7.03.2012

[film] Neil Young Journeys (2011)

帰国していますけど、この天気はあんまりすぎる。

まだNYにいた先週の金曜日、夕方に抜けて見てきました。
この作品、NYとLAはこの日が初日で、NYではTImes SquareとSunshineの2館のみ。Times Squareのほうで見ました。 初日だし、売り切れてたらどうしよだったのだが、シアターに入ったら10人くらい、萎れたおじいさんみたいな人たちがぼーっといるだけだった。 初日なのに。 

Jonathan DemmeによるNeil Youngのドキュメンタリー、2006年の"Neil Young: Heart of Gold"、2009年の"Neil Young Trunk Show"(これは見てない)に続く3本目。

冒頭、ライブ会場のセットアップ風景に続いて、Neil Young本人が車(でっかい昔のアメリカの)を運転しながら自分が生まれ育った界隈を案内していく。 ここには昔川があって魚とか亀とか取ってあそんだ、とか、ここが親父の名前がついた学校(ほんとにでかでかとScott Young High Schoolて書いてある)とか、なんとなくほのぼの紀行モノみたいなのりなのでちょっと心配になる。

がががしかし、TorontoのMassey Hallでのライブ(日付は2011年の5/11 - "Le Noise"のツアー時のもの)に画面が変わって、1曲目の“Peaceful Valley Boulevard”が鳴りだした途端、ものすごくびっくりする。 これはアコギの音なのか、ほんとはなにが鳴っているんだ? 等々。
ひとつの楽器とひとりの声だけなのに、この厚さ、豊かさはなんだろう、と。これまで聴いたことがない音。

続いてギターはエレクトリックに替わり、"Ohio"を。
ここでもギターの音は凄いのだが、それとは別のところで画面に釘付けになる。
ここで歌われているKent州立大学での州兵による鎮圧の映像がそのまま使われ、その犠牲となった4人の学生の顔と名前が前面に出てくる。 あれから40年以上を経てもなお、君たちの死は無駄にしない、絶対に忘れないと死者と生者の両方にむかって強く強く歌いかけてくる。

その後は、"Le Noise"からの曲の合間に"Down by the River"、"After the Goldrush"、"My, My, Hey Hey (Out of the Blue)"などのクラシックを。

"Neil Young: Heart of Gold"でのNashvilleのライブが、天上に舞いあがっていくような、音楽の神様に全てを捧げるかのような無垢な愛に貫かれていたのに対し、この映画はその逆に、地上めがけて杭をぶっ刺す、振り下ろすかのような怒濤の殺気に満ちていて、それがぴーんと張ったギターの弦上からとてつもないレンジで飛んでくる。

それにしてもこの音、シネコンなのに服がびりびり震えるくらいのでっかさと深く澄んだ水のような底のなさと。 大抵の映画の音にはあんま驚かなくなっているつもりだったが、これには唖然とした。 

監督へのインタビューなどを読むと、プレミア時のTorontoの映画祭では98Khzで上映してて、ほんとは98Khzで展開したかったのだが、多くの上映施設がまだ98Khz対応できていないことから48Khzでもよいことにした、と。 このシネコンもおそらく48Khzだと思うのだが、それでもこれだけの凄まじいことになる。

爆音はもはやミニマムで、その上で水に浮かんだそうめんのいっぽんいっぽんがクリアに見えるような音質も求められるのだろうな。

ラスト、Ben Keithさんに捧げされていることがわかって、ゆったりとしたアコギによる"Helpless"が静かに流れていくの。 この曲だけトーンがちょっと違った。

今日はあんまりにもだるかったので午後会社休んで吉祥寺の爆音に行ったのだが、前売り買っていたライブ付きのはさすがにパスしてしまった。 アナログばかだけでもがんばればよかったかも、と少し後悔している。

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