7.14.2019

[film] L’ Homme du large (1920)

7日、日曜日の午後、BFIがいつもやっている月始め日曜日昼間のサイレント上映会、で見ました。

日本でも公開されているようで、邦題は『海の人』。リストアされたデジタル版だった。
バルザックの短編 – “Un drame au bord de la mer” (1834) - 未読 - をMarcel L'Herbierが緩く脚色して監督したもの。製作はGaumont(日本でやっている特集、いいな)。

ブルターニュの海の傍でひとり隠者のように暮らすNolff(Roger Karl)がいて、彼のところには尼さんが食事を運んでくるだけで、なんでこんなことになってしまったのでしょう? と話は1年前に遡る。

Nolffは海の仕事にすべてを捧げているような真面目な漁師で、妻とかわいい娘のDjenna (Marcelle Pradot)がいて幸せなのだが、願いは彼の仕事を継いでくれるような息子を授かることで、それが叶って男の子のMichel (Jaque Catelain)が生まれて、盲目的に可愛がって手厚く育てていくのだが、大きくなるとMichelは海嫌いで身勝手な遊び人の若者になって、バーに入り浸って町のごろつきや娘たち(映画史上最初期のレズビアンキスが見られる)とつるんでばかりで、家族みんな一緒のイースターのお祭りにも参加しないで、やがて母は病に伏してしまうのだが、Michelはお構いなしで。

そうして妻/母が悲しみのなかで亡くなってしまうと、苦悩するNoliffは海と神に相談してMichelを小舟に突っこんで海に流してしまう。 - というのが冒頭、彼がひとり寂しく海に向かっていた事情なの。

海に向かって立つ石像のような彫り深のNolff、美男だけど線が細くて狡猾さばかりが見えてしまうMichel、忍の字が刻まれてしまっている母とDjennaの真っ直ぐな顔、どの顔もその引き受ける運命そのもののような顔をして並んで海に向かっている。

筋はこんなふうにシンプルなのだが、主人公や家族の苦悩に重なるように彩色や字幕の意匠などに(当時としては)いろんな技術や工夫を凝らしていて見ていて飽きなくて、この辺、フランスのアバンギャルドフィルムの最初の世代に属する人なのだそう。

これに伴奏していくStephen Horneさんはピアノに向かいながらアコーディオンを抱え(ぱふぱふの音)、たまに汽笛のようなフルートも加えて、こちらのひとり楽隊も相当アバンギャルドで飽きないものであった。

で、この潮の味を噛みしめつつ、Hyde ParkのBarbra Streisandに向かったの。

マンハッタンの停電、いいなー、とは言わないけどいろいろ思い出した。
信号のところに出てみんな勝手に交通整理しちゃうところは変わらないねえ。

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