9.27.2012

[film] Diana Vreeland: The Eye Has to Travel (2011)

23日、「アインシュタイン」が終わったのが晩の7:30、それなりにくたくたで、でも頭はきんきんしてて、さてこれからどうするか、と。(時間がないんだよう)

ひとつ候補にあったのはRadio CityでのMetricのライブで、でもここからライブに突入するほどの体力は残っていない気がしたので、静かに映画でも見るかー、とAngelikaでこれを見ました。 軽めのドキュメンタリー、ということで。

Harper's BazaarとVogueの伝説のエディターであり、晩年はMetropolitan MuseumのCostume Instituteを同美術館の目玉に仕立てあげた張本人であり、彼女自身がなによりもFashion Iconであった女性の生い立ちとポートレイトを家族や関係者のインタビューから追っていく。
監督はDianaの孫の奥さんなので、家族関係の資料や証言はいくらでも出てくる。

んで、最初の美的体験として語られるのがパリ、ディアギレフのバレエ・リュスとニジンスキーときたもんだ。
まず、バレエ・リュスの色彩、総合芸術にニジンスキーの身体が刷りこまれているのね。
パリで生まれて、一次大戦前にNew Yorkに移住して、Fokineのバレエ学校(!)に通って、銀行家と結婚して、今度はロンドンに移住し、パリのシャネルと親交を深め、再びNYに戻って、そういう旅を通して美を見る目と心は養われたのだと。 
(白洲正子か森茉莉か)

そういう経験のあとで、TwitterみたいなつぶやきをHarper's Bazaarに載せはじめて、そこからエディターとしてのキャリアがはじまる。
自身の目を通過してきた様々な美の意匠を、デザイナーやフォトグラファーが提供する素材を通して誌面上に統合し、再構成していく。多少の誇張や相違があっても構わなくて、雑誌作りというのは彼女にとって新たな旅、未知の知覚に向けての地図作りのようなものだったのだ、ということがわかる。 (リンドバーグの大西洋横断のシーンが何度か出てくる)

古雑誌屋に行って手に取ってみればわかるが、彼女のいた頃のHarper'sやVogueはだからぜんぜん古雑誌ではないの。
シェイプもカラーも、モードやトレンドとはまったく関係なく、何度見ても初めて見るときの驚きと共に目を焼いてくれる。

雑誌って、既にあるものを紹介したり、いろんな局面に適応するためのガイドを提供したりするものではなくて、未踏の地に踏み出すときに背中を押してくれるものなのだ、と。 (最近の雑誌の衰退って、読者もそうとうダメになってきている、ていうのもあるのかしら)

しかし、こんなひとが職場の上にいたら相当大変だったろうなー。
(Ali MacGrawさんとか、アシスタントだったのね)

見ていてへーえ、とか、ふーん、とかそんなのばっかしなのですが、リンドバーグのような冒険に踏みだす勇気はなくても、ふだんから美しいものを美しいとはっきり言える目を持ちたいものだとあちこちうろうろしている者にとっては、「ロマンチックであることがなにより、絶対なのよ!」と強く言い切ってくれるおばあさんが出てくる映画として、広く見られるべきだと思いました。 特に若いひとには見てほしい。

エンドクレジットで流れてくるのがBowieの"Lady Grinning Soul"。 前日の"The Perks..."もラストはBowieだったねえ。 
もういっこ、エンドクレジットで笑ったのは半端じゃない権利関係のキャプション。
殆どがCondé Nastだったけど。

あと、日本のパートで流れてくる変な歌謡曲みたいの、あれはなに?

日本でも公開が決まったようでなによりー。

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