7.02.2019

[film] Die freudlose Gasse (1925)

6月23日、日曜日の夕方、”Toy Story 4”のあと、BFIのワイマール特集で見ました。

英語題は”The Joyless Street”、邦題は『喜びなき街』。サイレントでライブピアノ伴奏つき。
G.W.PabstとGreta Garboが最初に注目された作品として有名、とのこと。

1921年、第一次戦後のハイパーインフレで荒廃しきったウィーンの貧民街に暮らすふたりの女性 – Maria (Asta Nielsen)とGreta (Greta Garbo)の運命を追っていって、ああJoyless Street、としか言いようがないの。151分、重たいけどすばらしかった。

冒頭の通りの描写が絵画のようにすごくて、薄暗いなかを人々が幽霊のようにゆらゆら動いていって、入口に吸いこまれていく。扉の向こうには貧しい家庭もあれば悪徳肉屋もいて、いろんなのが蠢いている。 Mariaは脚の悪い父と母と暮らしていていつも働け食べ物持ってこいって叱られていて、Gretaは病弱の父と妹と暮らしていてやはり食べ物がなくて困窮していて、朝早くから列を作る悪徳肉屋のとこに行ってずっと待っていても偉そうに今日の分はなし、しっしっ、て追い払われる。

Mariaは若い銀行員と付きあって彼と結婚することだけが救いで希望なのだが、こいつは遊び人で – やがて女性を殺した容疑でしょっぴかれる - なかなかうまくいかず、Gretaは生活費の足しに空き部屋を赤十字軍の若者に貸して缶詰を貰ったり少しよい仲になったりするのだが、父親が退職金ぜんぶ株につぎ込んでぜんぶ失ったりして、途方に暮れて身動きが取れないまま長屋の裏のファッションブティックで女衒をやっているおばさんの横流しで娼婦をやるしかなくなって..

とにかくJoyless Streetなのでずーっと暗く陰鬱なトーンの可哀想なエピソードばかり続いていくのだが、MariaとGretaのクローズアップとその強さはとても正しく、正義としか言いようがなくて、彼女たち(他にもいる)の顔の無念さ、諦念、怒りの交錯がだんごになって最後の肉屋襲撃になだれこんでいくところは拳を握ってしまう。 そしてここでも閉ざされた扉の向こうでものすごいことが行われているのがわかり、でも通りに向かってその何かが解き放たれたりすることは最後までなく、なので依然としてJoyless Streetはそのままなの。 そしてこの後には更に(それ故に)次の戦争まで行ってしまうという出口なしの悲惨。 貧困や格差がなにをもたらすのか、それはどうしていけないことなのか、既にここまでまっすぐに描かれているのにねえ ..

Greta Garboは既になんの揺るぎもなくつーんとGarboで、既にドイツではスターだったというAsta Nielsenの目の強さと互角にぶつかりあってかっこいいー、しか出てこない。いつも思うことだが、この時代、銀幕の外側でこの人たちはふだんどんな顔で寝て起きて生活していたのかしら、って。それくらい別世界の生き物のかんじがすごい。他方で、ワイマール映画で描かれたあれこれってまさに今の世界のそれ、としか言いようがないのばかりで。

BFIのワイマール特集は6月で終わりで、これが最後の1本になってしまった。あーあ。

7月からは”Salon Mexico: The Golden Age of Mexican Cinema”ていう30年代~50年代のメキシコ映画特集 – さっき1本見てきたらすごくおもしろかった ~  と ”Nineties: Young Cinema Rebels” - 問答無用の90年代映画特集がはじまる(↓予告がなかなか)。

https://whatson.bfi.org.uk/Online/nineties

で、8月になるとCary Grantの特集があー。

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