1.29.2018

[film] Punch-Drunk Love (2002)

羽田からの便は21日、日曜日の午後15時くらいにHeathrowに着いて、16:30くらいに泣きそうになりながら荷物を階上までひっぱりあげて、荷物を開いて置けるものを置けるところに置いて(置けないものはそこらに積んで)、冷蔵庫は空だったので近所のスーパーに買い物に出て(どこのスーパーも日曜の夕方18時には閉まってしまう)、明日からの会社はかんべんしてよう、と泣きながらPrince Charles Cinemaに行って、見ました。もうじきの”Phantom Thread” (2017) の公開を記念してPaul Thomas Andersonの旧作を35mmプリントで上映する企画をやってて、そのうちのひとつ。 この作品はこの日の18:30の回のみ。

わたしにとってはこの作品がPTAのなかで一番好きなやつで、00年代の映画のなかでもベストに入る。世間的に00年代は”There Will Be Blood” (2007) のほうなのかもしれないけど、ボーリングのピンでひとをぶん殴るような野蛮なやつより断然こっちのほうだと、強くおもうの。

Barry Egan (Adam Sandler)はトイレのplunger - 詰まったときにぱこぱこやるやつ – 最初英語でなんていうのかわからず苦労したので決して忘れない - とかどうでもいい記念品とかを売る会社(兼倉庫)に勤めてて、ふだんは航空会社のマイレージ貯めたりとか会社の電話でやらしいCallしてごそごそしたりしているしがないふつーの社員 - 同僚にLuis Guzmánがいたり – で、プライベートではうじゃうじゃいる姉たちからいいかげん結婚しなさいよ、て弄られ続けていて、そんなある日突然、ぶっ壊れたハルモニアと美しいLena Leonard (Emily Watson)が彼方から現れてすべてが一変してものすごいことになる、ていうRom-Comなの。... パニック映画、かもしれないひょっとして。

Lenaに会うためにハワイに飛んでいってとにかく会っちゃうところとか、Callの件をネタに金を集りにきたり嫌がらせをしてくるブロンド4兄弟と対決したり、更にその上にいるマットレス屋のブチ切れキャラのPhilip Seymour Hoffmanと対決したり、見どころだらけなのだが、結論は恋とハルモニアの到来は人をポパイ("He Needs Me”♪~)のように、彼をこんなにも無敵に最強にしてしまうものなのだと。

会社も日常もだいたいのところほぼおもしろくなくて、おもしろくしたいと思って日々努力はするものの大凡ろくなことにはならなくて、ヒステリックに横でわーわー言うひととか、明らかに悪意をもっておらおらやってくるひととかもいて、あーあつまんない、ってぶつぶつ言って終わりなのだが、それが鮮やかに変わる、磁気嵐がオーロラを呼ぶように時空のすべてを一瞬で変えてしまうことがあって、恋とはそういうもの - なんて過去の映画でいくらでも見てきたはずなのに、この映画のそれは最強に狂っていて、それはAdam Sandlerの狂気でもあるのだが - そいつをタガが外れた土壌の上でぶちかますもんだから、Punch-Drunkとしか言いようがない酩酊感と共になにかがやってきて、ラスト、ハルモニアに向かうLenaに“So here we go - ” て言われると、それだけで宇宙にも飛んでいけそうな気になってしまう。

で、会場は終わった途端に大拍手の大歓声なの。これから何かが始まるみたいな歓声に溢れるの。

Jon Brionの音楽もすばらしく、あとはVisualのJeremy Blakeのアート(エンドロールのとこでみんな動画撮ってた。きれいだよね)。同年に彼が手掛けたBeckの“Sea Change”のジャケットアートと並んで、自分にとっては00年代のカラー – 透明さを象徴するものになっている。彼が2007年に亡くなってしまったのは本当に惜しまれる。

前もどこかに書いた気がするが、BAMでの上映にPTAとPhilip Seymour Hoffmanが来てトークして、スクリプトにサイン貰ったのもよい思ひで。

DVDにおまけで付いていたPSHによるマットレス屋のコマーシャルも上映してほしかったな。

映画の公開の暫くあと、BAMのシアターでLena - Emily WatsonがViolaを演じた「十二夜」とSonyaを演じた「ワーニャ伯父さん」が上演されて、これもすごくよかったの。演出はSam MendesでMark Strongとかも出ていて、今にして思えば豪華なやつだったねえ。

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