10.08.2023

[film] Past Lives (2023)

10月1日、日曜日の夕方、Picturehouse Centralで見ました。
ここも久しぶりだった。何度も潰れ話がでていたシネコン - 相変わらずぼろぼろだったけど、でも続いていてくれてうれしい。宣伝で、日曜日にわんわんを連れてきてよい上映会とかやっているって。犬の方が心配だけど。

A24配給によるアメリカ映画で、監督Celine Songの長編デビュー作。とても評判がよいのも頷ける、めちゃくちゃ切なくすてきな恋物語だった。

冒頭、バーのカウンターに座っている3人 - 少し間を開けてぎこちなく座る東洋人の男女と、その女性の隣にいる西洋人の男 - を捉えた画面の外の声が、あの3人の関係ってどういうもんだと思う? って問う。

と、そこから24年前 - 90年代終わりか00年代初め - の韓国に舞台は移る。 12歳のNa-young (Seung Ah-moon)とHae-sung (Seung Min-yim)は互いのことが好きで、親もそれを認めてて、学校の行き帰りもずっと一緒で、どちらも成績優秀でテストの成績どっちがよかったか、とかそっちのほうで競いあったりしている。やがてNa-youngの一家は映画制作をしている彼女の父の事情でカナダに移住することになって、お別れ会はしたものの互いにさよならを言いたくなかったふたりはなんとなくそのままにしてしまう。

そこから12年が過ぎて、カナダでNa-youngはNora (Greta Lee)となり、脚本の勉強をしているときに、Hae-sungがあんたの消息を探してたよ、と聞いたのでFacebookで探してみると彼は簡単に見つかって、大きくなったHae Sung (Teo Yoo)と軽くビデオ会話をして、わたしのことなんで探してたの? と聞くと、なんか会いたくて、って言われ、変なひとになっていなくて、自分が知ってたHae Sungのままでいてくれてよかった、とちっとも悪い印象なくじゃあまたねー、くらいで別れて。

やがてモントークでのアーティストレジデンシャルプログラムに参加したNoraはやはりそこに参加していた作家志望のArthur (John Magaro)と知り合い、そのまま恋におちて結婚してマンハッタンでふたりで暮らす。Hae Sungも徴兵を経てふつうぽい会社に就職して彼女ができたりしている。

時は現在になり、互いにいろいろあっても細々と連絡を取り続けていたふたりは、言うばかりでずっとつっかえて実行しないままになっていたHae SungのNY行きを実現する - 彼が到着した時は土砂降りだったけどホテルに入ってNoraのアパートまで行ってArthurにも紹介してもらい、ふたりでふつうにNY観光してBrooklynのDUMBOにある回転木馬(乗りたいなー)のとこに行ったり、いろんな話をする。

初めはArthurに気をつかってNoraが間に入って通訳していたのだがそのうちふたりだけ韓国語で会話するようになり、嫉妬と猜疑心まみれになったArthurが刃物を… という方には向かわず、むしろふたりを24年間もこんなふうに結びつけていたもの、いまそれぞれがこうなっていてもなんだか落ち着いてて揺るがないかんじってなんなのだろうね? という問いに韓国の "インユン "という考え方 - Past Lives -前世で恋人同士だった者同士が結ばれるというカルマが示されて、じゃあ次の生でもぼくらはまた出会えるかしら? とか無邪気に聞くので泣きたくなる。 わからないよ、って。 そういうのを抱えたままHae Sungは車を呼んで帰っていくの。

これ、”EEAAO” (2022)で描かれたようなマルチヴァースの話? にしてしまいたくなるかもだけど、そっちじゃないの(どちらかというとWong Kar-Waiの『花様年華』(2000)のほうがまだ近いかも)。

もっと単純な、なんであなたとわたしは出会ってからここまでずっと国とか時差が違ったりしてても、また会おうかーって続いていったりそうでない人はそうならないままになったり、そういうのを可能にする - っていうと強すぎるか、あらしめているのってなんなのだろうね? 単に好きだからでいいじゃん? ていうのとも違って、歳とったりしてこれまでのあれこれを”Past Lives”のように眺めてみえるようになる瞬間があったりすると、なんか。 わかんないけど。 宗教もどきでもなんでもなく。

という、ハッピーエンディングにもバッドなほうにも落ちない、ずっと遠い近くにいてくれる誰かをふと思ってしまうときに吹いたり撫でたりしてくる風みたいなラブストーリーだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。