8.06.2021

[film] The Sparks Brothers (2021)

7月31日、土曜日の晩、米国のYouTubeで見ました。
いろいろやばくなった時のさいごの切り札としてとっておいたが、もういいかげん我慢できなくなった。ほんとうはもちろん、大画面の爆音で見たかったのだけど。

Edgar WrightによるRon Mael & Russell Mael – Sparksの評伝ドキュメンタリー 140分。

こういうのって、見たい人はなにがなんでも見るだろうし、Sparksを知らなかったりあまり興味ない人はどうせぜったい見ないだろうし、知らなかったり興味なかったりする人に見て!とはあまり言いたくなくて、これから見ようと思っている人に、やっぱりとんでもなくよかったからぜったい見て! ってすごく強く言いたい、そういう1本。

ロスに生まれて育ったRonとRussellの兄弟はママにThe Beatlesのライブに連れていって貰ったりしながら当時の西海岸音楽シーンにどっぷり浸かって育って(いいなー)、あたりまえにバンドを組んでTodd Rundgrenのプロデュースで1st (1971)を作って、でもぱっとしなくて、英国に渡って3枚目 - ”Kimono My House” (1974)の"This Town Ain't Big Enough for Both of Us"でブレークして、その後もGiorgio Moroderと組んだ”No. 1 in Heaven” (1979)が当たって、90年代初のお休みの後に再び~ といったバンドの変遷は当然のように押さえつつも、おもしろいのは本人たちのコメントと膨大な量の関係者とかファンの人々のいろんな言葉なの。

モノクロ画面になるコメンテイター - Todd RundgrenやTony ViscontiやGiorgio Moroderといった歴代のプロデューサーたちやバックを支えた人たち、BeckにFleaにRoddy BottumにJane WiedlinにJack AntonoffにThurston Mooreといった米国のミュージシャンたち、Neil GaimanやAmy Sherman-Palladino & Dan Palladinoといった作家たち、Mike Myers、Fred Armisen、Jason Schwartzman、Patton Oswaltといった俳優たち、そして監督Edgar Wright自身もここは自分が言わないと(言いたいの!)というところで発言していたり。

でも個人的に一番興味深かったのは、”No. 1 in Heaven”が当時の英国音楽に与えた影響を語る- ここは監督の世代的なものもあるのだろう- Nick Rhodes & John Taylor、Stephen Morris & Gillian Gilbert、Martyn Ware、Vince Clarke、Andy Bellなどなど。他にはSteve JonesとかBjörk(声のみ)とかBernard ButlerとかChris DiffordとかNick HeywardとかAlex Kapranosとか。Joy Divisionの”Closer”(1980)のレコーディングの時にスタジオで常にかかっていたのがシナトラのベストと”No. 1 in Heaven”だった、とか。

Pet Shop Boysがここにいない理由もわかったり。あといないのは誰だろ - Soft Cell? こういうののコメンテイターとして必ず口を挟んできそうなJarvis Cockerもいないな。

確かに”Terminal Jive” (1980)以降の作品の英国での扱いってなんだかよくわかんない特別なものだった気がする。
自分が初めて聴いたのは、高校生の頃、みんなとおなじく”Kimono My House”で”、This Town Ain't ..”はまったく聴いたことのないかっこよさに溢れていた。それはパンクの錯乱ともグラムの繚乱ともちがって、真似してよいのか戸惑う(もちろん真似なんてできない)類の、口に出すのも憚られるようなかっこよさで、The Number One Song in Heaven"もそうで、これらの曲にある変な高揚感とかジャケットの怪しいのと曲のギャップ、なによりもこいつら何者?? がきた。

映画は誰もが彼らの音楽に最初に接した時に感じるであろう - そしていまだに世界の至る所で続いていると思われる - こいつら何者? の正体をクロノロジカルに追っていく。でももちろん、あの漫画みたいなハイトーンのヴォーカルとちょび髭コンビの創作の秘密なんて最後まで明らかにされることはないのでご安心を。

ひとつあると思ったのは冒頭に「xxxファンファーレ!」って連打するところで、彼らの音楽って突撃するときの不敵で不穏なファンファーレのように鳴ることがあるなあ、って。勝ち負けなんてどうでもいいけどよくわかんないけどとにかくいくぜ! っていう時にどこからか響き渡ってくる威勢のいいやつ。

あと、Intermissionのパートで明らかにされる映画との関係。頓挫したJacques Tatiとのプロジェクト、同様になくなったTim Burtonとのアニメのプロジェクトのこと、でも最後の最後に、こないだのLeos Caraxとのあれが。 見た翌日に”Annette”のサントラ盤 - 緑のポスター付き - が英国から届く(レコードはまだ英国から買ってる。日本の高くない?)。これがまたSparks & Adam Driverとしか言いようがない変態なやつで.. 映画”Annette”と一緒にSparksにもスポットが当ってまたライブに来てほしいなー。

形式としてはドキュメンタリーなのだが、アニメもあるし(Simon PeggとNick Frostもここに)、いろんな引用たっぷりだし、中心のふたりと一緒になって遊んでるし、Edgar Wrightによる渾身の講談とか紙芝居一巻! のようなかんじ。とにかくずっと楽しくて幸せになれる。



”Annette”のサントラ盤と一緒に届いたのがThe Durutti ColumnのEP - ”Deux Triangles”のRSD Dropで出たやつ。おまけに付いていた81年8月のブリュッセルのライブ(既発のだけど)をかけるとあの頃の空気がとげとげ吹いてくる。この音とThe Cureの”Faith”だったねえ。

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