8.21.2021

[film] Pig (2021)

8月18日、水曜日の晩、米国のYouTubeで見ました。

世の中にはNicolas Cageの映画が来たら見たくてたまらなくなる人たちがいるし、豚さんの出てくる映画が来たらなにがなんでも見たくなる人もいる。自分は後者で、宣伝とかを見たり読んだりすると、いつものように傷だらけになっているNicolas Cageが「おれの豚を返せ」とかすごんでいるので、豚を奪われたNicolas Cageが命がけで豚を奪還しようとぐさぐさするシンプルなヴァイオレンス・アクションなのだと思っていた。91分だし。

そしたら心地よくぜんぜん違った。どちらかというとノワール。ファム・ファタールは”Pig”なの。

ポートランドの山奥の掘っ立て小屋で世捨て人のようにぼうぼうのRob Feld (Nicolas Cage)がいて、黒トリュフを掘りおこす豚さん(かわいい)と暮らしていて、豚はなにしてもかわいいし、ふたりはとても幸せそう。 なのだがある晩、小屋に現れた暴漢に襲われてRobは殴られて床に転がされて、その隙に豚が攫われてしまう。

怒りに燃えるRobはいつもスポーツカーで森の奥までトリュフを買いにくるちゃらい若者のAmir (Alex Wolff)を呼んで脅したり凄んだりしながら、思い当たる都市の暗部に分け入っていって、その過程で明らかになっていくRobの過去とは.. そして豚を奪った犯人は? その動機は?

3パートに分かれていて、Part 1が“Rustic Mushroom Tart”、Part 2が“Mom’s French toast and Deconstructed Scallops”、Part3が“A Bird, a Bottle and a Salted Baguette”と、それぞれ料理のお皿の名前がついていて、実際にそれらしいのが出てくる(あれだろうなー、くらいだけど)。少しネタバレになるが、実はRobはポートランドでは伝説のシェフで、なにかがあって職を捨てて世を捨てて、豚さんと暮らすようになった、ということ。

RobがAmirに指示して連れていけという場所とか人とかは、Amirも唖然とするようなやばい場所だったり人だったりで、やがてその糸を手繰ってAmirの富豪の父Darius (Adam Arkin)のところに行きつく。

Robは殆ど喋らないし喧嘩もそんなに強くないのだが、厨房に立つと殺気というかなにかが漲って、やがて彼の一皿がなにかを引きだすことになる。ここには食や食材を巡るとっても深い話が横たわっているのかもしれない。泥のなかからトリュフを掘りだす(でも自分はそれを食べない)豚さんをRobはなんであんなに愛でるのか - トリュフの在り処は自分でもわかるというのに。シェフはなんで他人のためにあんな変な一皿を考えだしてサーブするのか、料理というもの、あるいは美食というものを巡る闇と不思議が渦を巻く。これはノワールになりうるものだと思った。

最初のバージョンは2時間以上あったそうなので入っていたのかも知れないが、やはり食材を拾ったり調達していくところと調理のところはその手元と工程をきちんと見たくなるねえ。設定の建てつけとしてはなんとなく”John Wick” (2014) とかに似ているのだが、これは殺しあうのではなく生かしたりケアしようとするお話しなの。

ようやく日本公開が決まった”First Cow” (2019) も(時代は違うけど)オレゴンで人間の料理に特別ななにかを供する動物(牛)を巡る騒動で、この作品も現代のオレゴンを舞台にした動物(豚)を巡る騒動 - 追跡劇で、どちらの動物にも名前はなく、どちらの動物も♀で。 オレゴンにはいったいなにがあるのか?  あそこのPino Noir - ものすごく変で、特殊なワインのこととかも。

John Wick同様にシリーズ化してくれてもいいよ。毎回動物替えて。



街なか、まだひとでいっぱいなのね。だめね。

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