4.19.2024

[film] Back to Black (2024)

4月13日、土曜日の昼、CurzonのAldgateで見ました。

Amy Winehouseの評伝ドラマで、彼女については既にドキュメンタリーの”Amy” (2015)とBBCが制作したドキュメンタリー”Amy Winehouse: Back to Black” (2018)もある – どちらも未見 - のだが、こちらはSam Taylor-Johnsonの監督によるドラマ。音楽はNick CaveとWarren Ellis。

冒頭、Amy Winehouse (Marisa Abela)が懸命に走っている姿を少し上から捉えて併走していくショットがあって、最後の方でも反復されるこのがむしゃらで懸命な姿がずっと残る。

Amy Winehouse (1983-2011)については一般の人と同じ程度にしか知らない。彼女が登場した00年代の、特に後半の方は自分が英国音楽から一番遠ざかっていた頃かも。そういう人でも十分にわかる – 楽しめる内容になっている。映画は一部で酷評もあるみたいだけど、地元Camdenの住民からも当時の雰囲気はちゃんと出ている、の声はある、とGuardian紙は。

最初にユダヤ人の家族にいるAmyと彼女が大好きだった祖母のNan (Lesley Manville)と、やはり音楽が好きなタクシー運転手の父Mitch (Eddie Marsan)との関係が描かれて(母との関係は薄い)、歌手としてのデビューはあっさりさくさく進んで、成功もすぐそこにやってきて簡単なのだが、そんなことよりCamdenのパブでBlake Fielder-Civil (Jack O’Connell)と運命の出会いをする。ビリヤードをしていたBlakeがジュークボックスでShangri-Lasの”Leader of the Pack”をかけて口パクと振りでAmyを完全に虜にしてしまうシーン、その瞬間のすばらしいこと。

こうして怒涛の恋におちた二人だったが、Blakeには抜けられないexがいたし彼自身が薬中のちんぴらでいいかげんだし、Amyはそれに負けないアル中の暴れん坊の寂しがりだし、くっついては喧嘩して離れてまた… の繰り返しで、ようやくマイアミで結婚して間もなく彼はあっさり逮捕されて刑務所に入り、彼を信じて面会に通う彼女に離婚したい、と告げる。他にも祖母の死による悲しみが彼女を襲ったり、辛いことばかりが彼女を追いたてていくように見える。

Amyが音楽の世界でいかに、どうやって自分の世界をつくりあげ、その息づかいでのしあがっていったのか、その反対側で酒やドラッグがどれだけ危うい状態を掘り進めていってしまったのか、これらの陽と陰のコントラストのなかに浮かびあがらせる、というより父と祖母とBlakeのそれぞれの関係のなかでキスしてハグしてうんざりして喧嘩して、そういうのの繰り返しの背景というか、その状態のなかで呼吸するように、走り抜けるように彼女は曲を作って歌っていったのだ、という構成。

最期の一番辛そうなところ - 誰も見たくなさそうなところ - は描かれなくて、それでよいのだと思った。最近見た映画で思い浮かべたのは”Priscilla”(2023)で、ここでの歌手でアイコンは男性の方だったが、一途にひとりの男を思って家族をぶっちぎって走っていくその姿はなんだか似ていて、ところどころそっくりの画面もあったようなー。おばあちゃんがよい役割をするところとかも。音楽映画というよりは女性が走り抜ける恋愛映画、として見るのが正しいのかも。

誰がやったって似てない、って文句言われたり嫌われたりしておかしくない役柄をMarisa Abelaはとてもよくこなしていると思った。彼女の柔らかさとJack O’Connellの愚直な筋肉バカっぽい硬さと。 あとはNanaを演じたLesley Manvilleの見事なこと。彼女の役柄でそのまま1本映画を撮れそうなくらい。

挿入されるAmyの歌以外のスコアはNick CaveとWarren Ellisのふたりが楽器演奏も含めて全て自分たちで作っていて(プロデュースはGiles Martin)、エンディングで流れるNick Caveの新曲- "Song for Amy"はとんでもなく沁みてくる名曲 – Nick Caveってこういうのをやらせるとほんと天才 - なので、これを聴くためだけにシアターに行ってもよいの。


ところで明日はRecord Store Day 2024なのだが、どうしたものか、まだ悩んでいる。レコード買っても、まだ聴けないしなー。

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