2.21.2014

[film] Ce qu'il restera de nous (2012)

15日の土曜日、日仏のカイエ週間で2つみました。 雪なんかに負けないもん。
Vincent Macaigne絡みの中短編3本、どれもすばらしくよかった。

Ce qu'il restera de nous (2012)
『僕たちに残されるもの』、英語題は"What We'll Leave Behind"。 40分。

アーティスト気取りで偉そうなことばかり言いつつホームレスみたいな暮らしをしている男がいて、その兄はピアニストになる夢を諦めて企業のインターンとかしつつ結婚して妻とふたり真面目に生活してて、その父親は、兄夫婦が住んでいる家屋も含めて全財産をろくでなしの弟のほうに遺して突然亡くなってしまう。
おしゃれな服で身なりだけはまともになった弟は、皮肉なもんだなとかべらべら言いつつ変わらずさいてー野郎なので兄は弟をぶんなぐって家を出て、その車中で妻にひどいこと言って、妻もぶちきれて、リップを顔中に塗りたくり、ストッキングを引き裂いて、原っぱのまんなかで、夫にわーわーものすごい罵詈雑言を浴びせる。それはそれはすさまじいとんかちの嵐をワンカットで。 夫は完膚なきまでに叩きのめされ、ぜんぶ吐きだした妻はすっきりして仲直り、弟はたったひとり...

Vincent Macaigneのここまでで唯一の監督作で短編で、「僕たち」というのは妻も含めた3人で、ここでテーマになっているのは亡父→息子ふたりに遺されるもの、というだけではもちろんなくて、人が人と関わるところ、その接触面で残す痕跡とか爪痕とかそういうのを言っていて、それが残るところ、残らないところの境界をアートとか屋外の大喧嘩とかまで遡って情感たっぷりに考えさせるものだった。 すごくよい作品。


Kingston Avenue (2013)

39分。 登場するのはVincent Macaigneを中心とした4人。

冒頭に映しだされる街角はマンハッタンの2nd Ave - 59thで(すぐわかった)、ケーブルカーに乗ってゆるやかに東に向かうカメラが昔住んでいたアパートの正面にくる - 直前で切替わってしまったのでちぇ、だった。

Vincent Macaigneが元カノを追っかけてフランスからNYにやってきた男で(フランス語になる彼女との会話は字幕がないのでわからじ)、彼はなんとかよりを戻したいのだが彼女には同居している彼がいるので難しくて、ふてくされてバーで飲んだくれていると寄ってくる娘さんがいて、彼女と朝まで街を彷徨い、もういっかい元カノのおうちに行ってみるがやっぱしだめで、やけくそになって娘さんも追っ払ってしまってひとり、地下鉄のKingston Aveのホームでふて寝するの。

NYのはじっこで、ひととひとが出会ってくっついたり離れたり、ていう伝統的なNYインディー映画(それってなに? ていつも思うけど)の流れ、というのに加えて、『遭難者』/『女っ気なし』の頃から、さっき見たばかりの『僕たちに残されるもの』にもあった「ひとりになる」「ひとりである」というテーマがここでも反復されるので、なんなんだろ、とかおもった。
要するにひとりぼっちでじたばたする、ぽつんと佇むVincent Macaigneをみんなが見たい、ということなのか。 そんなのみてみんな楽しいか? とか。


La règle de trois (2011)

Louis Garrel監督による18分の短編。 『三人のルール』。
Vincent Macaigneが施設から出てきたばかりの不安定なひとで、Louis Garrelが彼を迎えにいって、これから彼の面倒を見てあげなくちゃと、というふうになっていて、他方で、Louis Garrelの彼女は放置されてしまうふうになって、これってなんなのかしら、て全員がきょとんて不思議なかんじになる、そんな瞬間のおもしろさ。
ここにあるテーマも複数の人たちのあいだの仕切りとかルールとか、その反対側でひとりであること、などがぽん、て公園のまんなかに蹴りだされる。
彼女 - Golshifteh Farahani が一瞬さらっと見せる涙がすばらしいのと、あと少し捩れたふうで疲れたLouis Garrelとスーパーのビニール袋をさげたVincent Macaigneが並んで歩いているとこ、これがあるだけで、もうぜんぶよいの。

しかしこういうの見ると、フランス人て、ほんとにおとなだよねえ、てしみじみする。 
今に始まったことではないが、邦画(の恋愛モノ)ってくそみたいに幼稚だ(見なくたってわかる)。

なんかねえ、PSHがいなくなっても、VMがいれば世界は保たれるかも、とかちょっとおもったりした。

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