8.19.2021

[film] Joy Division (2007)

8月14日、土曜日の午後、低気圧にうなされながら、死んじまえって悪態つきながらMUBIで見ました。

Joy Divisionに関するドキュメンタリー。監督はRadioheadの”Meeting People Is Easy” (1998)等をつくった英国人ドキュメンタリー作家のGrant Gee。同年にはAnton Corbijnによるバンドの評伝ドラマ - ”Control” (2007)もリリースされていて、”Control”の方は見た記憶があるのだが、こっちは自信がなくて、たぶん見ていなかったかも。

シナリオをJon Savageが書いているので、きわめて落ち着いた、腰の据わった目線。まずは70年代中期のマンチェスターの地勢と産業のようなところから入り、そこに76年、Sex Pistolsという爆弾が投下されて地下であれこれが蠢き始める。

基本は生き残っているバンドメンバー - Bernard Sumner, Peter Hook, Stephen Morris - と周辺関係者 - Tony Wilson, Peter Saville, Pete Shelley, Genesis Breyer P-Orridge, Paul Morley, Terry Mason, Richard Boon, Anton Corbijn, - へのインタビュー、そこにTV等の資料映像、バンドの演奏シーン、演奏シーン以上に印象に残る(なんでだろう?)Kevin Cumminsによるモノクロのポートレート等を並べて、単なるバンド結成とシーンでのしあがって成功が約束された米国ツアー前日に潰れてしまうストーリーを語るだけではなく、バンドの生と死を担ったIan Curtisの挙動にフォーカスするのでもなく、あの時代に - 音楽的にはポストパンクと形容される - 英国の音楽シーンで、彼らのドラムス、ベース、ギターはどんなふうに鳴ったのか、Ian Curtisの痙攣ダンスや咆哮はどんな影や像を残したのか、をバランスよく配置して、現代のイギリスに繋げている。

なんでそれが大事なのかというとあの頃のIan Curtisの死は、その悲劇はほんとうに悲劇で、あんなふうに震えてぐしゃぐしゃになっている若者はあの頃そこらじゅうにいて(もちろん比較はできるものではないけど)、そんなのばっか掘ってもしょうがないだろ、というのはずっとあったの。

David Bowieの”Low”の、弾けるA面(パンク)と対照的に陰鬱なB面の1曲目 - “Warszawa” - からその名前を取ったバンドが、ドラマーの正式加入に併せて”Joy Division”と名を変え、ぶつかりあい絡み合って脈打つベースとドラムスに拘束され、そうありながらも彼はステージであんな異様な動きをしてあんな声を絞り出してなにかを振るい落とし解き放ち、同時に自ら絡め取られようとしているようだった。そうやってバンドの全員が互いに縛りあって固まって震えていて、そしてMartin Hannettによって加工された人工音はその帯域を確保するトーチカのように機能していた。

映画のなかでコメントするGenesis Breyer P-Orridge - 彼のバンド名も脈打つなにか - を見て、そうやってパンクの反対側で壁の内側を蹴り続けていたバンドがいっぱいあったことも思い出したり。Buzzcocksだって、ずうっと流しているとそういうかんじになるし。

でも80年くらいに聴いた当時は曲のタイトルも含めて「暗いな」、しかなくて、そのくせ金縛りで聴いて残ってしまうのがなんか嫌であまり聴かないようにしていた。初めて映像で見たのは森脇真末味さんの漫画で見た後だったか前だったか、やっぱり…  しかなかった。この映画で映像を見てもああ、しかなくて、でも懐かしいかんじは見事にこなかったかも。エバーグリーン、というのとも違う、相変わらずやってくる偏頭痛と同じようなものかも、って。

それにしても、この映画の撮影当時に生きていたひとも随分亡くなってしまったねえ、って。橋の向こうに行ってしまうんだなあ。 

映画のなかで結構喋っているStephen MorrisとPaul MorleyはSparksのドキュメンタリーでもいろいろコメントしていた。いまはこっちを早く大画面で見れるようにして。



フジロック、ほんとうにやるつもりなんだ..   音楽関係者の苦悩もわかるしそういう文章もいっぱい読んだしフェスを楽しみたい人たちの気持ちもわかる(いや、いまはわからない)けど、4〜5月頃の状態だったらまだわかるけど、いまの感染状況ではだめだと思う。 対策は万全(はいはい)で地元の協力も得られて政府もなにも言わない(言うわけないよ全員あたまおかしいんだから)。 でも今は何をどうしたって、大勢の人が動けば感染者は増えて会場の外に散るのを止められない。 そしていまはとにかく苦しんでいる医療従事者のことを、自宅で病院のベッドが空くのを待って死にそうになっている人たちのことを考えるべきなの。 清志郎やJoe Strummerがこの状態を見たらなにを言ったか、どう行動したか、そんなことも想像できないバカばっかりになっちゃったんだ日本の音楽業界はー。 こんなことで、ここまでして「成功」して、盛りあがって、なにが楽しいの? (以下えんえん。ほんとがっかり) 
 

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