8.01.2023

[film] L'Amore (1948)

7月25日、火曜日の晩、シネマヴェーラのネオリアリズモ特集で見ました。
邦題は『アモーレ』、英語題は国によって、で英国だと”Love: Two Love Stories”だったり。 おおーむかしに三百人劇場で見た、たしか。

監督はRoberto Rossellini。2部構成になっていて、第一部がJean Cocteauの戯曲”Una voce umana” (1929) – “The Human Voice”が原作、第二部の” The Miracle”がRamón del Valle-Inclánの小説 - ”Flor de santidad” (1904)原作のをFederico Felliniが脚色している(少しだけ出演もしている)。映画はAnna Magnaniに捧げられている(あったりまえ)。

第一部はホテルの部屋にいる女性(Anna Magnani)が受話器を手に恋人と思われる彼 - 彼の方の声はちりちりで聞こえない - と話をする。電話の様子からふたりはもう別れて彼の方は結婚しようとしているようで、なにが悪いのか遠かったり途切れたり何度か掛かってきたりする向こうの声に女性は必死でしがみつきながら、懇願して諦めて絶望して祈ってを繰り返す。ふたりの仲がどんなだったか、相手がどんなでなにが起こってどう別れたのか、は一切明らかにされず、ふたりの間にあるのは受話器と電話線と、そこを抜けていく彼女の声のみ。そんな彼女の声の大小、抑揚、肌理が、向こう側にいるらしい相手に握られてしまっている彼女のこれからの生のすべて。 そんな生の輪郭が。

同じCocteauの原作を元にしたPedro Almodóvarの監督 - Tilda Swinton主演による短編”The Human Voice” (2020)と比べてみるとあまりに違うのでびっくりなのだが、現代のフツーの反応としては、地味でめそめそしたAnna Magnaniに対してカラフルでかっこよいTilda Swinton、になるのだろうか、そういうところも含めてヒトの声が女性のありようをどう映しだしたり動かしたりするのか、を約70年のスパンで見てみる、とか。

“The Miracle”は↑のと対照的にずっと野外 - 野宿の話で、丘の中腹でヤギの世話をしていたNannina (Anna Magnani)がぬっと現れた浮浪者だか僧侶だか、得体の知れない男を聖ヨセフと思いこんで彼に話しかけるのだが、彼はそれに応えずに持っていたワインを彼女に飲ませて彼女はそのまま寝込んで、彼 = 聖ヨセフを見たのは奇跡に違いない、って思いこむ。

そのうち彼女は妊娠していることがわかり、それもまた奇跡だって騒ぐのだが、町の人々からは揶揄われてちょっかいを出されて追われるようにヤギに導かれて山の上の教会に這うようにたどり着いて倒れて、そこで子供を出産して、溶けたような表情になるの。

どちらのエピソードもひとりになって(されて)しまう女性の苦難とそれをたったひとり(ひとりしかいない)で受けとめるAnna Magnaniを描いて、それだけで十分で、そこに「愛」というタイトルを被せてしまうので力強く圧巻で、聖なるなにか、について考えたくもなるのだが、これって今の世の中の表象としてどんなふうに位置づけられてしまうのだろうか、とか。(例えばLars von Trierが描く女性などと比べて)


Luci del varietà (1951)

7月26日、水曜日の晩、シネマヴェーラの同じ特集で見ました。この特集での最後の一本となってしまった。 邦題は『寄席の脚光』、英語題は” Variety Lights”。

作・監督はFederico FelliniとAlberto Lattuadaの共同で、Felliniの名前が監督としてクレジットされた最初の1本。

イタリアの小さな町に立ち寄って公演する旅回りのボードヴィル一座の舞台を見ていた野心たっぷりの若い娘Liliana (Carla Del Poggio)が舞台に参加して、最初はなんだこいつ状態、だったのを満員御礼に変えて自信をつけた彼女は座長のChecco (Peppino De Filippo)にべったりになって一座の旅に同行しCheccoの愛人のMelina (Giulietta Masina)とか全員から顰蹙を買うのだが、ふたりはお構いなしでローマで自分たちのシアターを立ち上げようとして…

万年貧乏でそんなにうだつの上がらない旅芸人一座に巻き起こるいかにもありそうな波風と、そんな程度の浮き沈み程度では懲りない変わらない芸人たちが絡まって漂うどたばたコメディで、よたよたした旅の終わらないかんじと、でもなんだかんだそういうのが好きなんだよねー、の突き放し感がたまんない。イタリア映画を見てよく思う、ずっとやっていなはれー(関西弁)が滲んで浮かんで。

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