10.26.2017

[film] The Glass Castle (2017)

15日、日曜日の午後にPiccadillyのPicturehouseで見ました。 LFFも終わっちゃってつまんないし、なんかないかなー、くらいで。
2005年に出版されてベストセラーになったNew York Magazineの記者のメモワールを映画化したもの。翻訳本は2007年に『ガラスの城の子どもたち』というタイトルで河出から出ているもよう(未読)。

80年代のNYで働くJeannette Walls (Brie Larson)は結婚も控えて前途も揚々で、でも目の前にきらきらした未来が見えるたびに、彼女の脳裏には小さかった頃の家族との記憶が蘇ってくる。

Jeannetteの父親のRex(Woody Harrelson)は豪快で破天荒なドリーマーで、母親のRose Mary (Naomi Watts)は画家 - プロフェッショナルな画家というよりは日曜画家 - で、のんびりおっとり生活を楽しむタイプで、父はドリーマーの常としてホラみたいなでっかいことはいくらでも言うけどあんま生産的なことはしてくれなくて、旅の途中で廃屋みたいなところを見つけて終の住処とすべくリフォームしながら、でも実際のところはアル中になっていたりぼろぼろで生活は困窮して子供たちは棄ておかれて食べ物も貰えない日々が続いたりして、年を経て子供たちが成長してくると彼のしょうもなさや暴力的なところもより際立ってきて、あーあ、になっていく。

映画は都会に暮らす現代のJeannetteが直面するいろんなこと - ホームレスのようになってしまった父はLower Eastの廃墟となったアパートを占拠したりしている - と幼い頃から成長して父のいろんなことに耐えられなくなって家を出るまでのエピソードを交互に映しだしながら、家族が共に老いていく、変わっていくことの儚さ難しさとか、それでも一番に輝いて見える幼い頃の父の思い出と、それがあったからここまで来れたのかも、とか、どんなに腐ってぼろぼろになったってあたしの家族はあたしの家族なのかも、とか、それらのぐるぐる回る思いがJeannette - Brie Larsonの強い強い眼差しのなかで語られる。

監督は“I Am Not a Hipster” (2012) ~ “Short Term 12” (2013) のDestin Daniel Crettonさんで、暗く重く訴えかける系のにしようと思えばいくらでもそうできそうなテーマを透明な - 過ぎてしまうことは過ぎてしまうことで、次はたぶんくるから - な目線で追っていくので辛くない。 金融関係のばりばりの婚約者をRexに紹介するシーンなんてはらはらどきどきでとてもおもしろいし。

Woody Harrelsonの父とNaomi Wattsの母の組み合わせってなかなかリアルで強烈だと思うのだが、これに正面からぶつかってぜんぜん負けないBrie Larsonさんの芯のぶっとさも改めてすごい。 “Room” (2015)でもそんなかんじだったけど。

これ、駅とかにポスターも割と貼ってあった気がするのだがロンドンではもう殆ど上映されていないの。ぜんぜん悪くないのに。 たぶん、ここにあるようなてんてんと放浪していく家族の像ってイギリスではまったく理解されにくいタイプのやつかもしれない、て少し思った。

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