4.08.2024

[music] Caetano Veloso

Easterの連休があけて、2日しか経っていないのに3泊(+機中1泊)でNew Yorkに行ってきて、朝に戻ってきた。

そもそもは、The Magnetic Fieldsの”69 Love Songs”(1999)の25周年記念の全曲通し公演が2日間にわけてある、という話から。そもそも、2002年のAlice Tully Hallで全曲を通してやったときの公演を逃したのをいまだに(20年以上経っているのにね)強くねちねちネに持って抱えていて、これは行かねば、と。告知があってチケットが出たのが昨年の7月頃、その時に英国に行くことはもう決まっていたと思うのだが、うるせー(距離的に近いじゃないか)、って取った。(で、こっちに来てから、同じのがツアーで英国にも来ることを聞いて泣いた – さらに近くなったよ)

で、ライブが金土だったので、金曜日だけ会社を休んで月曜の朝に戻ってくることにして、NYの宿も取って飛行機も取ってから暫くたってから、4月4日の木曜の晩にBrooklyn Academy of MusicでCaetanoの公演がある – しかも最後のUSツアーになるかも、とかいうのでばたばたとチケットを取り、ホテルを足して飛行機も変えた。英国に来て3ヶ月がんばっ(てないけど)た、記念でいいや、と。

こういうのについては、「しょうがない」ばっかり言っていて、見逃すのだって「しょうがない」カテゴリーに入るわけだが、きつくても見れる状態がそこにあるのであれば、そっちを取りにいくようにしよう、と思うことにしたの。こういうバカなことをできるのは体が動ける今のうちだけだしー。(今とは)

Caetano Velosoは1990年の初来日 - ”Estrangeiro” (1989)のツアーのときに地の果てにぶっ飛ばされて以降、ブラジル音楽を追うようになり、サンパウロの中古レコード屋の床を這ったりカーニバルの時期のリオにもバイーアにも行ったり、そういうことをさせやがった人で、ライブはNYにいた頃にソロもGilberto Gilと一緒のも、David Byrneと一緒のも、Tom Jobim追悼でJoão Gilbertoと並んでいるのも、いっぱい見てきたし、これが本当に最後になってしまうのであれば(あまり信じていないけど)、やはり見に行かねばならぬ、と。

しかも場所がBAMときたもんだ。年一回のNext Wave Festivalの拠点としてPina BauschからRobert WilsonからComédie-FrançaiseからLou Reedまで、知ってたのも知らないの(が圧倒的に多かった)も相当見て、チケットを買う都度、請われるままに寄付をしていたので、90年代のどこかの1年間、BAMのプログラムの終わりに自分の名前が載るところまでいった。あの頃はまだ治安がよくなくて地下鉄には乗れずにBAMbusっていうバスでマンハッタンとの間を往復して通っていた(片道$5)。マンハッタンへの帰路、このバスが橋を渡るときに見えるツインタワーの姿が大好きで.. など思いだしただけで泣きたくなるの。

というわけで久々のBAMの大きなホール、トイレからなにから、なんも変わっていなかった。
さてCaetano Veloso、3/3〜4の二日間公演の後半。前座も休憩もなしの1時間半。

新譜の”Meu Coco”のリリースにあわせたもので、バンドはステージ左手にギター、ベース、キーボードの3人、プラスチック板で仕切られた右手にパーカッション3人。Caetanoはギターを抱えたり、直立不動だったり、軽くサンバのステップを踏んだり。こないだのRoger Daltreyより2つも若い81歳なので、それはそれは安定している(誰比?)。

とにかく、あの声 – 震えるぎりぎり手前で内と外との境い目を維持しながら冷たい水の重さと孤独を湛えてそこにあり、ハーモニーをつくらない、いらない。その声が伸びていくところにできる空気のうねりと震えが世界のぜんぶ、それだけで音楽なので、バックはシンプルな太鼓でもギター1本でも十分だし、なくてもよいし、めちゃくちゃやかましいアバンギャルドでも負けずに賄えてしまう - という発見と探求を続けた60年近くだったのだな、というのがよくわかる舞台だった。(これと同じことをやっているのがBjörkだとおもう)

ステージ左手のちょっとウェットで、よくしなる弦たちが彼の単一の声に絡まったり絡まなかったりしたかと思うと、そのツタのうねうねを時として工事現場の喧騒 - と言ったら失礼か、めちゃくちゃかっこよい - を叩きだすパーカッションが粉々に粉砕したり押しつぶしたり、それでも最後に残って光を放つのは彼の声、でしかないというマジックの見納めになってしまうのか。

後半は過去作から満遍なく選ばれたベストで、”Trilhos urbanos”もやるし”O leãozinho”(小ライオンさん)はもちろんだし、最後は”Odara” 〜 ”A luz de tieta”であがりまくり、客席の方はわーわーそれぞれの声で気持ちよさげに歌っていて、それでもやかましく歌を邪魔するものにはちっともならない不思議。

イタリア映画が本当に好きで好きで、と言ってから始めた“Michelangelo Antonioni”。映画にマトを絞ったインタビューとか、あるのかしら? あったら読みたい。

他のも忘れないうちに早めに書かないとー。


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