人の企みを暴いて、て言ったと思ったら不動産王もExも失踪して、殺人の濡れ衣着せられて、警察はうるさいし怪しい組織とかいっぱい出てくるし、つまりそれって陰謀?   いやそもそもそういうもんだから、とかいう、そういう世界のおはなし。

いやそもそもそういう壊れもの、ていうのが、保険求償用語であるタイトルの”Inherent Vice”の意味で、保険が必要になってもしもし? て電話したら、それ以前のとこで反撃されてあらら、てなるの。 まともなやつはひとりもいない、まともな法、のようなものすらない、そこにおいて世界はどんなふうに機能するのか、というのを70年代のLAていう土地に置いてみたところ、いろんな焦点があわさって極彩色のパラダイスみたいになった。
(PTAが邦題を「LAヴァイス」ではなく「インヒアレント・ヴァイス」にしろ、と指示したのは正しい)

俳優のだれもがみんな身悶えするくらいよくてはまっていてたまんないったら。
Joaquin PhoenixにJosh BrolinにOwen WilsonにBenicio Del ToroにReese WitherspoonにMaya RudolphにJena MaloneにMartin Shortに… 男はぎらぎらと怪しく女はぬらぬらとエロく、どこからが演技でどこからが… 的な演技をする紙一重系のみなさんばかり。 特にOwen Wilsonの万能薬ぶりときたらあきれる。

音楽は、Jonny Greenwoodさんじゃなくて、Jon Brionさんにすればよかったのにな。LAなんだし。

あとはねえ、やはり35mmプリントで見たかったなあ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。