2.19.2016

[film] Der var engang (1922)

7日の日曜日(お誕生日だった)の夕方、アケルマンの後で渋谷に移動して見ました。
トーキョーノーザンライツフェス。 結構人でぱんぱんにふくれていて、北欧映画好きな人のベースがだんだんにできつつあるのかしら。 
少なくとも自分は年一回、北欧のむかしむかしのサイレントを見て柳下さんの演奏を聴いて少しぴりりと震えて暖まる、ていうのが結構強い慣例になりつつあって、それはとっても素敵なことだとおもう。

『むかし、むかし』。 英語題は”Once upon a time”。

で、今年のはCarl Theodor Dreyerのお伽噺だというのだから見ないわけにはいかない。
1958年に発見されて2002年に修復されたという国宝だというし。

中世だかの昔、イリヤ王国ていうとこのお城に気にくわない求婚者を地獄に送り続ける性悪なお姫さまがいて、デンマークの王子が精霊の助けを借りて乞食みたいな焼き物木こりだかに化けて、追放されたお姫さまと焼き物小屋で質素だけど清く正しい生活をしてなんとなく改心するのだが、最後の仕上げでお城に無理やり連れていかれていやいやわんわん泣き叫ぶところに王子が現れて、きょとんとするの。(お姫さまも、われわれも。)

王子のくせにろくろまわしとか貧乏暮らしが似合いすぎる、とか、そう簡単に性格変わるもんか、とか、王子の顔、気づけよ、とか、いろいろつっこみどころたっぷりなのだが、貧乏暮らしがほんものに見えてしまうのも、宮殿暮らしが悪夢に見えてしまうのもぜんぶお伽噺の魔法なんだわ、と思うことにする。 だまされてなんぼ、の世界なの。

あと、薄暗くてでっかい樹に縛り首になったひとがぶらーん、ていうあたりはしらじら怖くて、ドライヤーだわ、とか思った。

一応原作の戯曲はあって、他にもアンデルセンの「ブタ飼いの王子」(しりませんでした)とかにも似ているそうなのだが、ブタ飼いでも焼き物屋でも見てくれで人を判断してはいけませんよ、ていう教訓もあって、そういうのを見たあとのトークで、衣装の違い - お姫さまのロココとデンマークの王子の中世風の違いとかを丁寧に教わるとそういうことなのかー、てぽんと膝を打つ。

失われているので文字で説明するところ、スチール写真のみの紙芝居になってしまうところなどがあるのだがぜんぜん脳内補完できるの。 でも結婚式のとこは動いているとこみたかったなあ。変なダンスだったに違いないしー。 そのうちどこかで発見されることを祈る。

あんま関係ないけど、Brooklyn Academy of Musicで始まった魔女映画特集 - “Witches’ Brew” - もちろん”The Craft” (1996)なんかもやってくれる。
18日の晩は2012年のノーザンライツでもやったBenjamin Christensenの『魔女』- “Häxan” (1921)で、オリジナルのサイレント版に加えて、68年に製作されたWilliam S. Burroughs がナレーションを、Jean-Luc Ponty が音楽を被せたバージョンも上映されるの。 見たいなあー。

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