1.14.2013

[film] Sullivan's Travels (1941)

6日の日曜日の午後、シネマヴェーラの名作特集で見ました。 『サリヴァンの旅』
ルビッチとスタージェスなら、なんだって見る。ぜったい見る。 35mmだし。

ハリウッドで軽めのコメディを撮って成功しているお金持ち映画監督のJohn L. Sullivanは、もっとシリアスで社会に影響を与えるような映画を撮りたい、そのためには貧しき人々の生活と格差を自ら体験しなくては、と浮浪者の格好をして旅に出るの - 執事とかメディアとか取り巻き連中を周囲にがっちりと固めた状態で。
途中でルビッチの映画に出たいんだけど無理そうなので諦めて国に帰ろうとしていた女優 - Veronica Lakeと出会ったり、それなりに経験を積んだと思いこみ、一旦は自分のソサエティに戻るのだが、やり残したことが、といって外に出たところで予期せぬトラブルに巻き込まれ、再び旅をすることになるの。

スクリューボールな前半とどうなることやらの後半とで映画のトーンはくっきりと分かれるのだが、前半はSullivanが社会のなかの自分の位置を見つける(ぼくはやっぱりお金持ちだ)パート、後半は社会における自分の仕事を改めて確認する(映画は客を笑わせてなんぼや)パート、というかんじ。

タイトルの"Sullivan's Travels"は、スウィフトの『ガリヴァー旅行記』- "Gulliver's Travels"を参照していて、「ガリヴァー…」がイギリス社会への風刺を通して当時のアイルランドの貧困を訴えようとしたのと同じように、「サリヴァン…」はハリウッドへの風刺を通して恐慌時代のアメリカをー。
(ケルアックの"On The Road"のハリウッドの描写のとこでこの映画が参照されているのは偶然でもなんでもないの)

いろんな他者・異者との出会いを通して発見するのは相手ばかりではなく自分自身、でもあって、この作品は最も初期のRoad Movie、とも言われる(BFIの"100 Road Movies"にもちゃんと出てる)。 更に、そうやってせっかく発見した自分自身が後半で一旦死んじゃうことで全部ちゃらになる、そういう落語みたいなコメディでもあるの。 そう、これはなんといってもコメディで、そういうわけで自分はコメディを撮るんだ、映画で世界を笑わせてやるんだ、というスタージェス自身の揺るぎない宣言であり、上級詐欺師みたいにかっこいい大見得、でもある。

ていう教科書的ないろんな見方を、映画のいろんな場面や役柄に様々に展開できて、その「アメリカ」的なスコープのでっかさに感動することも確かなのであるが、単純におもしろいんだ。
それに、Sullivan役のでっかいJoel McCrea(191cm)と女の子(彼女には名前がない)役のちっちゃいVeronica Lake(151cm)の組み合わせが素敵なんだよなー。

彼みたいな映画監督と彼女みたいな(ルビッチの映画に出たい〜、っていう)女優さんがいっぱい出てくれば、世の中はもうちょっと明るく楽しくなるに違いないよね。

いまの映画監督でSullivanて誰かいるか、というとPTA、かなあ。 彼ってもともとコメディのひとだと思うんだけど。 次のピンチョンのでそろそろ戻ってきてほしいんですけど。

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