1.05.2011

[film] Farewell (1930)

2日も映画2本。 この日は終日MOMAにいました。

1本目はワイマール映画特集から、Robert Siodmakの"Farewell"。 原題は"Abschied"。
アメリカに渡ってノワール系の作品をいっぱい撮ることになるSiodmakの、これが劇場長編デビュー作だそうな。
あと、脚本のPressburgerは、のちにPowell and Pressburgerになる、あのPressburgerなの。

映画に音がつきはじめた最初の頃の作品ということで、嫌味なくらいにいろんな音にあふれていて楽しい。
貧乏な下宿屋が舞台なので、掃除機、電話のベル、台所の音、魚の鱗をじゃりじゃりする音、で、間借り人がレッスンするピアノの音なんかがえんえんBGMとして流れている。

ここに修理工の彼が3年くらい住んでて、そこに彼女がよく訪ねてきてて、彼にドレスデンで働く口が見つかるの。 彼にとってはよいことなので、彼女は強がり言って行ってきなよーって押しだすの。 彼は悩むんだけど、ほんのちょっとした行き違いで、ばたばたと出ていっちゃって、お別れいう間もないまま、彼女はひとり残されちゃうの。

それが"Farewell"で、ずっと流れている歌は「さよならだけが人生さ~」みたいなやつなの。

そんなふうに地味に暗くて切ないのだが、上に書いた音も含めてすごくちゃんと作ってあって、狭くてぼろい下宿屋のいりくんだ中を落ち着いて正確に捕えているカメラ、変な下宿人ひとりひとりの挙動言動を見事に活写した脚本、どれもすばらしくよく出来ていると思いました。 80年前の映画とはぜんぜん思えなかった。

あとねー、ひとが引っ越していっちゃった直後の部屋で、まだじゅうぶん掃除もできていなくて、出ていった人のがらくたみたいのが半端に少し残ってて、そういうのってなんか妙におかしくて悲しくて、この映画の、残された女の子の場合だと、そういうのがすごく愛おしくて、泣くに泣けない変な顔になっちゃうのだが、そういうところがとっても繊細によく描けていていいなあ、て。

もう帰る時期なので、おみあげにこの映画特集のカタログを買おうかどうか散々迷って、結局あきらめた。
またくるからそのときに、と固くちかう。

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