3.11.2024

[theatre] My Neighbour Totoro

『君たちはどう生きるか』(2023)のオスカー受賞よかったね(棒)。これと『ゴジラ -1.0』(2023)と”Oppenheimer” (2023)の受賞で、アメリカは日本に対する戦争なんてぜんぶ屁でもなかった - 戦争してやったんだ感謝しろ、エンタメ消費ばんざい、ってはっきり言っているんだよ。昔からだけど。

3月5日、火曜日の晩、Barbican Centreで見ました。

映画『となりのトトロ』(1988)をThe Royal Shakespeare Companyが2022年に舞台化して、大評判になった作品のリバイバルで、昨年11月から今年の3月末までロングラン上演しているやつ。チケットを取ろうとしても確かにずっとSold Outしていてすごい。

宮崎駿による映画版は、トトロとか変な動物たちが出てきて動くのは好きだけどお話しとか設定はぜんぜんだめ – 彼の作品で一番好きなのは子供のころに見た『パンダコパンダ』(1972)だけど、これも同じか… 要は父親がなんでそんな偉くて勝手に決めることになっているのか、母親も含めてなんで女性はみんな女神か女中(おばば)でしかないのか、旧式左翼の甘ったれてやなとこぜんぶが詰まっていて子供がかわいそうになるやつ。

脚色はTom Morton-Smith、演出はPhelim McDermott - 2023年のLaurence Olivier Awardsを受賞している - 黒子もいっぱい出てくる人形遣いはJim HensonスタジオのBasil Twist、音楽は久石譲で、日本人キャストもいるし、節目で歌を歌うのは日本人のひとで日本語で歌ったりもするのだが字幕はない。

客席は子供連れも当然いるものの、半分以上は大人だったのでは。週末だと変わるのかもだけど。

開演前、降りているもふもふした幕には”My Neighbor Totoro”ってあって、時間になると上から”u”が下りて来て”o”と”r”の間にぎゅいぎゅい割りこんで”My Neighbour Totoro”、になる。これだけでみんな大喜びで、なんかうれしい。ステージの真ん中には家 – 木造の家だけど地面と床が同じ高さなのが... 縁側がほしいなあ - と奥の木の上には楽隊がいて、そんな舞台上にメイとサツキとお父さんがトラックで越してきて、ストーリー展開は映画版とおなじ。まっくろくろすけ - "black soots"もざわざわいっぱい出てくる。

メイとサツキはやかましいくらい元気で丁度よくて、その点で彼女たちは十分によくて、(ストーリーは割とどうでもよくて)、あとはトトロやネコバスがどんなふうに出てくるか、だけなのだが、最初に小トトロと中トトロがちょろちょろ出てきただけ(背後に人形遣いがいる)でみんなわあああーってなり、そしてあの木の穴のなかに転がっているトトロの山のような腹のでっかさにやられる。口を動かすときに中に黒子のひとがいっぱいいるのが見えたが、大変そうだった。ポスターでのトトロは緑色で、え? 緑? ってやや心配だったのだが色はだいじょうぶ(でもどんぐりはなんでか緑だったな)。

トトロはこの場面に出てくるやつが一番でっかくてたまんなくて - 富豪になったらこいつをいっぴき買って部屋に入れておきたい – あと3メートルくらいの立ちあがっているやつと、空を飛ぶときの小さ目のと、3バージョンくらい出てきた。3メートルのは重力の事情によるのかやや顔が海獣ぽく見えてしまう傾向があり、もう少し横に膨らませてもよかったかも、とか。雨のなかのバス停で奥からトトロがぬうって出てきて突っ立っているとこ、そしてネコバスもきたきたきたー、っていうかんじで現れるのだが、あのネコ、顔があまりにアリスのチェシャ猫に似たふうで、あんなふうだったっけ? ネコバスに人が乗りこむところはやはり無理でヒトのシルエットだけなのだが、離陸して飛び回るところはやはり盛りあがる。

他方で、そういうところだけでえらく盛りあがれてしまうのはよいことなのかどうか、森の奥深くの神秘みたいなところは音楽とライティングに頼っていて、それなりの効果はあったかも。ただ、原作だとトトロは森の精とかではなくてリアルな獣のはずなので、その生々しさをどう残すか、残せたのだろうか? ひとつ残念だったのはトトロが大口をあけて「う“ぶああぁぁー」って咆哮して風が起こるとこが見たかったかも。風を起こすのは衛生上むりなのだろうが...

家族愛とか隣人愛みたいなのはどうでもいいというか、母親が入院している時に適当に隣人に任せてあんなふうに子供をほったらかしておく父親って、欧米ではまずいんじゃないか、くらい。舞台版のあのエンディングって、子供たちは神隠しにあって消えてしまった(or 親たちがどこかになくなってしまった)、ようにもとれた– そうあってもおかしくない – のだがどうか、とか。

全体としては人形遣い - ニワトリとかも - がとにかくすばらしく、Neighbourのかんじは伝わってきたのでよかったかも。
帰り、ぬいぐるみ類はなんとか買わずにふりきった。がんばった。

書いていると「ト・ト・ロ♪ ト・ト・ロ♪」が頭のなかで回りだして困るのだが、これとパンダ・コパンダのテーマは、どっちが脳に巣食う殺傷力があるのか、だれか結論をだしているのかしら?

『千と千尋の神隠し』の方は見ないかも。


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