8.30.2023

[film] Gloria (1980)

8月23日、水曜日の晩、下高井戸シネマで見ました。

あれこれ見れていないいろんな場所でのJohn Cassavetes特集、この作品くらいは見ないと、Strangerのも行かないと、って途方に暮れている(見たいよう.. でも.. )状態。

MSGでPatti Smithが最後に演奏した”Gloria”がすばらしく新鮮に響いてまだ耳に残っているから、というのもあった。
“G- L- O- R- I- A- - G.L.O.R.I.Ai !!” って口ずさみつつ。

女優Gena Rowlands - 監督John Cassavetesラインの作品で(”Faces” (1968)と”Minnie and Moskowitz” (1971)をどうするのよ、は置いておくとして)、“A Woman Under the Influence” (1974)があって、“Opening Night” (1977)があって、この作品があって、最後の”Love Streams” (1984)がくる。だいたい3年の間隔を置いて作られてきたGena Rowlandsを中心に添えた女性映画 - ”Love Streams”は主人公じゃないかもしれないけど、テーマをぶちまけるのは彼女 – のなかで、”Gloria”はちょっと特殊で異色で、それは”Gloria”という固有名だから、ということに尽きて、GloriaのありようはMabelやMyrtleやSarahとは違っていて、その違いってなんなのだろう、というところを考えたりしている。ストーリーとしてのわかりやすさ、ジャンルものである、などはあるとしても。

NYのサウスブロンクスで、買い物から荷物を抱えて戻ってきた主婦のJeri (Julie Carmen)がアパートの入り口で見るからに、の恰好の男とすれ違い、はらはらしてエレベータからドアに向かうと夫で会計士のJack (Buck Henry)はもうだめだ、って明らかに取り乱して諦めてて、そこに同じフロアのGloria Swenson (Gena Rowlands)がコーヒーの粉を貰いにドアをノックしてきたので、息子のPhil (John Adames)とJackがFBIに横流ししていたマフィアの帳簿を預けようとする。

Gloriaは子供なんて好きでもないしこんなのに巻きこまれる面倒なんてご免だし、Philもなんで自分ひとり? って嫌がるのだが、やばそうな連中 – リアルにそういう人たちだったらしい - がJackのところになだれこみ、やがて銃撃の音が響いて近寄れなくなり、アパートから出るGloriaとPhilの姿がタブロイドに捕らえれて、彼らは否応なく町中を逃げて彷徨うことになるのだが、一家を皆殺しにしたマフィアは帳簿を持ったGloriaとPhil - 顔や姿はわれてる - を追ってくるので、タクシーでマンハッタンのアパートに向かって、でも一箇所に長いこといられそうにない。

そうやって路上や地下鉄を抜けて逃亡していくなかで明らかになっていくGloriaの過去 – 追っかけてくるギャングの愛人だったり老ギャングが説得にきたり - とか、Gloriaはやっぱりあんなガキとはずっと一緒に暮らせないし、Philは自分は一人前の男なんだからおばさんの世話なんていらない、って出ていってしまったり、いろいろある。

彼女は前の“A Woman Under the Influence”でも“Opening Night”でも、「近寄るな触るな危険」マークだったわけだが、ここでもはっきりとそうで、でもその理由は銃を持っているから、だけでは勿論なく、やはり彼女がなにを思っているのかさっぱりわからない、というのは続いていて、それがこれまでと変わらずオトコたちを苛立たせて、そしてなんといっても痛快なのはそんな愚かな連中に銃をぶっ放して中指をつきたてて去っていくその瞬間で、前2作でもずっと頭のなかでそうしてきたに違いない彼女がようやくフィジカルに! というのはあるのかも。実際にめちゃくちゃかっこよいし。彼女のUngaroのドレス。

冒頭、NYの空撮 – どうだ見ろこれがオレの街だ! のような堂々としたかんじではなく、低空で天使がひかえめに見下ろしているような、視界よくなくてごめんこんなもんなのよ.. みたいなかんじで、そこから降りてきたNYの路上もざわざわごちゃごちゃしていて、もしここではぐれたらやだな怖いな、に溢れていて、GloriaとPhilが地下鉄ではぐれた時も、もう絶対に再会は無理だわ、って思った。けど、ふたりは案外あっさり、あっけなく出会えてしまう。そんな街なのよ。

ラストの墓地での再会のとき、Gloriaは既に亡くなっているのではないか問題、でも亡くなっていたのなら鬘をつける必要なんてないはずだし、あれはかつての彼女がリボーンしただけ – もっと子供好きになったとか - なのではないか、って。

John Cassavetes映画に出てくる女性がタフなのはいつもの通りだけど、ガキどもも相当目障りで小憎らしい奴らとして出てくるよね。そして男性はみーんな愚かでクズで臭そうで。この愛すべきトライアングルもまた。

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