1.09.2015

[film] Maps to the Stars (2014)

まだ2014年ぶん。12月29日のごご、新宿でみました。

中西部からLAにやってきたMia Wasikowska (MW)がリモの運転手Robert Pattinson (RP) - バイトで俳優したりしている - と出会ってハリウッドのあるアドレスに連れていってもらう(そこにはなにもなかった)。
旬をとうに過ぎて売れなくなってきている女優のJulianne Moore (JM)は伝説的な女優だった母の伝記映画の主演を死ぬほど取りたがってじたばたしている。 コメディドラマが当たって子役セレブになった傲慢なガキ(♂)を抱える金持ちでドクターのパパJohn Cusack (JC)とママがいて、過去になにかあったのかガキの保護に変に過敏になっている。 

MWはTwitterで知り合ったCarrie FisherのツテでJMの秘書として雇われて、JMは変てこなマッサージセラピーをJCに受けていて、という具合に登場人物たちの過去も含めた関係の線がだんだん顕わになっていって、やがて。

ハリウッドという夢工場 - 全てが虚構、どんちゃん騒ぎの海のなかで、セレブ/金持ちの登場人物たちが祈るように懸命にしがみつき、畏れ、或いは捨て去ろうとする血縁の縛りと呪い、昔だったらひとこと「びょーき」で片づけたくなるようなあれこれを、悪趣味に走ることなく、ダークでシニカルなファンタジーとしてストレートに投げてくる。
なのに、しかも、ラストはロマンチックな風味すら(そして、しかし、これもまた..)漂ってしまうのだからすごい。"Maps to the Stars"

同様のばかばかしさを取りあげつつも、イタリア人的ソウルの過剰さに溢れていた”The Great Beauty" (2013)と比べると、カナダ人のしらーっと突き放した目線が心地よくて、おもしろいねえ。

キャスティングが絶妙で、中も外もぼろぼろのかすかすで3Pから放屁に排便、さらに脳天に穴まで開けてしまうJMはすごいとしか言いようがないし、一見成功した家庭人のパパ、なのにうさんくささ満載のJCとか、なんともいえない腐臭がぷーんてきそうなRPとか、そしてなんと言っても"Stoker"の不機嫌を炸裂させるMWが一瞬見せる眉と顔の歪みとか。(やはり「嗤う分身」で彼女はJesse Eisenbergをぶっ殺すべきだった)

そして、ところどころに挿入され反復されるエリュアールの“Liberte”、というと、やはりどうしても大島弓子の「ローズティーセレモニー」(1976)がちらついてしまうのは単に自分が年寄りだからなのか。
髪の毛がくるっとして天使のようなのに実は邪悪なガキとか、華やかなのに外側だけ取り繕って裏は腐りきっている家族とか、どこまで行っても叶えられない想いとその裏につきまとう死の影とか、これらをケレン味たっぷりに描ききってしまうところとか、David Cronenbergと大島弓子の間に線が引けてしまうことに驚いたが、あってもおかしくなかったかも。 どちらの生も過酷で、楽じゃない。

最後、Rufus Wainwrightの“Release the Stars” あたりがきらきら流れたらすごいかも、と期待したけどさすがにそれはなかった。

それにしても、なんでこんなおもしろいのが単館でしかやってないの?

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