6.01.2012

[film] Le Jour Se Lève (1939)

すこんと時間の空いた月曜の晩にみました。
ロンドンに来たらBFI(British Film Institute)に行かないわけにはいかない。

ここでは5月末まで、"Jean Gabin: Working-Class Hero to Godfather"ていう特集をやっていて、Jean Gabinて、Renoirの映画くらいでしか見たことないので見てみよう、と。

特集のなかでは、Marcel Carnéの"Le Quai des Brumes" (1938) - 「霧の波止場」のリストア版をほぼ毎日上映しているのだが、これがずっと売り切れててびっくり。 この作品も、月曜日の晩、8:50からの上映なのに、BFIの4つあるシアターのうち、一番でっかいとこ(神保町シアターの倍くらいあるかも)がほぼ埋まっている。 客は年寄りが圧倒的に多いが、それにしたって、すごい土壌だよね。

英語題は"Daybreak"、邦題は『日は昇る』。
Marcel Carnéのことは殆ど知らない。 Jacques Prévertのことは、おおむかし、シャンソンを聴いていた時期があったので、作詞家としては多少、程度。

街中に建っている背の高いアパートの一室、扉の向こう側で小競り合いの声が聞こえ、ひとが銃で撃たれる音がして、腹を抱えて出てきた初老の男が階段をごろんごろん落ちながら死んでしまう。 で、部屋のなかにいたFrançois(Jean Gabin)の回想と、彼を包囲した警官隊とのやりとり、いろんな表情がが交錯していって、やがて朝を迎えるまで。

Françoisは町工場で働く気のいい若者で、誰からも好かれてて、ある日花売りの娘と出会う。 彼はほんとに一途に彼女を好きになって、彼女もそれを受け入れるのだが、彼女は犬のサーカスをやっている怪しげなおじさんのほうも好きで、Françoisにはそれが気にいらない。 おじさんのほうもそれがわかってねちねち絡んできて、やがて。

最初のアパートのシーンで、映し出されたFrançoisの目を見ただけで結末はわかるの。

嫉妬に狂って自滅していく男のお話し、それだけではあるのだが、まだ若いJean Gabinがとにかくすばらしいの。 こんなにすごい俳優さんだったのだねえ。
ふつうの堅気の男のはずなのに裏ではこんなだった、突然キレて狂ってしまった、とかそんな単純な話ではなくて、彼は自分が本当に好きで必要としているものがなんなのかも、自分が恋に狂って尋常ではなくなっていることも、それ故にあんなこををやってしまったことも、すべてがどうしようもないことも、わかっている。 でもそれは、君には絶対にわからない、なぜなら君は彼女に恋をしていないからだ、とその暗い目は語るの。

そんな彼を包む絶対的な孤独が、ぽつんとした塔のようなアパートとか、アパートのなかのぐるぐる階段とか、彼女の部屋にあった熊のぬいぐるみとか、ひっそりとやってくる朝とか、そういう物言わぬあれこれの間で一瞬際立ち、朝の明るさと共に静かに消えていく。

かなしいけど、かなしくはならない。 すばらしい作品でした。

Jean Gabinの作品、もっと見たかったけど、「霧の波止場」は最後の最後まで売り切れだったの。

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