3.07.2024

[film] Dance, Girl, Dance (1940)

BFI SouthbankでのDorothy Arznerは2月でもう終わってしまって、ここで見たのは14本 - 全部見ることはできなかったのだが、まだ書いていなかった分について。


The Bride Wore Red (1937)

2月23日、金曜日の晩に見ました。邦題は『花嫁は紅衣装』。これは2018年のBFIのJoan Crawford特集のときに見ていた。製作はJoseph L. Mankiewicz。

腐れた伯爵がカジノで酔っぱらって、人生なんてルーレットのからからで、貴族とそれ以外を隔てているのは綺麗な服装とかそんなもんだけだぞ、って自説を検証すべく、場末のバーで歌っていたAnni (Joan Crawford)をスカウトして、お金と衣装と肩書を与えてチロルの高級リゾートホテルに送り出す。

そこで出会った郵便配達夫のGiulio (Franchot Tone)と貴族で婚約者もいるRudi (Robert Young)の間で巻き起こる恋のどたばた、それぞれのいろんな焦りと絶望、そして最後にAnniはどっちとくっついてどこにいくのかー など。ほんとあれこれいい迷惑ったらない。

あの鼻もちならない(と今は思う)“Pretty Woman” (1990)よりも少しだけ複雑でいろいろ考えさせてくれるよいrom-comだとは思うが、なぜ伯爵は最初に男性ではなく女性を選んだのか、とかの辺と、結局貴族のお遊びでしかないのならやっぱり貴族なんていらねーよな、って。

あそこまで行ったら、もうあたしはひとりで生きるよ - ばかばかしい、にならないのかなあ?


First Comes Courage (1943)

2月25日、日曜日の昼に見ました。
Dorothy Arznerが最後に監督した作品で、終わりまで仕上げることができずにCharles Vidorが関わった、と。

ノルウェーの海辺の小さな町で、Nicole (Merle Oberon)は抗ナチスのレジスタンスとして活動していて、その流れでナチスの司令官をおとして結婚しようとしているのだが、ナチスが彼女を疑い始めたので、元恋人の工作員Allan (Brian Aherne)が彼女を救出すべく英国から送りこまれて、でも海から入国した途端に見つかってばれて(なかなかまぬけ)やばいことになり.. というル・カレがテーマにしてもおかしくなさそうな戦争スパイ・アクション。結婚式以降の逃走~追跡 – 新郎にはほんとなんの未練もないのな – などはらはらどきどきなのはよいとして、最後、もうわたしの身の上を疑うやつは誰もいなくなったから、って再びナチスの巣に戻ろうとする彼女を「そうか…」みたいに止めずに眺めている連合国側の男たち、だめじゃん。

この前年のルビッチ『生きるべきか死ぬべきか』(1942) に設定としては近い - 占領が進む中でのぎりぎりの騙し合いからの脱出 – ので、コメディにしたらおもしろくなったかもしれないのになー。全体としてはとてもまじめに、まじめすぎるくらいまじめに作ってあるような。

男たちはみんなぼんくらなのに、結婚した瞬間に未亡人になってそのまま戦地に戻っていくMerle Oberonさんだけがすばらしくかっこよかった。


Dance, Girl, Dance (1940)

2月27日、火曜日の晩に見ました。邦題は『恋に踊る』。英国でも日本でも見ている。

上映前に映画(史)研究のLucy Boltonさんによるイントロがあり、いま見ても問答無用のクラシック、ですごくおもしろいところだらけなのだが興行的には惨敗で、問題はなぜこれが当たらなかったか、なのです。 と、いうことで上映後には別の部屋が用意されて更に深く掘ってみたいひとはそちらで議論しましょう、って。(こちらは不参加)

ダンスも好きだけど裕福な天辺暮らしを狙うぎんぎらのBubbles (Lucille Ball)とダンスが好きでバレエを習いながらその道を極めたいと切に願う熱血のJudy(Maureen O'Hara)、NYに出てきたまったく異なるタイプのふたりのダンサーが離婚手前のお金もちバカ男とか、すれ違ってばかりの有名な振付師とかの間に揉まれ、じたばた喧嘩をしたり落ちこんだりしつつ、のしあがっていって最後はよかったね、になる。

男どもに喝采されるBubblesのお色気ダンスと、そこに(わざと)割って入って野次と顰蹙を全身で浴びるJudyのクラシカルバレエの対比、その両者をミックスしたショーが大当たりする、っていかにも、なのと、最後にパニックになったステージ上でブチ切れたJudyが男たちに向かってきる啖呵 - 『笑ってろよ、モトを取りたいだろ、誰もあんたたちを傷つけたりなんかしない、家に帰れば奥さんやママには見せられないようなにやけ顔をしたあんたたちをこっちがどう見ているか、なんのためにそこでそんなふうに笑ってるん? かわいそーな人たち 云々(意訳)』 ここのほれぼれするかっこよさと台詞の今でもまったく古くなってないところとか、いろいろ噛みしめたい。


今月末から4月にかけての特集は”Out of the Shadows: The Films of Gene Tierney” だって。たのしみー。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。