11.07.2013

[film] Sign 'O' the Times (1987) - 爆音

3日のごご、「天国の門」でへろへろになった後、しばらく新宿を彷徨い、6時過ぎに吉祥寺に着いた。 Princeを爆音で。夢のような。

この作品は、公開当時に(確か)新宿で見たし、LDも買って何回も見た。 けど、映像に向き合うのはたぶん20年以上ぶり。

"Parade"(1986) のあと、The Revolutionを解散してソロになり、当時まちがいなく絶頂期にあったPrinceのライブフィルム。
半端な寸劇みたいのが入るし、ステージ上のパフォーマンスも8割はLive音源にあわせたRe-shootだというし、"U Got the Look"はPVの転用だし、穴だらけだけど、いいの。
すでに山ほどあったヒット曲は"Little Red Corvette"のほんのさわりしか入れず、ほかにCharlie Parkerのカバーが入るだけ、あとはぜんぶ"Sign o' the Times"の曲のみ、つまり映画ぜんぶが同アルバムの プロモの仕様なのだが、ノンストップでダイナミックでアバンギャルドなFunk道に思いっきり踏みこもうとしていた、その道が正しいことを信じて疑わなかった(彼も。 われわれも)Princeの87年がまるごとぶちこまれている。

これのあと、未リリースにおわったごりごりの"The Black Album"を経由して、開き直ったかのような極彩色ポップに転がった"Lovesexy" (1988)まで、この時期のPrinceの音というのは、すべてが総倒れ的に腐れていく80年代末期のシーンにおいて最後の最後の希望だったの。 よいこはみんな知っているはなしだけど。

ほとんどがFairlight CMIとLinn Drumによる宅録仕様なのに、古びていないよねえ。 "Sign o' the Times"の冒頭のエレクトロがどれだけ衝撃的に空気を震わせたか、を改めて思いだした。  当時のLP2枚組であるが、所謂トータルアルバムではなく、個々の曲はばらけていて、でも密閉感といかがわしさ、親密さと性急さが同居している、という点、鼓膜にぶつかってくる音の肌理、触感というところでは統一されている。  要はとっても濃いPrinceがのたくっている、と。

この映画の音もみっしり、霧のように豆腐のように均質な音の壁を作っていて、爆音上映の快楽のまんなかに求められる暴発感とはちょっと違うのだが、こんなライブの音もそんなにはない。

ここから暫く経ったNPGの頃のライブは、もうほとんど王族で、最近の(いちばん最後にみたのは2010年)ライブはギミックも変なギターもなし、圧倒的なオーラの乱反射のみで持っていってしまうかんじなので、やはりこの時期の、王子が王子のままにがむしゃらに暴れ、欲望をたれながしまくる姿は貴重だと思う。

バンドはメンバーそれぞれに怪しくてバカみたい(褒めてる)で素敵なのだが、なんといってもSheila Eのかっこよさにしびれる。
John Bonhamがその熊みたいな風体から熊みたいなキックを蹴りだすのと同じく、Sheila Eはそのしなやかな姿態そのままにびゅんびゅんしなるリズムを叩きだして、そういう彼女の動きと音がきれいに同期するさまが美しくて、それだけで快感なの。

Shiela EとCatのコンビネーションもいいよねえ。 このふたり見ているとMiley Cyrusなんてただの遅れてきたガキ、だよね。

このツアーメンバーと同じ陣容で行われた"Lovesexy"ツアーも素晴らしかったのだった。東京ドームの初日に行って、あまりによかったので翌日も行った。 ドームであんなきれいな音を聴いたのははじめてだった。(昔語り)

あと、観客はだれも写真撮っていないから客席は当然のように暗くて、キャンドルくらい。 最近のライブ風景は携帯の画面でちかちか明るいんだろうな。


もうじきのLou Reedの爆音、"A Night with Lou Reed" (1983)が見たかったなー。この時期の音がいちばん好きなんだけどなー。

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