1.24.2015

[film] Jimmy P. Psychotherapy of a Plains Indian (2013)

11日の午後、"The Lady Eve"のあと、イメージフォーラムに移動して見ました。 (前の日とまったく同じパターン) 『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』。

こういう邦題の映画、見ただけでまっぴらごめん、なのだが、Arnaud Desplechinであれば話はまったく異なる。
でもさらに、わたしにとってのArnaud Desplechinは、女性映画の名手なのだが、この映画の舞台はアメリカで、しかも男ふたりの物語だという。 どーなの? だったのだが、まったく問題はなかった。

二次大戦後まもなく、帰還兵のJimmy P. (Benicio Del Toro)が原因不明の頭痛とかめまい、身体の硬直とかに頻繁にやられるようになって、PTSDかも、と姉に付き添われて軍の病院に入るのだが通常の検査での異常は特に確認されず、精神科医になりたがりだった人類学者ジュルジュ(Mathieu Amalric)に依頼が飛んで、彼が面倒を見ることになる。

映画のほとんどは、ジョルジュがジミーの語る過去、戦争も含めた体験、子供時代、家族、女性、夢、運命、未来、などなどをふむふむ、て聞いて、それに沿うかたちで流れていく映像がほとんどで、外側から見るとそれは犯人が取り調べ室で自白したり、教会で告解をするのと同じようなのだが、実際にはインディアンであるジミーの(ネイティヴのも含めた)言葉と言葉も含めたコミュニティや文化や象徴を理解し尊重しているジョルジュとの間で相互に交わされていく対話 - 互いにいろんな気づきをもたらす - になっていて、明確な目的やメソッドに基づいた治療とは思えないのだが、ジミーはだんだん良くなっていくの。

それはたんなる闘病~治療日誌、というよりはひとりのでっかい無口な男の内面を時間と共に巡っていく旅で、その横にはジョルジュのところにやってきた既婚女性マドレーヌ(Gina McK- すてき)とのひと夏の逢瀬もあって、そこに世界の風穴が開いていて、そういうのも含めてびっくりするほど豊潤でダイナミックなドラマがそこにある。それを愛と呼ばなくても、ひとはこんなふうにひとの神経や魂にふれて、やわらかくなでであげることができる。 

「病んでいる」「異常だ」とは言わずに「君の魂はケガをしている」とジョルジュは言い、その傷を横に置いて一緒に眺めている - 解釈でも分析でもなく、どんなふうに見えるのかも含めて彼の辿ってきた道や夢に立ち返って眺めるかんじ - この、横に置いて見る、というところに「映画」のものすごい可能性が拡がっているような気がした。

ここには彼の種族の、更には合衆国の建国からの歴史があり、所謂トラウマとして括られるいろんな事象の根があり、男女の機微挙動あれこれがあり、それは被治療者だけの話ではなく治療するひとの、その様子を見る我々にも問いかけて記憶の根を揺らしてくる。 彼の話が「わかる」、としたらそれってどういうことなのか、と。

対になっているのは"Kings & Queen"、だろうか? あの作品でEmmanuelle Devosが独白という形で彼女の過去・周囲にいた複数の男性のことを語り、この作品では対話を通してジミーの周囲に現れた複数の女性のことが語られる。 "Kings & Queen"のどろどろした彼女の反対側に、その脇を軽やかに駆け抜ける狂人としてMathieu Amalric扮するIsmaëlがいて、この作品でのMathieu Amalricはお茶目な分析医として再登場してジミーを救いあげる。

民族精神医学 - その民族に蓄積された歴史の記憶、夢、宗教や自然などなど - 古来から擦り込まれてきたサバイバルの知恵を近代科学(精神医学)の目で補填して補強する - ていうようなものかしら、と素人は思うのだが、そのひとの民族(性)がそのひとの無意識にどの程度縛りを入れているのか、そもそも民族的ななにか、て何をもってそういうのか、とかいろいろありそうだねえ。
でも、このふたりに関しては効いた、と。 よかったよかった。

ジョルジュって、M.ミードを介してベイトソンと接点てあったのかしら? とネットで調べてみたけどあんまよくわかんなかった。 ラカンとはなんもなかったのかしら? とか。

NYFFのプログラミング・ディレクター Kent Jonesさん(Richard Peñaさんの後任ね)が脚本に参加している。 Richard Peñaさんもそうだったのだが、このひとも映画の前説がほんとに素敵なんだよねー。

あと、これの撮影中、監督はずっとBowieの"Panic in Detroit" をずっと聴いていたていうのを知ってなんかなごんだ。 ”Aladdin Sane”て激しくてひりひりしているけど、同時になでてさすってくれるようなとこもあるよね。

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