10.13.2023

[film] En Corps (2022)

ロンドンの日々を書くのが終わったので少し前に戻る。

9月23日、土曜日の昼、ヒューマントラストシネマ有楽町で見ました。
邦題『ダンサー イン Paris』(まぁた「パリ」タイトル。舞台はほとんどブルターニュの話なのに。病気か)、英語題は”Rise”。元の題には、たぶん「身体」っていうのと「ダンスをする集団」のふたつの意味がある。監督はCédric Klapisch。

パリのオペラ座バレエのダンサーÉlise (Marion Barbeau)は、同じバレエ団の男性ダンサーと恋仲だったが、本舞台の直前に彼が別の女性ダンサーといちゃいちゃしているのを目撃して動揺し、本番でのジャンプに失敗して足を痛めてしまう。捻挫ではあったが今後踊り続けられるかは微妙、と言われて、失恋も痛かったが、子供のころからずっと続けてきたバレエをこんな形でやめなければならなくなるのもつらいし。ケアをしてくれる整体師と話しながらこれからどうする? を考えて、思いきってパリを離れ、ブルターニュのアーティスト・レジデンスで住み込みキッチンをやる友人夫婦のバンに乗せて貰って、彼らの手伝いで食事を作ったりサーブしたりを始める。

そこにコンテンポラリーダンスのグループがやってきて合宿のリハーサルを始めて、そこにはパリで路上のパフォーマンスをみてやるじゃん、と思っていた男性ダンサーとかもいて、彼らのダンスを横目で眺めつつ日夜を過ごしていると彼女のなかでなにかが湧きあがってきて、少しづつ彼らと一緒に体を動かし始めてー。

みんなよい人で仲良くやさしくしてくれてよい出会いとなってよかったね、って意地悪く見てしまう人もいるだろうが、そこよりは、コンテンポラリーダンスへの目線が少し気になったかも。

身体をどこまでも酷使して極限の美を求めていくクラシックに対して、身体のオーガニックな動きや「気」みたいの(よう知らんが)に着目して活力や癒しを与えてくれるコンテンポラリー、って大昔からある西洋 vs. 東洋と同じような対比でなんかつまんないし、たまたまやってきたグループがそういう動きのをやっていただけよね。コンテンポラリーのなかにクラシックのメソッドに対する懐疑や異議を起点としているものはあるのかもしれないが全部がそうではないし。 でも結局はそれを自分の身体に流し込んだときになにが起こるのか、という観点で見たときにどこまでああそうなのね、って納得できる動きを見せてくれるかどうかで、その点ではÉlise = Marion Barbeauの身体は見ればわかる見事なしなやかさで、”En Corps”としてあって、ここだけでも見る価値はあったかも。

あと、料理がおいしそうだったので何を作っていたのかもっと見せてほしかったなー。


Fashion Reimagined (2022)

同じ23日に、↑のを見た次の回、同じシアターの同じ席で見ました。邦題は『ファッション・リイマジン』?  内容はすごく勉強になるのにねえ..

自身のブランドMother of Pearlが英国で大きな賞を獲った前途洋々の新進デザイナーAmy Powneyが、その賞金で新ブランド“No Frills”を立ちあげて、完全に(どこのどんな羊さん、から)トレーサブルで安全で動物にも環境にも一切の危険・危害を与えないオーガニックな原料をベースとしたファッションラインをやろうと思いたつのだが、それは想定していたのの1000倍くらい大変なことになってしまうのだった。

相棒のChloe Marksと一緒にそういう条件を満たすちゃんとした毛糸を探しまわり、そういうのを生産している羊農家を求めて南米ウルグアイやペルーまで飛んで、彼らと会って話して染料まで確認して、どうにかコレクション発表までたどり着く。そういう旅を通してこれまでの、これからのファッションのありようを考える - (こうすべき、というよりは、こんなのでいいの?って)よい材料になっていると思った。

もちろん、そんなこと考え始めたら織機を動かすための燃料(石油)とか現地に飛んだりする飛行機とか際限なくなるに決まっているし、そういった過剰な手間とかプロセスは当然できあがったものの値段に反映されてしまうので、結局は安く買える服の方に行っちゃうのでは、とか。

でもここまで手を尽くさないとその出所すら追うことができない闇のチェーンやシステムが出来あがっているのって、資本と欲望に任せて肥大したファッション産業とその反動というか帰結というかで現れたファストファッションも含めて、地球によくない仕組みができあがってしまっているということなので、そこはほんとになんとかすべき。なんでこんなことに? についてはおしゃれ万歳!でやってきた自分たちのせい、というのも含めて反省しよう。もう服には本当にお金かけなくなってしまっていて、それでもぜんぜんよいから。

あと、こういうことをやり遂げたAmy Powneyさんの両親 – ドロップアウトして田舎で自給自足暮らしをしている - も素敵で、彼女がこういうとこに向かうのは宿命だったのだなー、とか。

彼女の試みが壁にぶつかって右も左も、になったときに唐突に現れるKatharine Hamnettさんがかっこよい。彼女のスーツ、まだ箪笥のどこかにあるかな。

しかし、あれだけかの地にうじゃうじゃいた英国羊たちの毛って、質がよくなくて絨毯とかにしか使えないって初めて聞いた。だめじゃん、がんばれ。

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