11.04.2021

[film] Two-Faced Woman (1941)

少し戻って、10月28日、木曜日の晩、シネマヴェーラの特集 -『神話的女優: ディートリッヒ、ガルボ、バーグマン、マリリン・モンロー』で見ました。

邦題は『奥様は顔が二つ』。この邦題、少しだけ引っかかって、「奥様」 = “Wife”の話じゃなくて、それ以前の”Woman”の話なんだけどな.. ぶつぶつ。

監督はGeorge Cukorで、Greta Garboが女優をやめてしまうきっかけにもなった(と言われるくらいの)失敗作、とされている作品。『ジョージ・キューカー、映画を語る』の中でも監督自身が『どう見ても愚作だと思う』〜『どうにもならなかった』などと語っている。

NYの大物雑誌編集者のLarry (Melvyn Douglas)が休暇でスキーリゾートにやってきて、でもちっとも楽しくないしスキーなんて.. と言っていたらインストラクターのKarin (Greta Garbo)が目に留まって、彼女の個人レッスンを受けることにする。スキーなんてやったことのないLarryは転げまわって散々なのだが、一日が終わってロッジに戻ってくる頃にはふたりは結婚しよう!の熱々になっていて互いに夢を語りあうのだが、いちど仕事に没頭すると人が変わったようになるLarryとどこまでも自然体でやりたいことをやるからーのKarinはNYに戻る戻らないで揉めて、はじめは仕事なんてもう辞めだ、とか言っていたにLarryは結局NYに戻り、Karinは現地に残り、ふたりはばらばらになる。

その機会をNYで狙っていたのがLarryの社交仲間のGriselda (Constance Bennett)で、彼にアプローチをかけ始めて、その噂がKarinのところにも届いたので彼女はKarinの双子の妹のKatherine - しかもKarinとは正反対の社交好きでアトラクティヴな女性になりすましてNYのLarryの前に現れる。

Larryはスキー場の方に電話をしてKarinが不在だったことからKatherineはKarinだ、って直観して、しばらく彼女を泳がせて様子を見ることにするのだが、Katherineの方もとっても魅力的なのであれこれ我慢できなくなっていくし、Karin=Katherineの方も演じ分けが面倒で雑になっていくし。

Rom-comのプロットとして書いてみるとおもしろいかも、って思うのだが、でてきた映画を見るといくつか失敗がある気がして、ひとつはLarryがちっとも魅力的な男性には見えないってこと。編集者としては才能もあって優秀なのだろうが、仕事のことで火が付くとそっちに掛かりきりで周囲のことが見えなくなる、ってふたりが出会って恋におちた晩からその兆候はあって、Karinの性格設定からするとあんなふうに自分中心で相手をそこに合わせたがる人とは合わないかんじなのに、彼女は彼に冷たくされてもなんとかくっついて一緒にやっていこうとするとか、その辺。 仮に彼女はスポーツをやる人なので負けん気も強くてこの辺を乗り越えようとしたのだ、としたとき、対案としてまったく別のぐにゃぐにゃのキャラを作って見せつけようとするほど器用かしら? とか。 それくらいLarryのことを好きだったのよ、と言われてしまうのかもだけど、それを言われるとLarryってそんなに素敵なの? って初めのところに戻って。ま、恋のことって人のことだしわかんないし、そういうもんなのかしら。

そんなふたりの関係のありようについて、アメリカでは公開時に道徳的・倫理的に問題あり、って最初格付け機関が”C”っていうバッテンをつけて、その後シーンを追加・再編集して(ただしGeorge Cukor自身は同意しておらず作業にも関わってない)なんとか”B”っていうランク - 道徳的に問題あり – に変更されてリリースされたという。ちなみに修正前のバージョンは保存されていて、2004年にロンドンで一度だけ公開されているそう。無修正版、見たいな。

あとは、ふたつのキャラクターを演じ分けてじたばたするGreta Garboががんばっていることはわかるのだが、彼女からすれば、脚本も含めてなんかあれこればっかじゃねーの(アメリカ人)、ってあほらしくなってそのまま女優もやめちゃったのではないか、と。

Melvyn Douglasって、上手いと思うのだけど、『フェリスはある朝突然に』(1986)の意地悪な校長先生(Jeffrey Jones)に見えてしまうことがあって、この作品だと電話してKatherineはKarinだ、って気づくところとか。最後にはぼろぼろにされてほしいな、って。

ラストのアクロバティックなスキーのシーンはすごいと思ったけど、あそこでLarryを谷底に吹っ飛ばして、その後に岩の陰からGriseldaがにっこり現れる、ていうふうにしたらすっきりしたのに、とか。実はKatherineはほんとうにいて、突然双子が現れたので驚愕してそのまま谷底にさようならー、とか。

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