4.17.2024

[film] Civil War (2024)

4月9日、火曜日の晩、BFI IMAXで見ました。週末の本公開に向けた20:45からのPreview。
予告では日本の『SPY FAMILYなんとか』、の予告もがんがんに掛かっていた。

あと、これの前、18時過ぎには『ドレミファ娘の血は騒ぐ』(1985) – こちらでのタイトルは” Bumpkin Soup”の上映がBFI Southbankであって(実験映画枠)、そちらを見てから(もう何度も見ているのでこの感想はいいかー)。 『ドレミファ娘…』は、NYのJapan Societyでも上映があるようで、グローバルでなんかの陰謀でも動いているの?

英国のAlex Garlandがアメリカ合衆国の内戦を描く、A24で過去最大規模の予算を投入したパニック映画、というより戦争映画、というよりジャーナリストが見た紛争映画。戦争映画に必要な善悪や大義の軸 – どっちがどうだからこう動く - の話はない。

冒頭、国民向けのTV演説の準備をする合衆国大統領 (Nick Offerman)も、まずは自分がどう見えるか、映るかを気にして、説得力をもって蜂起した反乱軍を抑えこむのだ、自分にはそのパワーがあるのだ - というのを伝えることに注力していて、カリフォルニアとテキサスを中心とした反乱勢力が何を訴えていて、合衆国側はこういう立場なのでこういう対応をとる、という説明は一切ない。大統領が赤い方か青い方かによって「反乱」のトーンも変わってくるはずなのだが、それがない。

主人公は報道写真家のLee Smith (Kirsten Dunst)で、長年世界の紛争の前線で写真を撮ってその世界では有名な人で、彼女がクイーンズかブルックリンの方でのデモ(なんのデモかはわからず)~自爆テロ発生 を取材している時に暴行を受けた駆け出しの写真家Jessie (CaileeSpaeny)の面倒をみたら彼女がついてきて、ワシントンDCの大統領にインタビューすべく、同僚の記者Joel (Wagner Moura)とNY Timesのベテラン記者Sammy (Stephen McKinley Henderson)の4人で車に乗って大陸を旅していく、その過程で遭遇するあれこれ。 すこし『地獄の黙示録』(1980)ふうで、実際に前線でどんぱちしている兵士に聞いてもどっちがどっちだかわからんし知らんしどうでもいいし、という返事が返る。車で旅をしながらそういう戦争だか内戦だかのありようを追っていく。

旅の途中でJesse Plemonsの率いる不気味な小隊に捕まって、Joelが「誤解しないでくれ、ぼくらはアメリカ人だ」と言った後にJesse Plemonsが(あの目と言葉で)静かに返す“What kind of American are you?” にどう答えればよいのか、正解があったりするのかの冷や汗、というか、殺されたら終わり、のじゃんけんみたいなゲームでしかないの。 このシーンでもうひとつ衝撃だったのはちゃんと英語で答えを返せないと…)

そういう状態で、冷徹な行動原理で前線の混乱状態をクールに捌いて動いて、すぐに怯えて泣きだすJessieをお母さんのように指導して引っ張ってきたLeeが少しづつおかしくなっていく。ここは自分が相対してきた戦場の現場とは違う、そこで通用しなかった何かが支配している – そしてその反対側でJessieは何に目覚めたのか止まらなくなっていって。

終盤、DCに着いてみれば、過去にいくつかあったホワイトハウス襲撃パニック - 絶体絶命の大統領府を過去に傷があったりするヒーローがダイ・ハード風になんとかする、のおめでたさは微塵もなく、正義とは、倫理とはいったいなんなのか、の問いかけも意味を持たず、その基準線がない状態で報道写真家 – ジャーナリスト、ジャーナリズムは何を伝えるのか、どうあるべきか – それはそのままこれを受けとる我々の方に降りかかってくるだろう。AIの作ったフェイクも含めて大量の暴力的な映像が溢れかえり、「リテラシー」なんて通用しない野蛮な世界で、なにをどうできるというのか? やっちまっていいんじゃないのか? というのが2021年1月に起こったあれで世界に堂々と曝されてしまった。そして、ガザであれだけの殺戮が起こっているのにどうすることもできていない。 その状態に対する極めて冷めたひとつの見解だと思った。それをどう見るか、はあるだろうけど。でもふつう、民間人がひとりでも殺されたらそれは非常事態、だよね。

あの終わり方には賛否あるのかも知れないが、オールド・ジャーナリズムの終わり、ということにしてよいのかしら。『地獄の黙示録』の(35mm版の)終わりみたいにホワイトハウスを焼き払ってもよかったかも。

音楽は”Ex Machina” (2014)の頃からのBen Salisbury & Geoff Barrow。全体としては鳥の囀る静かなところに突然暴れまわる何かがやってくるかんじ - ディストピアの荒んだ光景に見事にはまっていて、とにかく音だけはでっかい方が気持ちよい(たまにびっくりするけど。あとに何も来ないけど)。

政治的なのが嫌な最近の子たちは見ないんだよね?

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