11.02.2019

[film] The Last Black Man in San Francisco (2019)

10月27日、日曜日の昼にPicturehouse Centralで見ました。
これも前日に見た”Monos”と同様、今年のSundanceでとっても話題になり、LFFでも上映されていた。配給はA24。 
原作はJimmie FailsとJoe Talbotのふたり、Joeが監督して、Jimmieが主演している。

San Franciscoのベイエリアに暮らすJimmie (Jimmie Faills)と友達のMont (Jonathan Majors)がいて、Montは祖父(Danny Glover)の世話をしたり介護士をしたりしながら絵を描いたり芝居の脚本を書いたり、JimmieはMontの家でごろごろしたりスケートボードで街を滑っていったり、どちらも忙しく仕事をしているかんじはなくて、ぼーっとしながら街の人々や世の中の成り行きを眺めたりしている。

Jimmieの自慢はFillmore地区の道路沿いに建つヴィクトリア様式の館で、それは界隈に日本人コミュニティがあった頃、彼の祖父が1946年に建てたものだという( 彼は"The First Black Man in San Francisco"だったんだぜ)。Jimmieが子供の頃に過ごしたこの家に今は白人の夫婦が住んでいて寄っていくと追い払われたりしていたのだが、ある日彼らが出ていってしまったので、地元の不動産屋に聞いてみると、あれは市の管理下に置かれるのではないか、と。

それを聞いたJimmieは叔母のところにあった昔の家具とかを勝手に運びこみ、かつて住んでいた家の内装を再現して暮らし始める。のだがそういう幸せな状態もそんなに続くものではなく …

地代が高騰して中心部にはとても住めなくなり、かつてあったコミュニティは得体の知れない汚染の懸念いっぱいの海岸沿いに追いやられ、職もなくうだうだしている若者もいっぱいいて - 一人は突然殺されてしまったり、どっちを向いてもしょうもない世の中、なにを拠り所にしてどんなふうに渡っていけばいいのか、ていう問いに対する例えばこんなの..

タイトルの”The Last Black Man in San Francisco”は、立退くことになった彼らの館で最後に一回だけMontが上演するひとり芝居のタイトルで、それもあんまし..   これ、自分こそが最後の一人なりー!、って大見得切って飛び込んでいく、というよりもどこに居たって行ったって自分は最後の一人になるしかないのだな、という決意と覚醒が語られるはずだったのだが...

むかし、若い頃ってどこでもどんなふうにでも生きていけると思ったりしたものだが、長いこと住んでいたりずっと眺めていたりしていた建物とか景色が失われることの重み、のようなものがわかるようになってきて、それって2010年代に入って失われた何かと関係のあることではないか、と思ったり。
この映画でのふたりの土地や建物に対する想いや目線って、単なる郷土愛とか思い出作りとかそういうのとは違う、もっと切実で彼らの生に直結した何かなのではないか。

そういう点から今年に入ってノートルダム寺院が焼け落ちて首里城が焼け落ちて、台風や大雨で沢山の家がなくなり(ホームレスが排除され)、San Franciscoの山火事では..   そういう年に作られた映画として記憶されるべき、なのかもしれない。

ヒップホップががんがん流れてもおかしくない世界かもしれないのに、音楽はJoni Mitchellの”Blue”だったり、みんなが知っている”San Francisco (Be Sure to Wear Flowers in Your Hair)“ - 歌うのはMichael Marshall - だったりするの。

昔の映画との参照関係、でいうと”Ghost World” (2001)は間違いなくあって、Ghostがバスに乗って導く世界は、まだあるのだと。 生者はなにもしてくれないし、生者が設定する家賃で暮らせる場所はもうどこにもないんだ。

何度か行って、大好きなSan Francisco、という場所について思うところもいろいろあったけど、いいや。 そうそう、Jello Biafraさんがセグウェイに乗った街ツアーのガイドとして出てくるの。あれ、本当にやってくれたらなー。

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