2.21.2024

[film] Your Fat Friend (2023)

2月15日、木曜日の晩、Curzon BloomsburyのDocHouseで見ました。

公開規模は大きくないけど、少し前の公開直前の頃にはBFI Southbankでは監督のJeanie Finlayと主演(?)Aubrey Gordonを招いたQ&Aイベントもあったりした(Sold-Outで入れず)。

ポートランドに暮らすAubrey Gordonさんについてのドキュメンタリー。
彼女は2016年に”A request from your fat friend: what I need when we talk about bodies.”というオープンレターで始まる匿名のブログを始める。冒頭部分はここで(https://medium.com/@thefatshadow/a-request-from-your-fat-friend-what-i-need-when-we-talk-about-bodies-2442b5a8b06d
 
これはよくあるダイエットの宣言や記録ではなく、社会に向けた告発や要請でもなく、USサイズで26だという彼女はシンプルに“Fat”であることが、身の回りの社会 - 家族やコミュニティにおいてどういうことをもたらしているのかを具体的に示しつつ、なんでこういうことになっているのか、起こりうるのか、ごく普通になんかおかしいんじゃないの? を冷静に語っていく。(即座におかしいのはお前だ! って返ってくるのだろうが、そういうのも含めて)
 
これまで自分が生きてきた社会のなかで、”Fat” – でぶであることは余りよくないこととされてきた。自己管理ができていない、子供の場合だと親の管理がされていない、だらしなく食べてごろごろしているとそんなふうになってしまって、その体型を維持するための食費だってバカにならないし、公共交通機関を使う時だって特別の配慮やケアが必要になるし、あんなふうになってはいけませんよ、だし、そうなってしまった人に対してはお笑いのネタにしたりバカにしたり虐めたり、メディアも含めて社会全体がそういう傾向 – でぶになってはあかん、ひととして – をずっと後押ししてきたように思う。

でも、望まなくても、がんばってもそうなってしまう人はいる、生きているし、そういう人は普段どんなことを考えて自分のボディと向き合って暮らしているのか、をおもしろおかしく綴ったのが彼女のブログで、その文章は驚きと共感をもって受けいれられてフォロアーも増えて、本を出版するとNY Timesのベストセラーになった。映画の最初の方は彼女が自分で撮っていたv-logのようなかんじで、受けいれられたことへの素直な驚きと歓びがあり、同時にやってくる誹謗中傷の嵐 – 実名・住所にソーシャルセキュリティーナンバーまで晒される - に絶望して泣いてしまったり。
 
当たり前のように家族の事情はあって、彼女の場合もすでに別れている父母それぞれとの今の関係と過去に触れられて、しんみりするところはある。しんみりどころじゃない人もいっぱいいるだろうこともわかる。
 
ドキュメンタリーとしては本当にストレートに人としてのAubrey Gordonを追っていて、それができるのはブログやPodcast等で既にいろんなことが語られていることの余裕からかもだけど、日々の生活の描写 – Portlandなので少し”Showing Up” (2022) のかんじ - なども素敵で、これが東海岸だったら別のムードのものになったのではないか。
 
これまで見えなくされていたものを露わにするとか、「問題」を引っぱり出してどうにかする/したいではなく、おいおい見えてるだろどう見たって、ほら! というところから始まり、問題云々以前に、いまあなたの隣にもいるんだよー、Your Fat Friendだよ! っていうまっすぐな呼びかけの清々しさがある。そうだよね、やあ、ハロー、しかない。

フィクションだけど、こないだの”The Whale” (2022)にもあったような、どうしても距離を置いたり、測ってしまおうとしてしまいがちな我々のアタマを軽くノックしてくれる風通しのよさ、というか。

そして改めて、日本の「見た目」コンプレックスに対する病的としか言いようのない社会的圧の異様さを思う。痩身、美白、皺、頭髪、老化、あなたのこれらをどうにかしないと、という煽りとそれを容認して垂れ流す広告や嘲笑のネタにする産業の層の厚さ、そういう洗脳(これだけじゃないよ、道徳みたいなとこまで)がどれだけの人たちを傷つけたり蝕んだりしているか、どうやったらこの異常さを、って日本に帰国した途端に流れこんでくる大量の広告をみる/片っ端から消す - たびに思うわ。 その果てに日本にはアメリカみたいに病的に太ったひとがいない、日本ってすごいな、になるの。しみじみばかみたいで嫌だ。

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