7.01.2012

[film] Radio Unnameable (2012)

火曜日の晩、BAMで見ました。 これだけは前売りで買っておいた。
6/20から7/1まで、BAMでは、BAMcinemaFest2012ていうのをやってて、どういう趣旨のかは知らないのだが、独立系の小品みたいのが新旧長短含めていろいろ並んでいて、そのなかの1本なの。

Lena DunhamさんがCo-Writerとしてトークに参加した"Nobody Walks"(先週土曜日)とか、昨日の土曜日には"Kicking and Screaming"(1995)のReunionとかがあって、Noah Baumbachも出てきたのだが、これはチケットぜんぜん取れなかった。 本日(7/1)晩のClosingは、Don Letts先生によるドキュメンタリー"Rock ‘n’ Roll Exposed: The Photography of Bob Gruen"で、なんというか、全てにおいてタイミングが悪すぎる(自分の)。

この作品もドキュメンタリー。
Free Form Radioの先駆としてNYのWBAIていうラジオ局で50年以上に渡ってDJを続けているBob Fassさん(78歳)の足取りを、彼自身が残した膨大なアーカイブと共に紹介する。
Free Form Radioていうのは、DJのひとの語りとかミュージシャンによる演奏とかインタビューとかリスナーとのおしゃべりとか、なんでもありのやつで、彼は深夜0:00から午前3:30まで、眠れない夜を過ごすひとたちのために、50年間(途中中断もあったが)自分の番組を続けてきて、今も木曜の同じ時間帯に放送は流れている。

60年代初のグリニッジヴィレッジで俳優をしてて、その流れでなんとなくラジオ放送を始めたという彼の番組には、今からするとえええ、みたいな人たちがいっぱい登場して弾き語りとかおしゃべりをしているの。
Bob DylanもPhil OchsもAbbie HoffmanもJoni MitchellもCarly SimonもThe Incredible String Band(Joe Boydがインタビューででてくる)も、Arlo Guthrieの"Alice's Restaurant"が最初に演奏されたのはこの番組のなかだった、とか。 Garland JeffreysもKaren Daltonも瑞々しい歌声を聴かせてくれる。
音は流れなかったが、他にはTownes Van ZandtとかPatti Smithの名前もでました。

音楽だけではなくてカウンターカルチャーのほうも、68年、Yippies (The Youth International Party)によるGrand Central Stationの占拠のときは、彼の放送がハブとなって現場の生々しい情報を流しつづけていた。
いまのTwitterの人力生放送みたいなことをやっていたと。
他に、88年のTompkins Square Park Riotのときも、彼の放送は前線の人たちを支えていたと証言されたり。

そういうのだけでなくて、番組での会話中に自殺しようとする青年を懸命に救おうとするとこ(8時間後に住所を突き止めて命は助かった)とか、ひとりのDJによる放送がロウソクの灯りとなってNew Yorkという都市、その50年をひっそりと、しかし鮮やかに浮かびあがらせる、そういう拡がりをもった映画でした。

やっぱりラジオってだいじだよな、とおもった。 Webはラジオではないし、ラジオにはなれない、とBobさんの深く揺るぎない声を聞いてて感じた。

映画の後半で、Bobさんの自宅にあった膨大な(ほぼ家一軒分の)テープ類を映画のスタッフが運び出す場面があるのだが、スタッフえらい、としみじみ感動した。
アーカイブは今、どっかの大学の資料庫に安全に保管されて、テーブ起こしは延々続けられているという。
その一部は、今後もここで公開されていくそう。

http://www.radiounnameablemovie.com/

終映後のトークは、ほとんど昔からのリスナーによる同窓会みたいなかんじで、あの時代のじじいばばあはほんと元気なんだな、と思った。

映画のあと、10時からは映画館の横にあるBAM Cafeに移動してSilver ApplesことSimeon Coxeさん(このひとも70を超えているはず)のライブがあった。 映画みたひとはFree。

最初にBobさんの挨拶があって、CageやVareseと並んでSilver Applesの電子音楽がどれだけ大きな影響を持っていたかを力強く証言する。 その力強さときたら、まあ、へたな音楽評論家なんか太刀打ちできないだろうな。

Simeonさんは朗らかに歌いながら結構ぶんぶんしたトラックをかましていった。これが70歳の音か?

Bobさんは一番前の椅子に座ってずうっと音を聴いていたが、その間もいろんな人たちが彼のとこに寄っていってえんえん握手したりハグしたりしてて、なんか素敵な光景なのだった。

写真は左がBob Fassさん、右がSilver Apples。 
   

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