2.17.2024

[film] A League of Her Own: The Cinema of Dorothy Arzner

2月はBFI Southbankで女性監督Dorothy Arznerの特集 – “A League of Her Own: The Cinema of Dorothy Arzner” – なんてかっこいいタイトル! - をやっている。彼女の作品の有名なのはBFIでも単発でよくかかっていたし、日本でもシネマヴェーラの2022年の特集 - 『アメリカ映画史上の女性先駆者たち』で何本か見ているのだが、改めて - 全部は無理だけど - 見てみよう、と。で、再見しても震えるくらいおもしろいのでいちいちひっくり返っている。

今回上映されるほとんどのフィルム(デジタルじゃないの、フィルム上映なの)はUCLAのFilm & Television Archiveで修復されたり焼かれたりしたもので、そのスポンサーにはJodie Fosterの名前が入っていたりする。

単に彼女の監督作品を並べて、ハリウッドの女性監督の先駆としてその視点やテーマを掘り下げるだけでなく、スタジオシステムの中に入ってタイピストやってシナリオ書きやってカッターやってエディターやって、そうして積みあげたキャリアの仕上げとして女性監督になって、それぞれのなかで女性はどうやって仕事をするのか、どんな仕事がありうるのかまで押さえて広げてみせて、その広がりのなかに - 仕事だけじゃなく、恋愛もパーティも結婚も家庭も – あってしかるべき女性のいろんな動きとか表情とかのありようを、こんなのだってあるよ!あっていいんだ! って押し広げて見せてくれた。彼女がそうやって広げた可能性の裾野が“A League of Her Own”なのだと思って、だからかっこいいったらないの。


The Wild Party (1929)

2月3日、土曜日の昼に見ました。サイレント時代の世界最初の”IT” GirlであるClara Bowの最初のトーキーで、最初にBoomマイクが使われた映画だそうで、みんなが彼女の声を聞きたいと思ったのか(思うよね)映画はヒットしたという。

ストーリーはどうってことなくて、パーティが大好きな女子グループが好き放題やって顰蹙を買ったりしながら若い教授のFredric Marchとどうにかなる、っていうrom-comで、この頃から(このもっとずっと前から)あったに違いない”Girls just want to have fun”の弾けた世界そのままで、でもこれすら鼻をつまむ人はやっぱりいたんだろうなー、とか。


Paramount on Parade (1930)

2月3日、土曜日の晩に見ました。
監督はDorothy Arzner単独ではなく、彼女の他に10人くらい、Edmund Goulding, Ernst Lubitsch, Edwin H. Knopf, Frank Tuttle, Victor Schertzingerなどが監督していて、パラマウントの宣伝目的で作られたレビュー形式の、短編というより断片のオムニバス。誰がどこを監督しているのか、どの映画の切り抜きなのかあんまわからず、部分テクニカラーだったり音声だけ消失していたり逆に音だけだったり、ああここ見たいのにー、みたいのが多くて困った。Gary Cooperが歌ってるってのに音声がない、って悔しすぎる。Dorothy Arzner のパートはClara Bowが出ているやつよねたぶん、くらい。


Get Your Man (1927)


2月4日、日曜日の午後に見ました。邦題は『恋人強奪 』。
53分の中編で、上映前にBryony Dixon, Caroline Cassin, Pamela Hutchinsonによるパネルディスカッション付き - 見事におちてた。

Dorothy Arznerが監督デビューした年に撮った、彼女がClara Bowを真ん中に据えた最初の一本。
アメリカ娘のClara Bowがパリでお金持ちのぼんで結婚相手も決まっているCharles Rogersをかっさらう、それだけのお話なのだが、すべてがシンプルに王道の逆を突っ切ろうとしているようなところがかっこいい。反逆の狼煙はここからこんなふうに。


Sarah and Son (1930)

2月4日、日曜日の晩に見ました。
脚本はこの後も”Anybody's Woman” (1930) – これすごくよかった - などで Dorothy との協力関係が続いていくZoë Akins。

オーストリアからの移民のSarah (Ruth Chatterton)はアメリカでヴォードヴィル芸人を目指している時に知り合ったJimと結婚して男の子が生まれるのだが、やくざなJimは彼女と喧嘩した腹いせに赤ん坊を連れて家を出てそのままいなくなっちゃって、数年後、第一次大戦の傷病兵のいる病院で歌っていた時に瀕死のJimと再会して、彼は赤ん坊を裕福なおうちに渡してあとは知らないというので、その家を訪ねていくのだが会わせてくれなくて、数年後、成功したオペラ歌手としてアメリカにやってきたSarahは…

日本にもありそうな人情にまみれた母子もの、のようでそんなに情に訴えるかんじはなくて、移民としていろんな階層の身勝手な男性たちに翻弄され理不尽に差別されたりしながらも歌と息子を思う心を捨てなかった女性映画として見事で、Ruth Chattertonはオスカーの主演女優賞にノミネートされている。

いったんここで切る。

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