6.23.2012

[film] Little Fugitive (1953)

とにかくお天気をなんとかして、の日々。 ぜんぜん時間ないしー。
16日の土曜日、アテネでのMorris EngelとRuth Orkin特集で、3本続けて見る。
ずっと見たかったやつだし、どうせ見るやつだったし、丁度いいかー、と。

Little Fugitive (1953) 「小さな逃亡者」。
New Yorkでは、とうの昔からNew York映画の古典なのだが、そういう角度でなくてもとてもチャーミングで、おもしろい作品でした。
兄と弟がいて、兄とその友達仲間から弟は煙たがられていて、兄の友達がぐるになっての悪戯で、兄を殺してしまったと思いこんだ弟は、お留守番貯金を抱えて地下鉄に乗り、ほんとはみんなで行くはずだったコニーアイランドにとんずらする。 
でもそこに切迫した思いとか危うさはぜんぜんなくて、このガキは遊園地のいろんな乗り物乗ったり、すいか食べたり、ぷらぷら遊んで楽しんでいるだけなの。 お金がなくなると海岸で瓶を拾って換金して気に入ったポニー乗りにつぎ込んだりしている。 
夜になるとさすがにちょっとだけ寂しいかんじになるのだが、へっちゃらなの。
泣いて騒いだったどうせ誰も助けには来ないし、来られたら捕まってしまう、ということをガキはガキなりにちゃんと押さえている。

子供を愛らしいようにも可哀相にも描かない、その気持ちをわかってあげようともせず、カメラは徹底して保護者の目線の外で、野良猫みたいにひとりでうろつくガキをクールに捉えている。

しかし、コニーアイランド、60年前から既にあんなだったのかー。
あのいかがわしくて怪しくて、ごちゃごちゃしたあのかんじ、世界で一番好きな遊園地なの。
もうポニー乗り場とかはないのだが、観覧車 - Wonder Wheelはちゃんと映っている。
この観覧車、初めて乗ると、びっくりするくらいおっかないんだよ。

子供達のおうちの住所、映画のなかではWoodson Aveとか言っていたけど、どこなのかなあ?
とか、そんなのばかり気になってて、最初期のインディペンデント映画というような巷の評判はぜんぜんどうでもよくなってしまうのだった。 それくらい時差を感じさせない瑞々しさがある、ということで。

Lovers and Lollipops (1956) 「恋人たちとキャンディ」。

これも素敵なNYのおはなしだねえ。 しかも恋のおはなし。
7歳の女の子と暮らす未亡人が、昔の友達で今は南米にいて、NYに赴任したがっている彼と仲良くなっていくの。 でも女の子のほうは彼がやってくるとお母さんを取られちゃうからおもしろくないの。

子供の描き方は、前作とおなじくぶっきらぼうで、犬猫みたいな扱いで、でも、だからこそ素晴らしい表情が切り取られている。 ふくれっつらの見事さなんて、"Curly Sue" (1991)以来だった気がする。

あとは動物園だよね。あそこ、セントラルパークの? それともブロンクス?
ペンギンが同じだから、たぶんセントラルパークだと思うが、昔はいろんなのがいたのね。
とにかく、冒頭にトラがやあ!って3回手を挙げるとことか、カバがにーって笑うとことか、あれだけで許してしまうわ。 

Weddings and Babies (1958) 「結婚式と赤ちゃん」。

この作品だけMorris Engelの単独監督作品。最初のがガキので、次のが若いカップルので、今度のはやや年取ったカップルのあれこれ。

結婚式と赤ん坊専用の写真スタジオをやっているふたり、彼女はもう30で若くないし子供もほしいから結婚したいと思ってて、彼はもう30後半で、いいかげん結婚式と赤ん坊担当から脱して写真家として一人前になりたいと思ってて、でもお互いもうそんなに時間がないし、愛し合ってることは明らかなんだから結婚しようか、てことにするの。

彼女はスゥエーデンからの移民で、彼はイタリアからの移民で、彼には年老いた母がいて、施設に預けても彼女はぶつくさ言ってすぐ抜け出して徘徊してしまう。
ご近所付き合い(ここにもかわいくないガキが)とかWest VillageのStreet Fair(まだやってるよね)とか、New Yorkのごくそこらにいそうなカップルの暮らしがとてもとても丁寧に描かれている。

おばあちゃんと墓地のシーン、いいなあー。
あとあの教会、だれだったかの式で行った記憶が…

3作に共通していることだが、EngelもOrkinも写真家らしい丁寧な画面作りで、ドアノーとかケルテスが映画撮ったらこんなふうー、みたいなかんじ。
(EngelはPaul Strandの"Native Land" (1942)に関わっていたらし)

あとねえ、50年代のNew Yorkって今のNew Yorkに割とすんなり繋がっていることがわかる。
それに比べたら東京ってさあ…  

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