10.17.2023

[film] Theater Camp (2023)

10月7日、土曜日の昼、渋谷のシネクイントで見ました。『シアター・キャンプ』

本作で主演もしているMolly GordonとNick Liebermanの共同監督によるモキュメンタリー/コメディ。今年のサンダンスで絶賛されて、U.S. Dramatic Special Jury Award Ensembleを受賞しているバックステージもの。

NY州の北の方でシアター演劇の上演をテーマとしたサマーキャンプ - だから「シアター・キャンプ」 - が行われていて、それを立ちあげて毎年主宰していたJoan Rubinsky (Amy Sedaris) がキャンプの卒業生のイベントで発光したストロボライトにやられて昏睡状態に陥ってしまう。

彼女の息子で演劇より起業とかそっちに興味があるぼんくらのTroy (Jimmy Tatro)がキャンプにやってくるのだが、Joanの後を継ぐつもりはないしこんなのとっとと畳んだほうがよいくらいに思っていると、母の溜め込んでいた負債の山を発見して、これはもう無理、ってなっているとキャンプ場の土地に興味があるらしい金融コンサル企業がコンタクトしてきてTroyのあほんだらは…

というきな臭い話を背景に、病室にいるJoanのためにもがんばろうよ! ってキャンプの最後に披露するオリジナル・ミュージカルを”Joan, Still” - Joanの一代記に決めて気勢をあげる個性的なスタッフ - ここのキャンプの卒業生で演技指導担当のAmos (Ben Platt)と作曲・歌唱担当のRebecca-Diane (Molly Gordon)のふたり – 元恋人同士だったがAmosがゲイであることがわかって別れた - を中心に集まってきた芸達者のそうでないの、いろんな大人たち子供たちが紹介される。

スタッフの方には配線から小道具までなんでもこなす万能テック屋のGlenn (Noah Galvin)とか、履歴書は嘘まみれなのになぜか生徒を教えはじめている人とか、普段は完全に大人相手のやばい芸人みたいな連中とかいろいろ背負っているようだし、子供たちは子供たちで当然のようにスターを目指している子からぜんぜん演劇好きじゃなさそうな子から、父子の間になにかありそうな子から、既にステージ袖にいてマネージャー面している子から、やはりいろんなのがいっぱい、どたばたのカオスでアナーキーすぎて熱病のようになって目が離せなくて - 台詞はすべて即興で70時間分を撮ったそう - 初めはまったくの他人事で距離を置いていたTroyですらつい手を出して怒られていたり。

キャストを決めて台本と曲を書き始めてから発表まで3週間で、リハーサルと並行して台本や曲を書いていくような自転車操業で、Rebecca-Dianeは曲を書くスピードがいつもより遅くて、最後のリハの時がきてもフィナーレの曲を書けないまま放置して消えてしまうし、主役のJoanを演じるはずだった子は本番直前に別のオファーを受けて嬉しそうに消えちゃうし、地元のお金持ちを集めた資金調達のパーティは大失敗するわ、Troyは金融コンサルの女性と寝た勢いで土地の売買契約にサインしてしまうわ。

これではもう上演不可だな、ぜんぶ終わりー、って天を仰いだところでまさかの修理屋Glennが驚きの変貌を遂げて(これも修理か)奇跡の大団円へ、という、バックステージの底抜け大混沌、こんなキャンプのごたごたこそがとんでもなく演劇的に迫ってくるのでした、と。チラシのヴィジュアルだけ見ても何の話だかちっともわかんないごちゃごちゃで、サマーキャンプにもシアター演劇にも触れたことがない、そんなのどうでもよい人にはなにが楽しいんだか、になるのかも知れないが、大人も子供も自分の好き勝手にやりたい放題 - あまりこの映画用に演技をしているふうには見えない - みんな目を剥いて走り回ってどこにどう落ちるのか予測がつかなくて、こんなのをよく92分に纏めたなー、って。

夏の毎日、みんなで演劇をつくっていくこととかキャンプで過ごすことの楽しさ、ってあるんだろうなー(実際にはひどい虐めもおそらく)、もし子供の頃にこんなキャンプに参加できていたら、もっとよいこになって人生も変わっていたかもなー、って少し思った。そういう勢いのこもった楽しい一本でした。

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