5.19.2023

[film] Prénom Carmen (1983)

5月2日火曜日の午後、ヒューマントラスト渋谷のゴダール特集で見ました。

今ここでやっているゴダール特集は、昔に見たのも含めてちょこちょこ見に行ってて(さっき数えたらここまでで6本)、やはり一本にかかる時間が短いのでふらっと入ってさっさか見れるのがよいのかも。

でもゴダールの映画って感想は書きづらい。映画のなかにぜんぶ書かれて曝されていて、読めばわかるようになっているというか、そのストーリーとか表象の「わかる」かんじが他の映画のそれとは違って表に出ているので筋みたいのを文章で追ってみてもつまんなくて、結果としてかっこいいー、とか、うつくしー、とかで終わってしまう。べつにそれでもよいのだが。 で、そうやって書いてとっとと忘れて次に見るとまたいちいちおおー、とか唸ったりしてる。

邦題は『カルメンという名の女』英語題は”First Name: Carmen”。 いちおう原作はメリメの短編小説『カルメン』(1845)と画面にも出るが、ふーん、程度。シナリオ・脚本はAnne-Marie Miéville、撮影はRaoul CoutardとJean-Bernard Menoud。

自分にとって一番好きなゴダールの1本(これと”Soigne ta droite” -『右側に気をつけろ』(1987)のどっちか。世代的なものか?)で、子供の頃シネヴィヴァンの”Passion” (1982)でなんかわけわかんないけどすごいぞ! ってなった後のこれで痺れて、LDまで買ってまだどっかにある。

高架を電車が走っている夜の街とか昼の海があり、弦楽四重奏を奏でる一団がいて、Carmen (Maruschka Detmers) と「呼ばれるべきでなかったかもしれない」彼女が、なんの病気だか定かでない、たぶん仮病で療養所に入っているうさんくさい - 映画監督だという - 叔父さんのJeannot (JLG)の所有する海辺のアパートを借りて、あたまの悪そうなJoseph (Jacques Bonnaffé)とどたばた絡んだりずっこけたりしながら冗談みたいな銀行強盗を実行して大金を奪って海辺にふたりで引き籠り、強盗の際に知り合った弦楽四重奏の楽団にいたClaire (Myriem Roussel)が絡んできて、裁判があり誘拐があり映画撮影があり痴話喧嘩があり銃撃があり、最後にはだれかが倒れされて、「夜明けだ」とかいうの。

筋はあってないようなあれなのだが、でもわけわかんないかというとそんなことないの。B級ジャンク・ノワールの切った張ったをおそろしくかっこいいコレオグラフと音(残響)と声で重ねて転がしていって、ほつれも破れも放置する無添加の冷たさがすごくて、それは”Passion”が見せてくれた労働とハイ・アートのコントラストの次として – 美男と美女と変人しか出てこないパルプフィクションをこんなもんかー くらいの勢いで並べててさくさく見れる。

夜の電車も海も、好きなカットが気持ちよい音と共に全部盛られて映っている。
あたまくるのはこんな40年前の映画に未だにボカシなどが入っているとこ。


Le Petit Soldat (1960)

5月2日、↑のに続けて同じとこで見ました。『小さな兵隊』。
撮影は1960年、『勝手にしやがれ』(1960)に続く長編2作目として制作されながらアルジェリア戦争関連の政治的コンテンツを含むから、って1963年まで上映禁止となっていた1本。

フランス軍の脱走兵が軽いかんじでテロ組織と関わったら軽く暗殺を依頼されて、軽く女の子とつきあってみたら彼女も裏でテロ組織と繋がっていて首が回らなくなり、国外に脱出しようとしても失敗して散々な目にあうの。

Anna Karinaのゴダール映画最初の一本であり、カメラ越しにみるみる恋におちていく経過がうかがえる以外は、なんか延々ぶつぶつ小理屈ばかりこねて喋ってるだけで笑えるとこもなくて(笑えるかどうかはだいじ)、”Carmen”みたいなのの直後に見るともどかしいしまどろっこしいー、とっととやっちまえー、みたいなかんじにはなるかも。同じ「戦争映画」だったら断然『カラビニエ』(1963)の方だなー、とか。


Two American Audiences: La Chinoise - A Film in the Making (1968)

5月5日の晩、渋谷で”Week End” (1967)を見た後にK’sシネマに移動してみました。
40分の短編で、邦題は『ニューヨークの中国女』。監督はRichard LeacockとD.A. Pennebakerのふたり。”La Chinoise” (1967) -『中国女』の米国公開にあわせて訪米したゴダールが、NYUの映画学科の学生たちとティーチイン - という程がっつりしたセッションではないQ&Aを記録したもの。監督ふたりも画面上にいて、たまに質問の意図などについて間に入ったりしている。

今回『中国女』も上映されていたのであわせて見ればよかったのだが、できなくて、これを見るとあー見ておけばよかったかも、に少しなった。

映画を学んでいる学生ならもっと鋭いこと聞けば? みたいな緩めの質問ばかりなのだが、ゴダールの答えは - 英語だからというのもあるのかもだが – ものすごく礼儀正しくまともに応えていてちょっとつまんなかったかも。『中国女』の場合だとあれくらいの温度感でちょうどよいのかな、とか。

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