2.26.2024

[film] Getting It Back: The Story of Cymande (2022)

2月23日、金曜日の晩、BFI Southbankで見ました。
金曜の晩の2本目だったのだが、まあ金曜の晩であるし、とにかく内容がおもしろくてためになる音楽ドキュメンタリーだった。最近のだと”Rudeboy: The Story of Trojan Records” (2018) あたりに近いかも。 Tracey Thornさんも褒めていた。

Cymande – カリプソ語で「鳩」だそう – という英国のジャズ(かな? くらい)・ファンクバンドが70年代にあって、このバンドの辿ったちょっと変わった道のりと今世紀に入ってからの奇跡の復活劇を追う。このバンドを知っている人も知らない人も、英国のブラックミュージック(史)に興味がある人なら必見。

自分が知ったのは90年代、たしかJohn SchroederのアンソロジーのCDで、でもバンド名までは憶えていなくて、映画で流れている音を聴いて、あー、って。

冒頭に出てくるのがMy Morning JacketのJim Jamesさんで、Fugeesが登場して彼らを初めて聴いた時の衝撃 - ここはわかる - とそこでサンプリングされていたCymandeの”Dove”がもたらした奇妙な感覚について語る。

そこから現在のバンドメンバーが振り返る過去 - カリブ海諸国から寒い英国に移民として渡ってきて、差別と貧困と寒さに耐えながら近所の若者たちでバンドを結成して1971年、John Schroederなどの下でレコーディングして、でも火がついたのは何故かアメリカで、向こうのシングルチャートに入ってAl Greenのツアーの前座をやったりアポロでのヘッドライン公演まで実現したのだが、英国に戻った途端に無風状態となってそのまま解散してしまう。

でもアメリカでは、サンプリングが巻き起こしたヒップホップの革命期にDe La Soulが、Jurassic 5とかOzomatliとか(なつかしー)のライブバンドがCymandeの音を使うようになり、サンプリングの音源お宝探しにおける「秘宝」のようなものとして「発見」されていくことになる。後半はそうやって中古レコード屋の雑多な餌箱からCymandeを掘りあてた衝撃と興奮についてMC SolaarとかCut ChemistとかJazzie BとかLouie Vegaとか、最近めのだとMark RonsonとかKhruangbinとかが得意げに語っていく – Cyamandeの音というより、そういうのを掘りだしたオレえらい、が半分くらいか。

そういう地味な盛りあがりを受けて、2006年にオリジナルメンバーでの一回限りのライブがあり、10年代には更なる活動開始があって。

当初から強いメッセージやバンドカラーを打ち出していた、というよりは幼馴染の身内同士で好きな音楽をずっと探求していったらその音が当たって、DJやミュージシャンたちからリスペクトされて支持されて、再結成ライブではみんなが踊ってくれて、長い目でみれば幸せなバンドなのかも。そしてもちろん、そうあってくれてよいし、彼らはこの映画のも含めて失われた時間を取り戻せてよかった、って。

彼らのあのベースリフ – 聴けばわかる – をDJが何度も何度も右左にリピートして、客も止まらなくなって幸せに狂って中毒になっていくかんじがたまんなくよくわかり、ライブでこれをやられたら絶対抜けられなくなるなー、クラブは随分行ってないけどライブ行きたいなー、ってなる。

Steve McQueenの“Lovers Rock” (2020)にはそうなっていく瞬間の夜の魔法が細やかに鮮やかに描かれていたが、70年代後半のロンドンで、どうしてレゲエは苛烈な闘争を経て生き残る - という言い方は正しいのか? - ことができて、こっちのは萎んでしまったのか – それが90年代初に突然息を吹き返したりしたのか等 – なんとなくの感覚でわかるところとわかんない穴がいろいろあったりして、包括的に書かれたなにかがあったら読みたい。(00年代以降はまったくわかんないまま..)

日本だと、Peter Barakanさんがぜったいに拾ってくれるはず (もう紹介されてる?)。

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