12.19.2014

[film] Alive Inside (2014)

13日の土曜日、イメージフォーラムで見ました。ポーランド映画祭のチケット買って、14:00の上映まで時間が空いたのでなんとなくー。

邦題は「パーソナル・ソング」。でも映画のなかでは「パーソナル・ミュージック」て言われていたような。 2014年のサンダンスで観客賞を受賞したドキュメンタリー、だそう。

認知症で塞ぎこんでいる老人にiPodで音楽を聴かせたら突然記憶が蘇ったり元気になったりしたのを見たソーシャルワーカーのおじさんが、そういうケースを紹介しながら音楽と記憶、老いの不思議な関係を追っかけつつアルツハイマーの治療に音楽を、ていう運動を始める。

Oliver SacksとかBobby McFerrinといった有名人の解説に、じいちゃんばあちゃんたちの愛する懐メロがいっぱい。 そんなにおもしろくなくはないけど。 ふうん、程度だけど。

音楽が、ふと耳にした音楽の欠片が頭の底の記憶を呼び覚ます、或いはいつか、どこかの記憶に到達しそうなもどかしい何かを喚起する、それってボケていなくても割と普通に起こる - 歳とるとそんなのばっかしになる(はぁ…)、のは十分にわかっている。 
あるいは数年前、寝たきりになった祖母の耳元で、娘(自分の母)が昔一緒に歌ったうたを歌ってあげると自分も楽しそうにずっと歌って元気になるとか、そういう話もふつうに聞いていたので、今更そんなこと言わなくても、とか。

なんかね、映画のなかでも少し触れられているけど、音楽の力はすごい、認知症の治療に役立つ、とかいうことよりも、問題とすべきは老いやボケ問題を介護施設の向こうに追いやって介護ワーカーとか薬物療法とかの方に投げしてしまおうとする - 臭いものにはフタばっかし - の構造(社会の、コミュニティの、我々の頭の - )のほう、じゃないのか。 なんて言っているうちに介護予算を更に削減とか、ふざけんじゃねえよ!のこの国の —

音楽とヒトの変な関係、みたいなところだったらこないだ文庫で出たOliver Sacksの「音楽嗜好症」とかのがおもしろいと思うし。

あと、ここで使われるのはBeatlesとかBeach BoysとかLouis Armstrongとか誰もが知ってる筋金入りの名曲ばっかしだけど、そうじゃない微妙な曲だったらどんな反応になるのか、或いは曲の喚起する記憶がその人にとっておぞましいものだったらどうなるのか、とか。 それと、じゃあ音楽ずっと聴いているひとはボケないか、ていうとそんなことないと思うし。

音楽って、聴くひとを幸せにしたり元気にしたりする、そんな単純な美しさのなかに鎮座しているだけのやさしいやつなんかでは決してない、と思うわけです。 だからこそずっと囚われて、でも抜けられなくて、が続いている。

自分が認知症になったら。 高校の頃、周囲に鉄壁をつくってくれたTGとかCabsとかSPKとかを大音量で聴かせてやってほしい(誰に言っているの?)、そのとき自分はどんな反応をするのか、見てみたい。
メタル聴いてきてボケちゃったひとに聴かせたら突然ヘッドバンギングはじめて失神して昇天、とか。
そんなくだんないことばっかし浮かんでしまうのだった。

音楽以外だと、食べものとか香り、もきっとあるよね。
なんにせよ、“Alive Inside”である、と。

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