2.14.2016

[film] Je, tu, il, elle (1974)

13日の土曜日のアンスティチュ、12時少し前に着いたらとんでもない行列ができててたいへんびっくらした。
前日のあんなの見て聞いたらこの土日に絶対通うしかないことはわかっていたが、それにしてもさー。

Portrait d'une jeune fille de la fin des années 60 à Bruxelles (1993) 
『ブリュッセル、60年代後半の少女のポートレート』

TVシリーズの「彼らの時代のすべての少年、少女たち」の一篇として94年11月4日に放映されている。
同じシリーズでこの翌週にはOlivier Assayasの“La page blanche”が放映されてて、他にはClaire Denisの“US Go Home” とか、ぜんぶみたい。

前の日の「街をぶっ飛ばせ」(1968) - 「おなかすいた、寒い」(1984) の流れに見事に連なる、でも作られたのは93年で、でもまったく、あきれるくらいに一貫していて、ブレがない。
女の子のなにもかも爆破してやる願望、家出、空腹、女の子友達、どーでもいいただの通過儀礼、彷徨い、などなどが彼女にとって常に現在形のテーマだったことがわかる。 

68年のブリュッセル、15歳の少女ミシェルはずんぐりむっくりのしかめ面で、太い横縞のボーダーにパンツ履いてて、父親の財布から札束を抜いて、学校にうその届け(おじが、おばが、父が亡くなりまして)を出して、通知表を破り捨てて街をうろうろして、映画館に入ったところで隣で膝をこすりつけてきた脱走兵ポールと出会ってキスをする。

ふたりでどうでもいいことおしゃべりしながら街を散策して本屋でキルケゴールがどうの、とかサルトルのことで意見が合わないやつなんてありえねえ(かっこいいー)とか、いろんなこと喋って不在だったいとこのうちに忍びこんでLeonard Cohenの"Suzanne"にあわせてぎこちなくダンスして、ついでだしいいか、くらいのノリでバージンもぽいして、晩は友だちとパーティいくからじゃあね、と別れる。

仲良しの女の子ダニエルと出かけたパーティ(ところであの選曲はなに)ではあいつがいいんじゃない、とかあれこれ彼女にふっかけてみるのだが、互いにあんま盛りあがらなくて明け方まで長い散歩をして、ポールにしなよ、そうすればあんたが傷つくの見なくてすむからさ、てぽそっと告白しておわるの。

ミシェルはほぼシャンタル自身なのだろうけど、彼女はこれを作ったときは43くらい、ていうのを考えるとすごいよねえ。 ここまで突き放してかつての自分を振り返ること、できるんだなー。
パンクだよねえ。


Je, tu, il, elle (1974)
『私、あなた、彼、彼女』

場面はそれぞれの人称に従ってだいたい4つ。
シャンタル自身が「私」を演じている。
最初の「私」は、新しい部屋に入居したと思われる彼女が家具を移動したり壁を青く塗って緑に塗り直して壁にベッドを立てかけてマットレス直敷きにして手紙を書いて手紙を書きなおして、全裸になってごろごろして、食べものはというとぼろい紙袋にスプーンを突っ込んでしきりになにかを掬って舐めていて、なんだろとおもっていたらそれは砂糖で、なかなか衝撃なのだがとにかく砂糖をじゃりじゃり舐めながら28日間(て言ってた)ごろごろして、待っている - すべての過去が通り過ぎるのを、新しいなにかが現れるのを。

「あなた」は窓の向こうにちらっと現れたみ知らぬ誰かのこと。たぶん。

そこから彼女はヒッチハイクの旅に出てトラックに拾われて、運転手の男と食事して酒のんで性の処理してあげて身の上話きいてあげて、ひたすらにこにこと受け身で相手をしてあげる - それが「彼」。

「彼女」はガールフレンドのおうちを訪ねて、でも「長居しないで」て言われたのでむくれてコートを羽織るのだがやっぱりハグして、彼女にサンドイッチ作ってもらって - パンにバター塗ってヌーテラ塗って、もう一枚はバターとクリームチーズ(たぶん)塗って、とってもおいしそうなのだがそれはともかく - ふたりはベッドで全裸て抱きあうの。ふたりの肌の擦れあい、シーツの衣摺れの音、喘ぎ声は殆どなくてハミングみたいな声が微かに聞こえるくらい、白いふたつの身体がひたすらダンスのようにアブストラクトに絡み合う姿をえんえん描く。愛の交歓というよりはひたすらひりひりと互いのでっぱりとひっこみ、溝や断層を確認するみたいな行為。

で、朝になるとシャンタルは出ていく。
はじめの場所に戻るのか、最初に彼女の待っていたなにかは見つかったのか。

上のほうに余白の多いモノクロの構図が実に決まっていて、かっこよかった。

ところで、「彼女」を演じたClaire Wauthionさんて、「8月15日」の冒頭で"Pour Claire"て言われている彼女、なのかしら?

このあとの『ジャンヌ・ディエルマン』は見ていたのでパスして日本橋で”Carol”をみた。
テレーズが壁を緑に塗っていたり、別の映画とは思えなかったわ。

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