6.30.2017

[film] American Valhalla (2017)

28日、水曜日の晩、SOHOのCurzonで見ました。
21時開始で、上映前に監督ふたりの挨拶とQ&Aがあるというので、ホールにはDJが入ってパーティスタイルになっていた。
挨拶と言ってもロックスターであるところのJosh Hommeさんであるからこれまでに見てきたそういうイベントとはぜんぜん違ってわーわーきゃーきゃーで質問もお行儀よく挙手して指名、の前に勝手に声かけちゃうは酔っ払いはクダ巻いてるはで、なかなか大変だった。

もう1人の監督Andreas Neumannさんの言うところによるとある日突然Joshから電話が入って、明日から砂漠に来れるか? というのでそれに応えて行ったのが始まり、と。 その時点では現地にIggy Popがいるなんて知らされていなかった、って。

Q&Aのやりとりは制作のプロセスとか考え方に関するものがほとんどだったが、もうびっくりするくらいにふつうのきちんとした、想定通りの答えしか返ってこなくて、この人は不良でかっこつけているようで、やっぱりほんとに真面目で誠実な努力のひとなんだな - こういう外見のひとってそうであることが多いけど - としみじみ感動した。 Iggy Popという巨人への憧れ、畏れとリスペクト、彼と競演・共同作業をすることの自分にとっての意味、達成点、プレッシャー、リスク、それらは映画の中でも語られているが、自分史のなかでも決して小さなものではないのできちんとジャーナルを記して、こうして映像として残そうと思った、と。このようにして撮られた(ライブも含めて)40時間分のマテリアルを編集してできたのがこのドキュメンタリーで、ポスターに腕組みした二人が写っているようにIggy Popひとりにクローズアップしたものではなく、それなりに成功してイメージを確立し、自身のやりたいことをそれなりにやれるようになったミュージシャンであるところのJosh Homme氏が予測・制御不能な老人・猿人・巨人であるところのIggy Poo翁を彼の砂漠のスタジオに呼び寄せて迎え撃ち、レコーディングしてライブに出て、やんやの喝采と賞賛を浴びるまで。

なんといっても映像に登場しただけでやばい臭気、雰囲気が漂ってしまう被写体Iggy Popのすごさ - 皺にシミ、皮のたるみ、その裏と奥でなにが蠢いているんだか - これを眺めるためだけに見にいってもいい、それくらいの異物感、変な人は変なことするから変なんじゃなくてそこにいるだけで変なんだっていっぱつでわかるから。 これがAmerican Valhalla - 歌詞のなかでは”I don't know”とか”I’ve Nothing”とかばかり言っているが、そういうのが一番こわいんだから。

そんな天然IggyとかっちりかっこつけのJoshの和かに微笑みながらとぐろを巻く真剣勝負がはらはらでおもしろいの。
ああそれにしても、”Gimme Danger” (2016) 見たいよう。 こっちではとっくにDVDになってるのに。

陰が射してざわざわするのがレコーディングの最中に突然入ってきたBowieの訃報で、唯一ここだけとても生々しく、こちら側にも繋がってくる。

レコーディングが終わったあとの後半はツアーの日々となるのだが、ライブシーンはおおっ! ってなってもすぐに切られてしまうところがきつい。ライブフィルムでないことがわかっていても、このバンドのライブを目撃できなかった悔しさがじわじわと、後からだけどくる。
Q&Aでも - すばらしかったありがとう - と何度か言われていたLondonのRoyal Albert Hallでのライブがクライマックスででてくる。
あーあーあーあー、ったらない。

唯一わかんないのが聞き手として出てくるAnthony Bourdainなんだけど。 なんでこいつなの?

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