7.31.2020

[film] How to Build a Girl (2019)

7月25日、日曜日の晩、Amazon UKで見ました。見たかったから。

日本でもまもなくようやく公開になる”Booksmart” (2019) – これは必修 – でも炸裂していたBeanie Feldsteinさんのガリ勉女子コメディ、の続編でもなんでもないけど偶然とも思えない、舞台を英国に移して進学ではなくお仕事をテーマにしたドラマ。

英国のジャーナリストCaitlin Moranさんの自伝的小説の映画化、なので、はじめに”True(ish) Story”とでる。”Booksmart”とおなじくらいおもしろくて、これも必須。

90年代初めのWolverhamptonで、16歳のJohanna (Beanie Feldstein)のおうちはずっとミュージシャン(ドラマー)になる夢を抱いたまま失業中の父と産まれたばかりの双子を抱えて死にそうな母と他に男兄弟ふたりがいて貧困などなど完全にどん詰まってて、図書館の本はぜんぶ読んじゃったしつまんないなんかやりたいって腐っている。彼女の部屋の壁にはフロイト、マルクス、ボウイ、エリザベス・テイラー、ブロンテ姉妹、シルヴィア・プラス、『サウンド・オブ・ミュージック』のマリア、『若草物語』のジョー、等の肖像が貼ってあって、いろいろアドバイスをくれる。(「死にたい~」って叫ぶとシルヴィアがいいやり方あるわよ、とか)

ある日、音楽雑誌のレビュー募集の広告を見た父親がこんなのどう? って言ってきたので『アニー』の“Tomorrow”のレビューをさくっと書いて送ったら返事が来て編集部(雑誌の名前は“D&ME” - Disc & Music Echoだって。原作者が入ったのはMelody Makerらしいけど)に来いという。張りきって行ってみると、あんなのでレビュー書いてくる奴がいるとは思わなかったので興味本位で呼んでみただけ、って言われてトイレで泣いていたら壁に貼ってあるポスターのBjörk(あんま似てない)が話しかけてきて、ケルアックの『路上』なんて読んではだめ、今あなたが読むべきなのは『大草原の小さな家』なのよ! とかよくわかんないアドバイスをくれて、それで編集部にくいさがってお試しでライブレビューを書かせてもらう。こうして初めて行ったライブ - Manic Street Preachersが”You Love Us”をやってる – で火がついて(まあ、つくよね)熱狂的なレポートを送ったら採用されて、ライブレポートで食っていけるくらいになる。

で、今度はちゃんとしたインタビュー記事を書かせてください! って頼んでアイリッシュ系シンガーのJohn Kite (Alfie Allen)の担当を任されて彼と話したりしているうちによいかんじになってべったべたに甘い記事を書いたら却下されて切られて、それに反発して書いたやけくそ毒舌系のレビューが当たり、彼女は人気ライターDolly Wildeに変身して大見得きって歩いていくようになる(彼女のスタイルのモデルは4 Non BlondesのLinda Perryさんかな?)。

でもそんなふうに彼女が吐きまくった毒はやっぱり自分に跳ね返ってきて..  (王道)

脇目もふらずに爆走して舞いあがり、でも後に正気に返ったらいろいろ見えてなかったことに気付いて唖然.. という起伏の激しいキャラクターを演じたときのBeanie Feldsteinさんはとにかくすばらしい。のだが、他方で彼女をそんなふうにもてあそんだロック業界の男社会ミソジニーについてきちんと触れてもよかったのでは。 Britpop前夜の男祭りのノリのやーなかんじとか。 最後に登場するEmma Thompsonさんとか。 たまたまだろうけど、Q Magazineの廃刊と重ねてみたり。

小娘小僧が音楽業界でのしあがっていく自伝ベースのcoming-of-ageドラマというと、みんな大好き”Almost Famous” (2000)があって、担当しているミュージシャンとの確執とか似ているところもないことはない、けど「あの時代」の音楽への愛に溢れていた”Almost..”に対して、こちらは直球のGirl負けんな、になっていてそれがちっとも暑苦しくない。でもやっぱり別の映画かな。英国家庭ドラマという線で見れば、この間の”Blinded by the Light” (2019)の方が近いかも。

あと、90年代の音楽誌編集部に貼ってあるポスターとか流れている音楽とか、Carter the Unstoppable Sex Machineとか、 The Sultans of Ping FCとか、Stereo MC'sとか、あったよねえ、って、懐かしさたっぷり。なんか、90年代初に割とあった気がするごりごり無理強い、言ったもん勝ちみたいな毒舌カルチャーって現代の誹謗中傷あたりに受け継がれているのかなあ、とか。

音楽はたまんない。最初からElasticaの”Connection”ががんがん流れるし、お茶の間のTVからはHappy Mondaysの”Kinky Afro”が流れてるし、The Auteursとか、Jeff Buckleyまで。ぜったいあってもおかしくなさそうなThe Smithsがないというのは..


もう8月かあー。 の後にえんえんグチを言い続けたいかんじ。

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