10.21.2017

[film] Here to be Heard: The Story of The Slits (2017)

14日の晩の9時からBFIで見ました。LFFで、当然のように売り切れていた。
“The Meyerowitz Stories (New and Selected)”の次に見たかったやつ。

会場内はやはり女性が圧倒的に多くて、しかもみなさんどなたも闘士の顔をしていてかっこよいったら。あとは老いて擦りきれた出がらしパンクスもいっぱい。 パンクのドキュメンタリーとしてはこないだ見た” The Public Image is Rotten”が自分のなかでは相当上位にきたのだが、これ見てこっちの方にひっくり返った。

映画は、"In the Beginning There Was Rhythm"の絶叫から始まって(そうよねー)、Tessaが家に残していたスクラップブックを軸に新旧メンバーと、関係者証言と、いろんなフッテージを繋いで、「世界で最初のAll Girlsパンクバンド」の歴史を追っていく。いろいろ纏めるのに4年くらいかかったって。関係者として出てくるのはGina Birch, Vivien Goldman, Neneh Cherry, Budgie, Don Letts, Dennis Bovell, Adrien Sherwood, などなど。

Tessaが語るパンク最初期の話がまずはおもしろくて、RoxyでGeneration Xがやるときの前説を振られたとか、最初のギグはClash / Buzzcocks / Subway Sectsの前だったとか、やはり最初はあんま考えてなかったので演奏とかはめちゃくちゃで、でもJoe Strummerがいろいろ守ってくれたとか、最初に新聞記事になったときはバンド名は(バンド名故に)プリントされなかった、とか。

ふつうのパンクで言われがちなヴィジュアルが決まってるとか、かっこいいとか、そういうのとは無縁でとにかく破天荒でめちゃくちゃだったのね、というのが細切れのライブ映像とかスナップから伝わってきて、Ari UpもVivもTessaもPalmoliveもどっから来たんだこいつら?の無頼はぐれ者感がとてつもないし、特にAri Up – デビュー当時14歳 – のノラ猫っぷりときたらすごくて、単に映像見ているだけでほえーってなって、とにかく興奮する。

他の映像としてはJoe StrummerとじゃれてるAri Upとか、Keith Leveneと一緒のとことか、Chrissie Hyndeにギター教わっているとことか、いったいどこから見つけてきたのだろうか。

パンクのありようとしては、ジェンダーの壁をとっぱらった、ていうのと人種差別の壁もとっぱらった、ていうのと、音のアタックの強さ、エコーのえぐるかんじと、絶叫がすべてをふっとばして、でもお構いなしにどこまでもどこどこ鳴り続けていて、なにもかも痛快としか言いようがない。女の子がバンドをやる、パンクをやる、その意義と理由の全てが彼女たち - 割れ目とか裂け目とか - から噴火噴出していて、それは彼女たちだけのものではなくて女の子みんなの手元足下にある。 
聴いたことないのなら、まずは聴いてみること。パンクやりたいなら、とっととやれ、って。

上映後のQ&Aは監督とかスタッフに加えて客席にいたPalmoliveとTessaが登場したのだが、答える側より聞く側が相当めちゃくちゃで、質問しなくて言葉につまって泣いちゃう奴とか、とにかくお礼をいいたいのだとかそんなのばっか。かと思えば客席にいた派手なじじいパンクスがマイクを取ってPalmoliveは俺らのバンドの最初の頃叩いてくれたし、それだけじゃなくてBansheesだって最初は彼女が叩いてたんだよ、と言って拝んで敬礼してて、それを見た隣に座っていたすごく上品そうなおばさんが「あらSpizz(Spizzenergiの)じゃないの、まだ生きてたのねあいつ」と吐き捨てるように言ったり。 同様にすごく物静かそうできれいな英語を喋る老婆が、わたしは100 Clubの、あれが起こった最初の頃にずっとあそこにいたものですが、あなたたちは少し遅れてきた人たちだと思っていました、でもこの映画を見てすばらしいと思いましたわ、とか。やはり客席にいたDennis Bovellさんがあの声でコメント入れてきたり。
こんなふうにパンクスって生き延びていくものなのかしら? 生きてていいのかしら?

最後の質問 - 「あなたたちのようなGirls bandがSurviveできたのはなぜでしょうか?」に対するPalmoliveさんの答えがよくて。「女性であること、女性としてなにかやることに許可や同意(permission)を求めてはいけない。自分たちは一切容赦しなかった。女性だからといってPermissionを求めるようなことはしなかった」と。 いまPalmoliveさんが学校で子供たちを教えているそうなので、先生の言葉としてもとっても素敵で痺れた。

それにしても、Ari Upがこれ見たらどう思ったかしら? 笑いながらふざけてんじゃねえよ、って向こうに行っちゃうとか。

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