7.28.2020

[film] Flannery (2020)

20日、月曜日の晩、Film ForumのVirtual Cinemaで見ました。
今ここに来ると”Shirley” (2020)と”Flannery” (2020) – ひとつはフィクションだけど- を見ることができるよ。韻ふんでるし。

ジョージア州生まれの作家Flannery O'Connor (1925-1964)の評伝ドキュメンタリー映画。フルタイトルは“Flannery: The Storied Life of the Writer from Georgia”。ナレーションとFlannery の声をMary Steenburgenが、枯れたTommy Lee Jonesが「ぜんぶ読んでる」(いかにも)とか。

当時のコスモポリタンタウンだったサバナでアイリッシュ系の両親の元に生まれて敬虔なカトリックとして育ち、サバナ – アトランタ - ミレッジヴィルと転々としつつカートゥーンばかり描いていた少女時代 - 素敵な絵が多いの – から、Iowa Writers' Workshopに参加してPaul Engleと出会い、彼はそれまでフォークナーもカフカも読んだことのなかった彼女にリーディングリストを作ってあげたりして、その後NYのサラトガ・スプリングスのアーティスト・コミュニティ(Yaddo)で後に”Wise Blood” (1952)となる元の小説を書きあげる。

作家としてのキャリアを確立してからのことは、TVのトーク番組でのインタビューフッテージ等を中心に彼女のモチーフやスタイルがどう作られていったのかを見ていく。NYで世話になったRobert FitzgeraldとSally Fitzgerald夫妻の元で、Westの108th stに暮らして、Metのクロイスターズに行った、というあたりはおもしろいねえ(ゴス観点で)。

その後はミレッジヴィルの実家に戻って作家として家族と孔雀と暮らし、Lupus – 全身性エリテマトーデスに苦しめられつつ執筆活動を続けて、デンマークから現れたErik Langkjaerとの儚い恋とか、その辺も綴られる。あと、Alice Walkerは彼女の住んでいたところのほんの近所に住んでいたって。

終盤は昨年出版された生前の書簡集 - “Good Things Out of Nazareth: The Uncollected Letters of Flannery O'Connor and Friends”でも話題になった、彼女は実際にレイシストだったのか、等について。

過去の作家の作品を現代のレイシズムの目線で測定・裁定みたいのをすることについて余り興味はなくて、だってそれで選別して過去の作品を読むわけではないし、当時書かれたものを読むとき現代の我々にはそういうギャップが必ず見えるものだからそこはnoteして、それでも耐えられないのだったら読むのをやめればいいだけだから。プライベートな書簡でNワードを使っていたからどう、というのはちょっと短絡ではないか。 まず小説を読もう、そこで聞こえてくる複数の声が、その小説が描こうとした土壌や規範の上でどう機能し、バランスし、生きているのかを聞こう。 わたしは映画のなかでHilton Alsが語るように「彼女はBrilliantなレポーターであり、レイシストではなかった」と思う。 カートゥーン描きを志していた頃からその描写の姿勢と態度は一貫していたのではないか。

彼女の作品が見せてくれるバランス - それを編みだす構造 - 緊張関係は人種のことと、もうひとつはカトリック的な聖性・厳格さと見世物小屋的なグロテスク・野蛮の間にも見ることができる。こんなふうな変てこで奇妙な共存・共棲関係のなかで描かれる世界絵巻。 これって「南部」で括っていいの ?

こういうのを見てしまうと、彼女の小説を読み返したくてたまらなくなるのだが、Flannery O'Connorの文庫本は日本に置いてきてしまったの(Shirley Jacksonのも)。イギリスにはイギリスの(同じようなの)がいくらでもあるんじゃないか、って。 しみじみばかだった…

彼女、39歳で亡くなっているのね。すごく年をとった人だと思っていた。

音楽はLucinda Williamsと、エンドロールでBruce Springsteenの”Nebraska”がしっとり流れてよい。

映画のなかでも紹介されているJohn Hustonの”Wise Blood” (1979)、見なきゃ。


お買い物に出たついでにスタンドで廃刊となるQ Magazineの最終号を買ってきた。過去のインタビューや記事の集成みたいだが、表紙をめくるとM.E.Smithがベロを出してて、巻頭はLou Reed、Joni MitchellにPrinceにNina Simoneまであってお得かも。
創刊は1986年なのね。英国音楽への興味が薄れ始めたのがこの頃からだったかも …

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