11.15.2019

[music] The Raincoats

10日、日曜日の晩、HackneyのEartHっていうとこで見ました。前回ここに来たのはRussian Circlesのライブで、あのときはスタンディングのフロアだったが、こんどのはその上の階のシアターみたいなところで椅子がある。指定ではなく早いものがちの。

ライブの数日前にチケット買ったところからメールがきて、タイムテーブルは、20:00-20:45 The Raincoats, 21:00-21:30 Special Guests, 21:30-22:00 The Raincoats、とあって、通常のライブとは違うみたいなので少し早めに行った。

彼女たちを見るのは94年、NYでのLiz Phairのオープニングの時以来で、この時のドラムスはSteve Shelleyで、今思いだすとものすごく元気がなかった、のはその日の午後、Kurt Cobainの遺体が発見されたというニュースがあったからで、ライブの音よりもAnaの「Kurt、ほんとうにありがとう」の辛そうな言葉の方が耳に残っている。あれから25年、25年、25年…(呪文)

この日の昼間にTracey Thornさんが、今晩はMarine GirlsのGinaと一緒に行くよ、とかTweetしているのでおおーってなる。同窓会かよ、と。実際前方の席は”Reserved”ばっかりだったし。

今回のライブは英国で4か所くらいをツアーする、1stの”The Raincoats”のリリース40周年のお祝いで、1st と2ndは色盤のプリント付きで再発されて(会場で買っちゃった。トートも)、最初にShirley O'Loughlinさん(たぶん)が出てきて再発盤の宣伝(後でサインもするからねー)と、Jenn Perryさんによる“The Raincoats' The Raincoats (33 1/3)”の一節を読みあげて(この本、本当にバンドに気に入られているらしい)、サポートアクトとして出てくるのはGreen Gartside(!!)とBig Joanieです!とアナウンスがあり、バンドが登場して、"Fairytale in the Supermarket”がどかどか鳴りだす。(変わらず)おっそろしくへたくそなのだが、でもこれがThe Raincoatsなのだ、としか言いようがない錯綜ぶりで混乱してて、でもキュートでパンクで、たまんないの。なんで40年前の曲をそんなふうにそんなままに再現できちゃうのへたくそなのに? って。曲が終わると、Anaが、この曲はわたしたちの最初のEPので、LPには入れなかったのだけど、後で(94年?)再発したときにここに入っていないのも変よね、って入れたのだと。近年だと”20th Century Women” (2016) で少し流れたよね。

数曲やって”Black and White”の前にこのアルバムを手伝ってくれた人を紹介します、と言って(もうその途中で誰だかわかって、隣に座っていたおばさんなんて床に向かって小さな声で「きゃぁぁー」て絶叫していた。 とてもよくわかる)、サックスを抱えたLora Logicさんが登場してAnaの横で吹くの。こんな夢のようなことがあってよいのか、と。彼女はこの1曲で引っ込むのだが、次の”Lola”では誘われてバックコーラスを(Loraが“Lola”を、ね)。

Anaがサポートアクトを紹介する。”The Raincoats”の最初のプレスが出たとき、レコードに”The Construction and Deconstruction of Myths and Melodies”って彫ったのが彼 - Green Gartsideだったのよ、って。 彼女たちのライブが始まってみんながじーんとしている時に、ステージ前の通路をリュック背負ったふつーのおじさんがしらーっと横切って、それは見てすぐGreenだ! ってわかるのだったが、幕間のサポートも催事場の演芸みたいにすっとぼけたかんじ。 ぼくらScritti Polittiの50%でーす(ステージ上にはGreenともうひとり)、とか言って"The "Sweetest Girl"”を始める。終わって、これはRobert Wyattに手伝ってもらった曲で、リリースは… (客席から81年よ、って助けてもらう)そう、81年。次のは僕らの最初のレコードで、これは78年、こっちは憶えてるよ、と”Skank Bloc Bologna"を。

昔話ばかりになってしまうのだが、81年にRough Tradeが日本に紹介された時のラインナップの中に”Clear Cut”っていう日本で編まれたオムニバス盤があって、それは輸入盤の7inchなんていちいち買えるわけがない高校生にとっては夢のような一枚で、Joseph Kに始まってThe Fallがあって、Orange Juiceがあって、Girls at Our Best!の”Politics”があって、A面の最後はThe Raincoatsの”In Love”(この曲が自分にとってのLove Songの永遠のNo.1なの)で、B面の頭がDelta 5の”You”で、続いてThis Heatの”Health and Efficiency”があって、Lora LogicのEssential Logicの “Music Is A Better Noise”があって、Scritti Polittiの"Skank Bloc Bologna"があって、最後はRobert Wyattだった(たしか)。その擦り切れるくらい聴いた一枚から2曲が聴けて、3アーティストがでてきた。しかも客席にはMarine Girlsまでいる。これってありえないくらいすごいことなの。個人的には。

Greenはこの後"The Word Girl" (1985)をやって、"Wood Beez (Pray Like Aretha Franklin)"(1984)をやって去っていった。(終演後もそこらをふらふらしてた)

この後そんなに間を置かずにBig Joanieの3人がアンプラグド形式で数曲やって、この人たち、Bikini Killのサポートの時にも思ったけど、なんか生々しさが残って、よいの。なんだろ。

The Raincoatsの後半のセットは、前半よりも更にどたばたして、何度もやり直したりとっ散らかったり、AnaとGinaのふたり漫才になったりしていて、でも音自体は奔放に跳ね回ることを止めないので、みんな前方に押し寄せてぴょんぴょこ80年代踊り大会をやっていた。初期のパンクが怒りと衝動にまかせた愚直に一直線をやっていた頃に登場した彼女たちは、それらの前後にやってくる困惑とか倦怠とか諦念とか痺れとか眠気とか、足下のどうでもよいけどどうしようもない何かをぐにゃぐにゃした毛玉として、混沌のままにぶちまけて(路地裏からスーパーマーケットへ)、でもちょっと甘苦くて笑えたりもして、その手編みの手触り(ちくちく)は永遠で、永遠がすごいのではなくて、永遠を永遠たらしめている彼女たちがすごいんだってば。っていうのと、そんな彼女たちのやり口をフェミニズムと呼ぶことになんの異議もないの。

終わったら23時で、ライブの後に電車に向かって走るとまた転んで流血するので、ゆっくり帰った。

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