8.27.2023

[film] Elemental (2023)

夏休みがいってしまったので元のトラックに戻る。
8月4日、金曜日の晩、TOHOシネマズ日本橋で見ました。邦題は『マイ・エレメント』。Rom-comだと聞いたので。

本編上映前に短編の”Carl’s Date” (2023)が流れて、"Up” (2009)のおじいさんとわんこの日々が描かれる。これがまた、この時点でじーんとなる(させる)やつなのでこの後のは覚悟しておけ、ということなのだと思った。あの冒険から10年以上経って、あのガキがどうなったか見たかったかも。

Pixarのアニメーションだと、人間ではないキャラクターたちが暮らす都市のお話し、として”Zootopia” (2016) - 『ズートピア』があったし、人間界のお話しではあるがその頭の内側で起こるドラマとして”Inside Out” (2015) - 『インサイド・ヘッド』があり、その設定というか建て付けの説得力にどこまでのれるかどうか、という点からすると”Inside Out”はちょっと微妙できつかったかも。

今回のは「火」と「水」と「風」と「土」、それぞれ四大元素の属性をもった種族? - 人間の人種や民族よりそれぞれの溝は深く決定的に違ってて互いに相容れなさそうな区分のある世界で、この4族が共存するElement Cityっていう都市があって、それぞれの種族は自分たちでゲットーのような居住区域を作ってその中で暮らしている。なぜならそれぞれの属性は互いにとって危険かつ破壊的な要素を持っていたりするから。 (最初はこの設定、やや大げさで無理あるんじゃないかと思ったのだが、見た後だと案外こんなもんかもね、って)

なかでも「火」は誰からみても危険で忌み嫌われるところがあって、主人公の「火」のEmber (Leah Lewis)の一家はそれまで暮らしていたファイアランドから苦労してここに辿り着いて雑貨屋を始めて軌道にのせて、幼い頃からそんな両親の苦労を見てきたEmberは自分もそれを継ぐのだって当たり前に刷り込まれてきた。 のだが、ある日「水」のWade (Mamoudou Athie)と出会って、こいつとはムリムリ、だって「水」だしー、とか思いながらデートしたりしているうちに互いのことを本当に好きになってしまう。基本は主人公のEmber目線でWadeがなに考えてEmberに声をかけてくっついていったのかがあんま見えないのだが(水だからちゃらちゃらあんま考えてないのかも)。

ここまでで、アニメとは言えこんな設定をありとするかなしとするか、いろんなRom-comを見てきた者からすれば、こんなのありに決まっているのだし、むしろRom-comというのはこういう段差 - ホラーにおける「恐怖」のようなもの - を恋愛によって乗り越えるために存在するジャンルなのだからちゃんと見る、見届けるしかない。 というか、こうしたありようをわかりやすく示すために四つのエレメントを題材としてし持ち込んだのではないか、とすら思えた。

WadeとEmberの発火した恋はEmberの進路や家族 - 特に父親との関係も根本からひっくり返してしまう破壊的なもので - なんたって「火」だしね - Emberの自分の怒りを抑えきれなくなる性格と気性も晒されてしまったり、家族親族には困惑を、町には大混乱をもたらして、Rom-comの定石通りに、一度はすべてご破算になってしまったかに見えたのだが。でも火は消えないんだよ、っていうのと、たとえ炎上したって水が傍にあれば安心だろ、って - この辺よく考えたもんだなと思った。

監督のPeter Sohnはストーリーに韓国系移民としての自らの家族の経験も織り込んだそうで、だからか家業を継ぐ継がないを巡る確執のわかりやすさ - わかるけど日々の柔らかい呪いとなってのしかかってくる生々しさなどはくっきりと伝わってくる。きっと描きたかったのだろう。 この作品が公開当初はそんなでもなかったのにだんだん興収を伸ばして広がっていった話、とってもよいなー、

あんま関係ないけど、魔法使いサリーの雪だるまさんの話がずっとトラウマで、最後にああなったらどうしよう、ってはらはらしたのだがなんとかだいじょうぶだった。だいじょうぶだから。

あと、これもどうでもいいことだけど、ふたりのお墓はどうするんだろうか、とか。

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