9.08.2015

[film] Mistress America (2015)

31日、月曜日の晩7時にArcLightで見ました。
これもなんとしても、の一本だったのだが上映開始時点で席にいたのは3人、シアターの挨拶のひとにはPrivate Screeningへようこそ! て言われた。 うん、日本から来た甲斐があったってもんよ。

2015年はNoah Baumbachの新作が2本も公開された年として映画史には刻まれることになるのだろうが、愚かもんばかりのこの国では、あーんなにすばらしかった"While We're Young” (以下、WWY) ですらようやく来年公開、というありさまなので、これなんかへたしたら再来年になりかねない。 ほーんとに、何千回言ってもいい、くそったれだわ(→日本の洋画配給会社)。 こーんなにおもしろいのにさ。

さてこの"Mistress America" (以下MA)、Noah Baumbachの作品としてはWWYに次ぐものだが、Greta Gerwigさんとの共作、という点では”Frances Ha” (2012) に次ぐもので、”Frances Ha”の公開当時にふたりが準備中の次作として、”Fuckin' Times Square Project"て呼んでいたやつと思われる(そういう台詞がでてくるから)。

コロンビアの文芸科(?)に入学したTracy (Lora Kirke)は周囲に馴染めず課題の作品も書けずにもやもやしてて、そんな彼女に母は、再婚予定の男の娘(つまりやがて義姉に)がマンハッタンにいるから会ってみればとアドバイスして、TracyはBrooke(Greta Gerwig)とTimes Squareで出会う。

独身アラサーのBrookeはジムでインストラクターとかしながら毎日毎晩パーティやイベントに駆け回るさまを慌ただしくTweetしつつ、夢である自分のレストランをオープンするための投資パートナーを探していて、もう物件は押さえてあるからあと一歩なのだ、とぺらぺらハイテンションでTracyに喋りまくり、そんな将来想像すらしていなかった彼女はひたすら感心して圧倒されて、Brookeの語る言葉や彼女の挙動を自身の作品用のメモとして書き留めはじめる。

やがてちっとも投資話が進まないことに苛立ったBrookeは、かつての婚約者で富裕層のDylan(こっちからふってやったんだぜ)から金を引きだすことと、ついでにかつて自分のTシャツビジネスのアイデアを盗んでDylanと結婚しやがったMarie-Claire (Heather Lind)に文句をつけるために、Tracyのex-BFとこいつ未だにTracyに気があるんじゃないかとカリカリしているその彼女の計4名で車で郊外グリニッジの豪邸街(あるのよ、そういうとこが)にわーわー乗りこんでいくの。

後半はDylanの邸宅のリビング(ほとんど舞台劇設定)で繰り広げられる(主に)Brookへの投資を巡る愛の下剋上とか陣地合戦とか格差とかのずるずるじたばたのディスカッションがとんでもなくスリリングでおもしろすぎて鼻血が出そうだった。

前作のWWYとこのMAは似たところもあって、WWYでは年齢的にも先が見えてきた主人公(Ben Stiller)の目の前に現れた若い才能(Adam Driver)に感じる焦りと羨望がテーマだったのに対して、MAではどん詰まり状態にある若い主人公が自分よりひとまわり先を軽やかに(でもほんとは傷だらけで)走っていく年長者に出会ってどうしたもんか、と思ったりする。

更にそこから模範とは、模倣とは何か、野望とは、成熟とは、信頼とは、といったところまで踏みこんで考えさせて、それははっきりとFrancesのあの見事な疾走の先を敷衍 - 俯瞰できる見晴らしのよい高台に我々を連れていってくれて、それってNoah Baumbachの若さというものに対する誠実さ(あるいはGretaに対する愛 - ラストの彼女の表情を見よ)に他ならないの。 そういうのを自己実現とか啓発啓蒙とかから遠く離れた地点からからりと描いて、それに成功している - 知ったふうの、理解者の素振りなんてこれっぽっちも見せずに。 Wes Andersonが子供の世界を掬いあげたのと同様のことを(「大人」に対置される)若者の世界でやろうとしている、というか。

Greta Gerwigさんのネジの外れた女王っぷりは揺るぎなく堂々としているのだが、Lora Kirkeさんの不機嫌かつ強靭な果実っぷりも見事で、このふたりが今のところ世界最強。すばらしいんだ。

画面の色味がとてもよい。 秋から冬にかけてのNYの色彩が泣きたくなるくらい素敵で。

音楽は、”The Squid and the Whale” (2005) 以来となるDean Wareham & Britta Phillips。
他には、OMDの”Souvenir”とかSuicideの”Dream Baby Dream”とかも聴こえてくる。
Dean Warehamさんは、グリニッジ在住、児童ポルノ愛好を疑われているDylanの怪しげな隣人(...とってもそれらし)として出演もしているの。

“Trainwreck”との共通項はねえ、どっちにもVeselkaが出てくるとこ。そりゃ大好きだけどさー。



それはそうと、今日はとにかく、ものすごおおおくあったまきた。
いいかげんにしろよくそった   おぼえ 。 14日な。FXXX

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