3.21.2024

[film] Chasing Chasing Amy (2023)

3月14日、木曜日の晩、BFI Southbankで始まったBFI Flare (3/13~24) で見ました。

BFI Flareはここでずっと昔からやっているLGBTQIA+のフィルム上映を中心とした映画祭で、この期間中はBFI Southbankの通常の上映プログラムはなくなって、チケット発券の仕組みも変わって、少しだけあーあなのだが、いくつか見始めると当然のようにおもしろいの、勉強になるのが出てきて止まらなくなる – ここもこれまで通り。

これがデビュー作となる監督のSav Rodgersが自身のqueer identityに悩み始めたティーンの頃、Kevin Smithの”Chasing Amy” (1997)に出会って惹かれてのめり込み、何度も見ているうちに救われた – あれってどういうことだったのか、を映画の関係者へのインタビューを通してchaseしていくドキュメンタリー。あの映画の魅力や秘密を解きほぐして明らかにする、というよりも(それもあるけど)、彼自身がなぜ救われたのか、の方にやや重点が置かれている。

”Chasing Amy”は、すごく簡単にまとめるとごく普通のぼんくら男子Ben Affleckがレスビアンの女の子Amy (Joey Lauren Adams)を好きになってしまったことから巻き起こるrom-comで、いまでは割とふつうに転がっている話かもしれないけど当時としては珍しいテーマで – でもそんなの意識しないで楽しんだ記憶があり – 評判もよかったので映画館で見て、DVDも買って日本の積まれているどこかにある、はず。

監督のSavは自身の切ない”Chasing Amy”体験をTED Talkで語り、その内容が話題を呼んでKevin Smithからも声が掛かって、カメラマンを連れて” Clerks” (1994)のあのお店を訪ねたりした後にKevin Smithの家に行って彼といろいろ話して、その後にAmyを演じたJoey Lauren Adamsにもインタビューする。 Ben Affleckは出てこない。並行して、悩んでいる時期に出会ったRiley- 彼女はレスビアンだった - と絆を深めていってプロポーズしたり。

”Chasing Amy”の秘密というか、おもしろさについては、映画を見てもらうしかないのだが、この映画のどこがどうで、ということ以上に、恋愛も含めたレズビアンのありようを「ふつうの」がさつな男子の視点も絡めたドラマとして世界に置いて波を起こしてみせた、という点で、ここにGuinevere Turner - 彼女も登場する。さいこう - の“Go Fish” (1994)が並べられると、やはりこの頃に何かが動いたのかも、というのはわかる。そういうのが当時それらについてなにも考えていなかったであろうKevin Smithという若者から(意図していなかったにしても)出てきた、というのも含めて。

Queerカルチャーに与えた影響、というやや大きめの話と、これの裏というか地下ではっきりと進行していたハリウッドの性加害の話も出てくる。”Chasing Amy”はMiramaxの配給で、Kevin Smithはその頃のHarvey Weinsteinのお気に入りだった – その頃、というのはWeinsteinがRose McGowanらに性加害をしていた、まさにその頃のこと。(この件についてのKevin Smith本人のコメントも出てくる)

という文化史的な話、というより一本の映画がこんなふうに苦しんでいた若者を救うこともあるのだ、というドキュメントとして見たほうがよいのかも。上映後に登場したSavとRileyの佇まいもすごくよいかんじで。 ただ、”Chasing Amy”に出会ったから、というよりRileyというパートナーを見つけたことの方が大きかったようにも見えて、まあ幸せならよいではないか、って。

四半世紀前にふーん、って見ていた映画にこんな形で再会してその成り立ちなどを”Chase”することになるなんて思ってもみなかった。それは80年代終わりから90年代初の、なんでも冗談にしてふざけていた時代の男子で、そういうノリで映画を作り始めたKevin Smithにしても同じで、そんな彼が複雑な表情をつくりつつ、でも大人としてきちんと対応していたのはよいと思った。


Lesvia (2024)

3月14日、↑の前にBFI Flareで見た、これもドキュメンタリーで、78分の中編。
サッフォーの生地であるギリシャのレスボス島は、レスビアンの語源になった聖地で、70年代頃からここの浜辺に女性たちが集まってキャンプしたり愛しあったり自由に過ごしたりするようになった。この土地で育った監督のTzeliHadjidimitriouさんが、自分でカメラを抱えて記録していた土地の、女性たちの変遷をまとめたもの。

村の人たちから変な目で見られたりしつつも女性たちにとっては天国のような場所になり、でもSNS等も含めてオープンな議論ができるようになった現代では、かつてのような賑わいもなくなった、って。
ネコがいっぱいいる島はよい島。


Old Lesbians (2023)


↑の前に上映された29分の短編。
ヒューストンのArden Eversmeyer (1932-2022)さんがOld Lesbian Oral Herstory Project (OLOHP)を立ちあげて、「レスビアン」なんて言葉も概念もなかった時代の愛の語りや手紙をアーカイブとして残しておくことする。彼女が集めた手紙や記憶の一部が紹介されていくのだが、他の人がどう思っているのかも含めて、自分の女性に対する感情をどう扱えば、表せばよいのかわからないことに対する不安、そこから愛する人を見つけることができた奇跡などについて。 とてもピュアな言葉がいっぱいで、周りは結構泣いている人もいたの。

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