7.02.2020

[film] House of Hummingbird (2019)

6月27日、土曜日の晩、Lincoln CenterのVirtual Cinemaで見ました。日本でも『ハチドリ』で公開が始まっているのね。

94年のソウルで、14歳(また14歳..)のウニ (Park Ji-hoo)がいて、玄関のベルを何度押しても開けてもらえないのでなによもう!って怒ったら別のフロアで、でっかい団地なので自分ちに入ることすら大変なのだ、というオープニング。

彼女の家は自営の餅屋をやっていて店に出ている母親とがみがみやかましい父親がいて、長男は父親の前では大人しく勉強しているふりをしつつ裏ででウニを殴ったりして、姉はすべてを諦めているかのようにふらふら遊んでてBFを家に連れこんだりしている。

家の外にはふつうに親友がいて、彼っぽい青い彼がいて、年下の女の子から憧れられたりして、親友と万引きしたら捕まって彼女が自分の家のことを喋っちゃうので絶交したり、彼とはキスするくらいまで行っていたのに突然向こうの親が割りこんできて引き裂いていったり、耳の脇のところにしこりができて入院しなきゃならなくなったり、ほんといろいろあって頭がぱんぱんになっていた頃に中国語(漢文?)の塾の先生 - ヨンジ(Kim Sae-byuk)と出会って、彼女のクールで、でも優しいところにぽーっとなって、いろんなことを相談するようになって。

いいことは何一つないし、こちらがこうなってほしいと思うことは何一つ叶わないし、逆に怒られる叱られる叩かれる嫌われる裏切られるおまけに入院かよ、って散々だし、そこが団地だったりするので飛び降りちゃったりしないか、はらはらなのだが、彼女は時折泣いたり怒ったりするものの割とつーんとしている – でもその反対側に何やらいっぱい貯めこんだり飲みこんだりしていることもわかる。 羽をものすごい勢いと回数でばたつかせて結果的に空中で静止しているように見せるハチドリのように。花の周りに寄ってくるとあら小さくてかわいい、とか言われるけどハチドリからすればうるせーよこれがどれだけ懸命で必死なのかわかってんのか、って。

この辺、誰もが思いだすであろうアメリカの“Eighth Grade” (2018)との比較でいうと、あれは空中で静止するハチドリではなく、とにかく初っ端から虚勢を張ってでも目立つべし! 注目してくれればこっちのもん、ていう極楽鳥みたいなやつで、東と西で違うもんだねえ、っていうのと、どっちにしてもそこまでしなければいけないのか、っていう彼らの負荷とか生き辛さ面倒くささに打たれる。
仮装もなりすましもパラサイトも全く無理、自分らしさ? なんてどこ探したら見つかるのか。

もういっこ、最初の方に出てくる母方のちょっと変わった伯父さんの突然の死、小さなしこりで突然入院まで行っちゃうのとか、1994年10月に実際に起こった聖水大橋の崩落事故で身近な人たちの生死を目の当たりにしそうになったり、すぐそこにある死が描かれる。それは偶然の重なりで起こったことではなくて、ハチドリが巣から出て飛び回るようになって見えてきたもので、目一杯なんとかしようとする生の世界の彼方、というよりはすぐそこに穴を開けて控えているやつだった、と。

もうひとつは家族も含めた周囲にいる人たちの像の残りかたで、親も兄弟も友達も先生も、みんな同じ濃淡と輪郭でそこにいて、ただ通り過ぎるだけではなくてずっと印象に残る。なんであなたはそんなに意地悪なの?陰険なの?ぶつかってくるの?恨みでもあるの? 或いは、なんでそんなに落ち着いていられるの? やさしくしてくれるの? っていう眼差しと共にウニの視野にずっと残る像たちの強さ、重さ。ずっと忘れないからなって。それらが彼女の家を形作る。逃げようが戻ろうが好きでも嫌いでもそこにあるやつ。

これらはどれもとても注意深い演出とものすごくうまい俳優さんたちなしではありえないと思った。特にウニの、放心したようなハチドリの無表情はすごいの。


London Film Festival 2020の概要が来た。 映画館でも少しやるみたいだけどほぼVirtualみたい。お祭りなのになー。XRなんてぜんぜん興味ないのになー。

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