4.10.2023

[film] Phenomena (1985)

4月3日、月曜日の晩、ヒューマントラストシネマ渋谷で見ました。 『フェノミナ』。

この週末のDario Argentoの10年ぶりの新作”Dark Glasses”公開に向けて、『サスペリア』の1と2とこれの3本がリバイバル公開されていて、新作はものすごく怖そうなので無理、『サスペリア』は1とそのリメイクしか見ていないけどもう十分、だからせめてこれくらいは、って。どっちにしたって怖いわ。

スイスの郊外の田舎道で、ひとりバスに乗り遅れた少女が、寒いし誰もいないので、道路を少し入った家の扉を叩いて、中に入ってみると(そんなのぜったい入っちゃだめ)家のどこかの部屋に鎖で繋がれていたなにか(どんなのかは映らない)が解き放たれて少女に襲いかかって、彼女は森に逃げこむのだがぐさぐさにされて首をだっきん。

LAから寄宿学校のリヒャルト・ワーグナー女子アカデミーにやってきたJennifer (Jennifer Connelly)は有名俳優の娘で、昆虫と仲良くなることができて、夢遊病で放っておくと屋外に出てしまったりする。

ある晩そうやって外に出てしまうと女性が殺される夢だか現実だかに遭遇して気を失い、気がつくと車いすの生物学者McGregor教授(Donald Pleasence)と、彼の助手のチンパンジーのIngaに介抱されていて、虫を使って事件の捜査解明を手伝っている教授と虫が友達で交信できるJenniferは仲良しになる。

続けてJenniferと同室のSophieがおそらくJenniferと間違えて殺されて、再び夢遊病と蛍に導かれて外に出てしまった彼女は、犯人の手がかりと思われるウジ虫のついた手袋を見つけて、それを教授のところに持っていくとこのウジは人の屍肉にしかたからないやつなので、犯人はそういう屍体をいっぱい貯めこんで熟成している可能性があるかも、って。

学校ではそんなJenniferの特性 - 虫とお話ができる – をみんなが笑うので、それならほらって軽く見せてパニック起こしてあげた後に気を失って、校長はこんな娘は精神病院に送ってしまえ、って勝手に救急車を手配して、でもどうにかそこを抜け出した彼女はMcGregor教授のところに逃げこむのだが、その教授も殺されてしまいー。

もうとにかく起こることぜんぶありえないし嫌なのでとっととアメリカに戻して! ってパパのマネージャーに連絡して、なんとか帰路を手配して貰って、翌日のフライトまでこちらに来た時に付き添ってくれた女性の家に連れていかれるのだが…

母を失ってはいるもののなに不自由なく育てられた御令嬢がスイスの全寮制学校に入れられた途端に- 虫を操ることができたり夢遊病だったりという個の事情があったにせよ - 酷い目にあわされて、最後に残ったのは彼女と身よりのないチンパンだけ.. みたいな。

Argentoはこの作品をドイツロマン派のCaspar David Friedrichの絵画(Jenniferの部屋にそれらしいのが貼ってある)にインスパイアされ、2次大戦後でナチスが勝利した後の世界を想定して書いたそうで、つまりJennifer(=アメリカ)が横から入りこんでこなければ、殺人鬼がいてもそこらの虫が協力して見つけだして退治してくれたかもしれない、そんな神的な「現象」について描いただけ、というのと、でもそれにしてもウジが涌くのと血が滴ったり首が飛んだりするのを並列で「現象」ってクールでよいかも。そしてそんな現象を意図せずして繋いで紡いでしまうJenniferもまたクールで、虫と話すことができるのも夢遊病も彼女にとってはふつうのことなので、極度に怖がったり怯えまくったりすることもなくて、べつにいいじゃん(とまでは言わないけど)なのは人によってはつまんない、になるのかも。(わたしも虫が涌くのも本が涌くのも一緒なかんじでどんとこい! なのでそんなには)← そっちじゃない。

かつて、Olivier Assayasが2010年のNYFFに”Carlos” (2010)を持ってきた際、影響を受けた映画あれこれについてのレクチャーをやってくれて、そこでDario Argentoの傑作としてこれが紹介された – と思っていたの(で今回のを見たの)だが、過去のを調べてみると紹介されたのはこれではなくて、“Inferno” (1980)の方だった。あの映画で女性が地下に落ちた鍵を拾うべく水中に飛びこんで、そこに浮かんできた死体が絡まる、というシーンで、Assayasは主人公のアクションとの繋がりで、夢とコネクトしつつ常に未知の世界の何かが生起している感覚に導いてくれる、という言い方をしていたのだが、この”Phenomena”にもJenniferが燃えさかるボートの上から水中に飛びこんで岸にたどり着く似たようなシーンがあって、こちらも同様にすばらしいと思った。

伴奏音楽はもちろん、のGoblinなのだが、合間合間にIron MaidenとかSex Gang Childrenとか、80’sのメタルとかゴスが聞こえてきて、これも変なかんじだったかも。

JenniferのパパにはAl Pacinoを想定していたそうで、最後に彼が実際に現れてみると、実はこいつが悪魔だった、とかだとまた(それは別の)。

天涯孤独の身となったチンパンジーのIngaは、あのあとJenniferに連れられてLAに行って、TVにでる人気者になるのだが、あるTVドラマの収録中にとつぜん(→ NOPE)。

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